公的年金は偶数月に支払われます。8月の定期支払日を終え、次は10月——受給世代にとっては2カ月ごとの入金日ですが、現役世代にとっては「自分の年収なら将来いくら受け取れるのか」を考えるきっかけになる時期でもあります。
年金額は、現役時代に「どの年収で、どれだけ働いたか」で決まります。つまり、いま受け取っている給与の水準が、そのまま老後の収入の土台になるということです。
この記事では、日本の給与所得者の平均年収を年代別に確認したうえで、「平均年収600万円」で「40年間」働いた場合に厚生年金がいくらになるのかを、公的な計算式にあてはめて試算していきます。
なお、公的年金の仕組みや年金から差し引かれるお金に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 日本の給与所得者の平均給与は460万円。55〜59歳でピークを迎え、40歳代・50歳代では男女で200万円以上の開きが出ている層もある
- 平均年収600万円で40年間働いた場合、国民年金83万1700円+厚生年金131万5440円で年214万7140円。月額にすると17万8928円
- 年金からも所得税・住民税・社会保険料が天引きされるため、実際の手取りは額面より少なくなる
1. 【平均年収】日本の給与所得者は460万円
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によれば、2023年に1年間働いた給与所得者の平均給与は460万円となっています。
この460万円という数字は、正社員もパート・アルバイトも、20歳代も50歳代も、すべてをまとめてならした金額です。そのため、自分の年収と比べて高い・低いを判断する材料としては、やや粗い数字だといえます。
上記の結果から日本の一般的な年収は400万円台にあることが分かりますが、年齢層ごとに区切ってみると、平均年収はどのような水準になっているのでしょうか。
2. 【年齢階級別】日本の給与所得者の平均年収を「年代別」で見る
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、年代別における日本の給与所得者の平均年収は以下のとおりです。
年齢別の平均給与を見ると、20歳代から30歳代にかけて給与が大きく伸び、55歳から59歳でピークを迎えていることがわかります。
その後はゆるやかに低下し、60歳代以降では明確に水準が下がる傾向が見られます。
さらに、どの年代でも男女間の差が大きく、特に40歳代・50歳代では男性と女性で200万円以上の開きが出ている層もあります。
全体の平均給与460万円という数値は、こうした年代ごとの差や男女差を反映したものと言えるでしょう。
なお、老後に受け取れる年金額は、現役時代に「どの年収でどれだけ働いたか」によって大きく変わってきます。
とくに「平均年収600万円前後の人」は、グラフの中心となる40歳代〜50歳代の給与水準に近いため、将来どれくらいの年金を受け取れるのか関心を持つ人が多い層だと言えます。
以降の章では、「平均年収600万円」で「40年間」就労した場合、厚生年金がどれくらいの月額になるのかを見ていきましょう。
3. 【年金の仕組みをおさらい】老後に「厚生年金」を受け取れるのはどんな人?
「平均年収600万円」で40年間働いたケースの厚生年金額を試算する前に、そもそも老後に厚生年金を受け取れる人の範囲を整理しておきましょう。
公的年金の基本的な構造は、「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認してみます。
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、加入者は「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」のいずれかに区分されます。
- 第1号被保険者:自営業、学生、無職など
- 第2号被保険者:会社員、公務員
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
つまり、厚生年金を受け取れるのは第2号被保険者として勤務していた「会社員」や「公務員」です。
次章では、会社員が「平均年収600万円」で40年間働いた場合に、どの程度の厚生年金を受け取れるのかを具体的に見ていきます。
4. 【厚生年金】「平均年収600万円」で「40年間」働いた人が将来もらえる年金は月額いくら?
