風邪をひいたときの市販薬や、通院・入院の医療費。1年分を合計すると、思った以上の金額になっていることがあります。医療費の負担を軽くする税の仕組みが「医療費控除」で、その特例として市販薬の購入費を対象にした「セルフメディケーション税制」があります。

筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)として家計相談に携わってきましたが、「医療費は10万円を超えないと意味がないと思っていた」「セルフメディケーション税制は聞いたことがあるけれど、よく分からない」という声をよく耳にします。国税庁によると、2025年分の確定申告で医療費控除を受けた人は818万人で、そのうちセルフメディケーション税制を使った人は5万5000人でした。

この記事では、医療費控除とセルフメディケーション税制の利用状況と、それぞれの仕組みを確認します。記事後半では、どちらを選べばよいかの考え方や、2027年からのセルフメディケーション税制の見直しも整理します。

1. 【医療費控除】2025年分「818万人」が利用、セルフメディケーション税制は「5.5万人」

まずは、医療費控除とセルフメディケーション税制が、実際にどのくらい使われているのかを見てみましょう。

1.1 医療費控除の利用者は4年で75万1000人増えた

国税庁の「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、2025年分の確定申告で医療費控除を受けた人は818万人でした。2021年分の742万9000人から、4年で75万1000人増えています。

1.2 セルフメディケーション税制は医療費控除を受けた人の約150人に1人

医療費控除のうち、セルフメディケーション税制を使った人は5万5000人でした。2021年分の2万8000人からは約2倍に増えましたが、医療費控除を受けた人全体の約150人に1人にとどまります。

医療費控除とセルフメディケーション税制の適用者数の推移です。1/5

医療費控除とセルフメディケーション税制の適用者数の推移

出所:国税庁「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」をもとにLIMO編集部作成

なお、マイナポータルと連携して、医療費の支払額などを確定申告書に自動入力した人は408万人で、前年分から98万人増えました。

2. 【医療費控除】1年間の医療費が10万円を超えた部分を、所得から差し引く

次に、医療費控除の仕組みを確認します。

2.1 医療費から10万円を差し引いた額が控除の対象

医療費控除とは、自分や生計を一にする家族(お財布が同じ家族)のために、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費が一定額を超えたときに、その超えた部分を所得(収入から経費などを引いた儲け)から差し引くことができる制度です。所得から差し引くことを「所得控除」と呼び、これによって税金を計算するベースが小さくなるため、結果として所得税や住民税が安くなります。

具体的な控除額の計算は、支払った医療費の合計から保険金などで補てんされる金額を差し引き、さらに10万円を差し引いた額となります。ただし、総所得金額等(1年間の合計所得)が200万円未満の人の場合は、10万円ではなくご自身の総所得金額等の5パーセントを差し引きます。控除の上限額は200万円です。

2.2 市販薬も、治療のためなら医療費控除の対象に

病院や薬局で支払った医療費だけでなく、治療や療養に必要な市販薬の購入費も、医療費控除の対象になります。家族の分も合計できるため、1人では10万円に届かなくても、家族分を合わせると超える場合があります。

3. 【セルフメディケーション税制】対象の市販薬の購入費が年1万2000円を超えたら使える

セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例です。名前は聞いたことがあっても、仕組みまでは知らない人が多いかもしれません。

3.1 対象の市販薬の購入費から1万2000円を差し引く

国税庁の規定によると、セルフメディケーション税制の控除額は、対象となる特定の市販薬(特定一般用医薬品等)の購入費の合計から、1万2000円を差し引いた額となります。控除額の上限は8万8000円です。

対象となるのは、もともと医師が処方する医療用医薬品だった成分が、薬局などで買える市販薬に転用された「スイッチOTC医薬品」などです。難しく聞こえるかもしれませんが、対象商品のパッケージには専用の共通識別マークが印刷されており、購入時のレシートや領収書にも対象商品であることが星印などで分かりやすく表示されています。

3.2 健康診断などを受けていることが条件

この制度を利用するには、ご自身の健康の維持増進や病気の予防への取り組みとして、その年に「一定の取組」を行っていることが条件となります。

具体的には、勤務先の定期健康診断、人間ドック、インフルエンザの予防接種、特定健康診査(メタボ健診)、市区町村のがん検診などが該当します。ご自身の働き方や状況に合わせて、受けやすいものを選べるよう配慮されています。