「平均年金月額」という数字を見て、自分の見込み額と比べて落ち込んでしまう――そんな経験はないでしょうか。この記事では、公的年金の2階建て構造と、60歳から90歳以上までの1歳刻みの平均年金月額を確認したうえで、「平均」という数字とどう向き合えばよいのかを整理していきます。
なお、公的年金の2階建て構造・1歳刻みの平均年金月額・受給額分布のデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
公的年金の2階建て構造
公的年金の2階建て構造
- 厚生年金の受給者数がいちばん多い階級は「10万円台前半」で、平均15万289円を下回る
- 65〜69歳の平均と85〜89歳の平均には約1万4000円の差があるが、これは「年を取るほど増える」という意味ではない
- 平均と比べる前に、その平均が誰の数字なのかを確認することが大切
1. 日本の公的年金は「2階建て」構造。国民年金と厚生年金の《対象者》を確認
日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の2つから構成されているため、下の体系図のような「2階建て」構造と呼ばれています。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
国民年金制度の加入対象は、原則として国内居住者のうち「20歳以上60歳未満」のすべての人々です。年金保険料は全国一律で、年度ごとに見直しが実施されます(※1)。40年間保険料を漏れなく納めた人は、65歳以降に満額の老齢基礎年金(※2)を受給できるようになります。
1.2 2階部分:《厚生年金》
厚生年金制度に加入するのは、会社員や公務員、さらに特定適用事業所(※3)で働くパートなど、一定の要件をクリアした人で、国民年金と併せて加入する制度となっています。
- 年金保険料(※4):給与水準により決定する(上限あり)
- 老後の受給額:加入した期間や支払った保険料によって個人ごとにばらつきが出る
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
「2階建て構造」で説明される日本の公的年金制度は、1階が「国民年金」、2階が「厚生年金」となっていますが、加入対象となる人や保険料の決まり方、将来受給できる年金額などに大きな差があります。
1.3 公的年金は毎年度更新される。2026年度の年金改定でいくらになったのか
公的年金は、賃金や物価の動向を考慮して年度ベースで年金額を更新する制度となっています。2026年度の年金額は、昨年度より国民年金が+1.9%、厚生年金が+2.0%の増額改定です。国民年金(老齢基礎年金)は満額で月額7万608円(1人につき)、厚生年金はモデル世帯(会社員の夫と国民年金のみの妻)で月額23万7279円(夫婦2人の合計)となっています。
もっとも、実際に受給できる年金額は、働いていたときの年金加入履歴によって個人ごとに違いが生じます。
2. 厚生年金|60歳~90歳以上の1歳刻み平均年金月額はいくらか
今のシニア層が実際に受け取れる年金額はいくらくらいなのでしょうか。厚生労働省年金局が発表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータをもとに、年齢ごとの平均年金月額を一覧形式で見てみましょう。はじめに厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額を確認します。
2.1 【60歳代(60〜69歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 60歳:9万9664円
- 61歳:10万4455円
- 62歳:10万9323円
- 63歳:6万8758円
- 64歳:8万3901円
- 65歳:14万9862円
- 66歳:15万2378円
- 67歳:15万2356円
- 68歳:15万2709円
- 69歳:15万1284円
※65歳未満の厚生年金受給者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられたため、報酬比例部分のみ受給している方も含む。
2.2 【70歳代(70〜79歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 70歳:15万455円
- 71歳:14万8371円
- 72歳:14万6858円
- 73歳:14万5583円
- 74歳:14万7774円
- 75歳:15万1410円
- 76歳:15万1241円
- 77歳:15万962円
- 78歳:15万862円
- 79歳:15万3115円
2.3 【80歳代(80〜89歳)】厚生年金の年金月額一覧表
- 80歳:15万3729円
- 81歳:15万5460円
- 82歳:15万7744円
- 83歳:15万9994円
- 84歳:16万2555円
- 85歳:16万3947円
- 86歳:16万5577円
- 87歳:16万5557円
- 88歳:16万6200円
- 89歳:16万6767円
2.4 【90歳以上】厚生年金の年金月額一覧表
- 90歳以上:16万4027円
標準的な年金受給開始年齢は65歳となっています。65歳以降の各年齢で受け取れる厚生年金の平均年金月額は、14万円~16万円台でした。
2.5 年齢が上がるほど平均額が高く見えるのはなぜ?「自分も将来増える」わけではない理由
先ほどの一覧表をよく見ると、65〜69歳の平均と85〜89歳の平均を比べただけでも、次のような差があります。
【65〜69歳の単純平均】
(14万9862円+15万2378円+15万2356円+15万2709円+15万1284円)÷5 = 約15万1718円【85〜89歳の単純平均】
(16万3947円+16万5577円+16万5557円+16万6200円+16万6767円)÷5 = 約16万5610円【差】
約16万5610円 - 約15万1718円 = 約1万3892円