本章では、生涯の平均年収を600万円とし、民間企業で40年間働いた場合に受け取れる年金額がどの程度になるのかを試算していきます。
上記ケースの場合、「第2号被保険者」に該当するため、国民年金と厚生年金の両方を受け取ることになります。
つまり、次の2つの金額を算出することで、厚生年金に加入し「平均年収600万円」で「40年間」勤務した場合の年金月額を見積もることができます。
- 国民年金として受け取れる額
- 厚生年金として受け取れる額
まずは「国民年金」分の計算から確認していきましょう。
4.1 「国民年金の受給額」を試算
国民年金の計算式は次のとおりです。
83万1700円 ×(保険料納付済み月数 ÷ 加入可能年数(12か月換算))※昭和31年4月2日以後生まれの方が対象
保険料を全期間で納めている場合、納付済み月数は480月となり、乗数は1になります。
そのため、国民年金として受け取れる金額は「83万1700円」です。
続いて、厚生年金の計算に移りましょう。
4.2 「厚生年金の受給額」を試算
厚生年金は、次の計算式によって算出されます。
- 年金額=報酬比例部分(※)+経過的加算+加給年金額
※報酬比例部分の内訳
報酬比例部分=A+B
- A(2003年3月までの加入期間):平均標準報酬月額×7.125/1000×同期間の加入月数
- B(2003年4月以降の加入期間):平均標準報酬額×5.481/1000×同期間の加入月数
なお、年金額の中心を占めるのは報酬比例部分であるため、今回の試算では経過的加算と加給年金額は計算に含めません。
経過的加算とは、過去の制度改正によって生じる不公平を調整するための仕組みであり、加給年金は扶養する配偶者や子どもがいる人に支給される年金です。
では、これらの式を用いて厚生年金の金額を求めていきます。
今回のケースでは、2003年4月以降に加入したものとして扱うため、Bの式のみ用います。
生涯の平均年収が600万円の場合、月収は50万円となり、平均標準報酬額も50万円となります。
50万円×5.481/1000×480月を計算すると、厚生年金部分は「131万5440円」となります。
ここに、国民年金として受給できる額を加えると合計214万7140円となり、これを12か月で割ると月額は17万8928円です。
したがって、このケースの年金月額はおよそ18万円となります。
4.3 【試算】平均年収が「600万円」と「460万円」では、年金はいくら違う?
同じ計算式に、日本の平均給与である460万円をあてはめてみます。前提は「2003年4月以降に40年間(480月)加入し、生涯の平均年収がその金額で一定だった」とするもので、標準報酬額の等級区分や賞与の扱いは簡略化しています。あくまで一定の前提を置いた試算です。
- 平均年収600万円:50万円 × 5.481/1000 × 480月 = 年131万5440円(月約10万9620円)
- 平均年収460万円:約38万3333円 × 5.481/1000 × 480月 = 年約100万8500円(月約8万4042円)
- 差:年約30万6900円(月約2万5578円)
年収の差は140万円ですが、厚生年金に反映される差は年約30万7000円です。ただしこれは1年あたりの金額なので、65歳から85歳までの20年間受け取ると約614万円の差になります。国民年金部分は納付期間が同じであれば変わらないため、年収差がそのまま効いてくるのは2階部分だけだという点も押さえておきたいところです。
5. 【注意】年金からも「税金・社会保険料」が天引きされている
前章では、平均年収600万円のケースにおける老後の年金額を計算しましたが、実際に受け取る際にはこの金額がそのまま振り込まれるわけではありません。
現役時の給与と同じように、年金からも「税金」や「社会保険料」が差し引かれるため、手元に入る金額は額面よりも少なくなります。
年金から差し引かれる項目については、「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認してみます。
- 介護保険料:65歳以上の全員が対象。市区町村によって金額が異なります。
- 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料):75歳未満は国保、75歳以上は後期高齢者医療制度の保険料が引かれます。
- 所得税および復興特別所得税:一定の控除額を超えた場合に課税されます。
- 個人住民税および森林環境税:前年の所得に応じて課税されます。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
参考までに、総務省が発表した「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯における家計収支は以下のとおりです。
【65歳以上 単身無職世帯】
- 実収入:13万4116円
- 可処分所得(手取り収入):12万1469円
- 消費支出:14万9286円
- 非消費支出:1万2647円
年金などの実収入が13万4116円ある一方で、税金や社会保険料として1万2647円が差し引かれるため、実際の受取額は12万1469円となっています。
天引きされる金額は、地域や収入水準、家族構成などによって変わりますが、この例では実収入のおよそ9%が差し引かれている計算です。
上記を踏まえると、前章で試算した国民年金と厚生年金を合わせた額から算出される実際の手取りは、おおむね「16万円前後」になると考えられます。

