4. 実際に多い質問は「売ったら枠はどうなるのか」
NISAの相談では、制度が変わって非課税保有限度額に上限ができたことで、売却と枠の関係を尋ねられる場面が増えました。以前の制度には枠が戻るという考え方がなかったためです。
4.1 「売ったら枠が減ったままになる」と思っている人がいた
売却すると枠を失うと考えて、必要な資金があるのに売れずにいる方がいました。実際には翌年から戻りますので、この点は誤解が解ければ判断がしやすくなります。
4.2 逆に「売ればすぐ買い直せる」と考えている人もいた
反対に、同じ年のうちに売って買い直せると考えている方もいました。相場の動きに合わせて売買を繰り返す前提で計画を立てていると、実際には枠が戻らず思いどおりに動けません。
5. 枠が戻るしくみが効いてくる場面
この考え方は、使いどころを知っておくと役に立ちます。
5.1 まとまった支出があるとき
教育費や住宅の修繕といったまとまった支出が出たとき、NISAで運用している資金を取り崩す判断がしやすくなります。枠が戻らない前提だと売却をためらいますが、翌年から使えると分かっていれば選択肢に入れられます。
5.2 運用の中身を入れ替えたいとき
保有している商品を別のものに変えたい場合も、いったん売って翌年に買い直すという進め方ができます。ただし年間投資枠の範囲でしか買い直せないため、金額が大きいと数年がかりになります。
その間は相場が動きますので、入れ替えのつもりが結果的に安く買い直せなかったということも起こります。投資の中身を変えること自体にこうした不確実さがある点は、あわせて知っておく必要があります。
6. 売る前に確かめておきたいこと
枠が戻るからといって、売却の判断が軽くなるわけではありません。次の3点を確認してから決めるとよいでしょう。
6.1 その資金をいつ使うのかを決める
近いうちに使う予定があるお金は、値動きのある商品で持ち続けないのが原則です。売却の目的が支出のためなのか、運用の入れ替えなのかで判断は変わります。
6.2 いくらの枠が戻るのかを金融機関で確認する
戻るのは取得金額の分ですので、いま持っている商品をいくらで買ったかが分からないと計算できません。金融機関の取引画面や報告書で、簿価がいくらになっているかを確認しておきます。
6.3 翌年以降の買い方まで決めておく
戻ってきた枠をいつ、いくらずつ使うのかを先に決めておくと、売却後に迷いません。年間の上限があるため、思っていたより時間がかかることもあります。判断に迷う場合は、口座を持っている金融機関の窓口に個別の状況を伝えて相談することもできます。
7. まとめにかえて
NISAの非課税保有限度額は総額1800万円で、うち成長投資枠は1200万円までです。枠は簿価残高方式で管理されており、売却した場合に戻るのは取得金額の分になります。
戻るのは売った年ではなく翌年からで、1年間に買える額があわせて360万円という上限も変わりません。枠が戻ること自体は使い勝手のよい仕組みですが、すぐに元通りになるわけではないという点を押さえておきましょう。
まずはいま保有している商品の簿価がいくらかを確認し、売却を考えるなら翌年以降どう買い直すかまで含めて計画してみてください。
参考資料
三石 由佳