この差は、「歳を重ねるほど年金が増える」ことを意味しているわけではありません。世代によって現役時代の賃金水準や厚生年金への加入期間が異なることに加え、受給額の高い人ほど長生きする傾向(生存バイアス)が統計に影響している可能性があります。今の40代・50代が65歳になったときの平均額が、今の65歳の平均額と同じになるとは限らないということです。「平均」を将来の自分の見込み額としてそのまま当てはめるのは、注意が必要な見方だと言えます。
3. 国民年金|60歳~90歳以上の1歳刻み平均年金月額はいくらか
続いて、国民年金(老齢基礎年金)について、各年齢で受給できる平均年金月額を見ていきます。
3.1 【60歳代(60〜69歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 60歳:4万5186円
- 61歳:4万6371円
- 62歳:4万7784円
- 63歳:4万7258円
- 64歳:4万7896円
- 65歳:6万1240円
- 66歳:6万1369円
- 67歳:6万1345円
- 68歳:6万1293円
- 69歳:6万978円
※65歳未満の国民年金(老齢基礎年金)受給者は繰上げ受給を選択した方。
3.2 【70歳代(70〜79歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 70歳:6万1011円
- 71歳:6万770円
- 72歳:6万234円
- 73歳:6万32円
- 74歳:5万9813円
- 75歳:5万9659円
- 76歳:5万9555円
- 77歳:5万9349円
- 78歳:5万9124円
- 79歳:5万8676円
3.3 【80歳代(80〜89歳)】国民年金の年金月額一覧表
- 80歳:5万8623円
- 81歳:5万8269円
- 82歳:5万8003円
- 83歳:5万7857円
- 84歳:5万9675円
- 85歳:5万9425円
- 86歳:5万9228円
- 87歳:5万9204円
- 88歳:5万8756円
- 89歳:5万8572円
3.4 【90歳以上】国民年金の年金月額一覧表
- 90歳以上:5万5633円
65歳以降の人が受給できる国民年金(老齢基礎年金)の平均年金月額は、5万円~6万円台となっています。
4. 厚生年金・国民年金の男女差と受給額分布
60歳~90歳以上のすべての受給権者における「平均年金月額」と「受給額分布」についても見ていきます。
4.1 「厚生年金」男女別平均年金月額・受給額分布
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
受給額分布(1万円刻み・抜粋)
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人(最多)
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金では、全体の平均年金月額は15万289円という結果でした。男女の平均を比較すると、男性16万9967円、女性11万1413円で、6万円近い開きが見られます。
4.2 「国民年金」男女別平均年金月額・受給額分布
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
受給額分布(1万円刻み・抜粋)
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人(最多)
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均年金月額は全体で5万円台です。男性は6万円台、女性は5万円台と4000円ほどですが男女差が見られます。「6万円以上~7万円未満」が最も厚い受給層となっており、多くの人が満額に近い年金額を受け取っていることが読み取れます。
4.3 「平均」より「いちばん多い階級」のほうが、実感には近いかもしれない
厚生年金の受給額分布をもう一度見てみましょう。平均年金月額は15万289円ですが、実際に受給者数がいちばん多い階級(ボリュームゾーン)は「10万円以上~11万円未満」の111万2828人で、平均を下回っています。この差を、20年間受け取り続けた場合の総額に換算してみます。
【平均年金月額】15万289円
【いちばん人数が多い階級(中間値10万5000円で試算)】10万5000円【月額の差】
15万289円 - 10万5000円 = 4万5289円【20年間(65〜85歳)で受け取る総額の差】
4万5289円 × 12カ月 × 20年 = 約1086万円
「平均」と「いちばん人数が多い階級」だけでも、20年間では1000万円以上の開きになる計算です。平均は一部の高い受給額によって引き上げられやすい性質があるため、「自分は平均より少ない」と感じたとしても、それは多くの人に共通する、ごく一般的な状態である可能性があります。
5. 【監修者コメント・安達さやか】平均15万289円と、人数がいちばん多い10万円台前半
この記事では、公的年金の2階建ての仕組みと、60歳から90歳以上までの1歳刻みの平均年金月額をご紹介しました。厚生年金の平均年金月額は全体で15万289円ですが、受給者数がいちばん多いのは「10万円以上11万円未満」の111万2828人で、平均を下回る階級です。
なお、65〜69歳の平均約15万1718円と85〜89歳の平均約16万5610円には約1万3892円の差があります。この差は、世代ごとの賃金水準や厚生年金の加入期間の違いが積み重なった結果です。統計を見るときは、同じ人の年金額が時系列でどう変わるかという話なのか、異なる世代を横に並べた比較なのかを分けて読むとよいでしょう。
また、記事中の試算では、平均15万289円と人数がいちばん多い階級との差が、20年間で約1086万円という結果でした。代表値としての平均と、実際に人数が集まっている水準は別のものです。老後の見通しを立てるときは、ご自身の加入期間と報酬がどうだったかを起点に置くことが大切です。


