4. 【8月】年度の途中で切り替わるもの、変わらないもの

保険料は年度単位ですが、医療費に関する区分は別のタイミングで切り替わります。ここが混同されやすいところです。

4.1 高額療養費の限度額区分は8月1日で切り替わります

1カ月の医療費が高額になったときに自己負担を一定額までにとどめる高額療養費には、所得に応じた区分があります。この区分は毎年8月1日を基準に前年の所得をもとに判定し直され、翌年7月31日まで適用されます。

70歳から74歳までの方の窓口負担割合も、同じく8月1日に見直されます。年度替わりの4月ではなく8月というのが、分かりにくいところです。

なお、高額な医療費がかかるときに窓口での支払いを限度額までにとどめる手続きについて、以前は限度額適用認定証の事前申請が必要でした。現在はマイナ保険証を提示すれば原則として認定証は不要です。ただし、住民税非課税世帯が入院時の食事代の減額を受けたい場合など、申請が必要な例外もあります。

4.2 保険料の納期は年度末まで続きます

保険料の納付スケジュールは自治体によって異なりますが、6月から翌年3月までの10回払いを採用しているところが多く見られます。この場合、8月は第3期にあたります。

65歳から74歳までの方で一定の要件を満たす場合は、年金からの天引きに切り替わることもあります。納付書が手元にあるうちに、総額と各期の納期限を一度確認しておくと安心です。口座振替に切り替えておくと、納め忘れの防止につながります。

5. 【元自治体職員のアドバイス】区分が増えた年は通知書の見方に注意

筆者は役場で国民健康保険や後期高齢者医療を担当していました。制度が変わった年は、窓口の相談内容にも決まった傾向がありました。

5.1 「去年より上がった」の理由は一つとは限りません

保険料が前年より高いという相談を受けたとき、原因はたいてい複数あります。料率の改定、前年の所得の増加、世帯の加入人数の変化、軽減判定の結果が変わったこと。どれか一つではなく、いくつかが重なっていることも珍しくありませんでした。

2026年度は子ども分が新設された分だけ、区分の数そのものが増えています。前年の通知書と並べて見比べると、どこが増えたのかを見分けやすくなります。

5.2 払えないと感じた時点で相談する

保険料が支払えないという相談も数多く受けてきました。こうした場合、分割や納付時期の相談、災害や所得の著しい減少による減免制度の適用可否を一緒に検討していました。

相談に来ていただけたときは、いつも「来てくれてよかった」と感じていました。連絡がないまま未納が続くと、最終的には財産の差押えに進むこともあります。早めに窓口へ相談していただくのが、結果としていちばん負担の少ない道でした。

6. 【落とし穴】数字を読むときに気をつけたいこと

今回の改正を自分に当てはめるとき、押さえておきたい点を整理します。

6.1 「110万円」と「113万円」は指しているものが違う

賦課限度額の話をするとき、従来の3区分の合計を指して110万円と言う場合と、新設の子ども分3万円を含めて113万円と言う場合があります。どちらも間違いではありませんが、指している範囲が違います。

通知書で自分の上限を確認するときは、区分ごとの限度額が並んでいるはずですので、合計でいくらになっているかを見てください。

6.2 上限の引き上げが自分に影響するとは限りません

賦課限度額はあくまで上限であって、多くの世帯の保険料はここに到達しません。上限が上がったからといって、全員の保険料が上がるわけではないということです。

一方で、子ども分の新設は上限に届かない世帯にも関わります。金額としては大きくありませんが、これまでになかった項目が加わる点は押さえておきましょう。

6.3 料率は自治体ごとに違います

この記事で挙げた水戸市の料率は一例です。所得割率も均等割額も市区町村によって異なりますので、記事の数字をそのまま自分の保険料の目安にはできません。

お住まいの自治体のホームページか、手元の通知書で確認してください。

7. 【対応策】通知書が届いたら確認したい3つのこと

手元の書類を前に、順に見ていきましょう。

7.1 区分ごとの内訳を見る

通知書には、医療分・支援金分・介護分・子ども分それぞれの金額が記載されています。所得割と均等割の内訳も分かれているはずです。

前年の通知書が残っていれば、並べて見比べてみてください。どの区分がいくら増えたのかが見えると、金額への納得感も変わってきます。

7.2 軽減が適用されているか確かめる

世帯の所得が一定以下であれば、均等割額と平等割額に7割・5割・2割の軽減が適用されます。判定には世帯主と世帯内の被保険者全員の所得が使われますので、本人の所得が低くても同じ世帯に所得の高い方がいれば対象にならないことがあります。

軽減は原則として申請なしで適用されますが、所得の申告がないと判定そのものができません。収入がない年でも申告は済ませておきましょう。

7.3 負担が重いと感じたら早めに窓口へ

保険料には軽減や減免、医療費には高額療養費という仕組みがあります。ただし、減免は誰でも受けられるわけではなく、災害や所得の著しい減少といった要件があります。

使えるかどうかは一人ひとりの状況で変わりますので、自己判断で諦めず、お住まいの市区町村の担当課へ相談することをおすすめします。

8. まとめにかえて

2026年度の国民健康保険料は、賦課限度額が従来の3区分で109万円から110万円へ引き上げられました。あわせて子ども・子育て支援金等課税額3万円が新設され、区分は3つから4つになっています。両方を合わせた総額は113万円です。

上限に到達する世帯は限られますが、区分が増えたこと自体は多くの加入者に関わります。手元の通知書で、区分ごとの内訳と軽減の適用を確認してみてください。

また、高額療養費の限度額区分は保険料とは別に8月1日で切り替わります。届いた通知がどちらのものかを確かめてから読むと、混乱しにくくなります。制度を正しく知っておくことが、毎年の負担を驚きではなく想定内にしていく一歩につながります。

参考資料

太田 彩子