6. 現役ファイナンシャルアドバイザーが答える「平均と比べて落ち込んでしまう」―統計との向き合い方への解決策

日頃のご相談では、公表されている平均値や統計を見て、自分は足りていないと感じてしまう方が少なくありません。数字は判断の材料になる一方で、見方を誤ると不安だけが残ります。

6.1 40代・50代でよくご相談される「自分は平均より下なのでは」という悩み

年金の受給額や世帯の貯蓄額は、さまざまな形で平均値が公表されています。自分の見込額と並べて落ち込んでしまう。けれども、その平均が誰の数字なのかを確認しないまま比べていることも多いのです。次のような声を耳にします。

40代のお客様(ご相談者)
自分が受け取れる年金の見込みを見ると、世の中で言われている金額より少ないように感じます。このままでは足りないのではないかと不安になるのですが、何をどれだけ足せばいいのかまでは分かりません。

平均と比べる前に、自分の条件を確認する。この順序にすると、数字は不安の材料ではなく計画の材料になります。

6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・長井祐人が回答】「老後の生活に必要なお金」の考え方

長井 祐人

自分自身の年金額と、その平均額がどのような人を対象とした数字なのかを確認することはとても大切なことです。
しかし、平均額と自分自身の年金額を単純に比較することは避けたほうがよいでしょう。

誰かと比較するのではなく、現在の資産額や現時点で把握できる見込み年金額、貯蓄額などを確認し、老後の生活に必要なお金が足りるのかを考えることが大切です。

仮に、老後生活を迎えた際に支出額が収入額を上回ってしまうと、生活水準を下げざるを得なくなる可能性があります。

一度上げた生活水準を下げることは簡単ではありません。
そのためには、現役時代から貯金や資産運用、付加年金などを活用し、老後の生活に向けた準備をしておくことが重要です。

統計の読み方は、比べる相手を選び直すところから始めると変わります。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。

6.3 ポイント1:その平均が誰の数字かを確認する

年金の平均額は加入していた制度や加入期間、働き方によって大きく変わります。会社員と自営業では前提が異なるため、同じ土俵で比べる意味は薄くなります。

6.4 ポイント2:平均ではなく自分の見込額を出す

ねんきん定期便やねんきんネットで確認できる自分の数字を起点にする。ここが定まれば、他人の平均と比べる必要そのものが小さくなります。

6.5 ポイント3:不足があるなら埋める手段を並べる

働く期間を延ばす、受給開始を遅らせる、iDeCoや個人年金で上乗せをつくるなど、方法は複数あります。落ち込むのではなく、選べる手段の一覧に変えていきます。

なお、年金の見込額は加入状況によって異なり、制度改正の影響も受けます。実際の受給額や繰下げ受給の取り扱いは、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所でご確認ください。iDeCoは原則60歳まで引き出せず、運用商品には元本割れの可能性があります。

7. まとめ|平均と比べるより、自分の数字を起点にする

厚生年金の受給者数がいちばん多い階級は、平均15万289円を下回る「10万円台前半」でした。また、65〜69歳と85〜89歳の平均額には約1万4000円の差がありますが、これは世代ごとの賃金水準や加入状況の違いによるもので、「年を取れば増える」という意味ではありません。

今回の試算では、平均といちばん多い階級の差だけでも、20年間で約1086万円という開きになることを確認しました。「平均」という一つの数字は、必ずしも典型的な人を表しているわけではないということです。

平均と自分を比べて落ち込む前に、まずはねんきんネットでご自身の年金見込額を確認しましょう。そこを起点にすれば、必要な備えも具体的に検討できるようになります。

参考資料

長井 祐人