5. 為替リスクとどう付き合うか。ヒントは公的年金の運用にある
海外の株式や債券に投資する以上、為替変動の影響をゼロにすることはできません。ただし、「値動きの波をどこまで和らげられるか」は、資産の組み合わせ方次第で変わってきます。そのヒントになるのが、私たちの年金積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の考え方です。
GPIFは2025年度からの基本ポートフォリオとして、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式をそれぞれ25%ずつ保有する方針を採用しています。
特定の国や資産、通貨に偏らせず、値動きの異なる複数の資産を組み合わせることで、どれか一つが下落しても他の資産がその影響を和らげ、全体としての振れ幅を抑える設計です。
オルカンやS&P500のように株式・外貨建て資産に集中投資する商品は、上昇局面では大きなリターンが期待できる一方、今回のように為替が逆風となる局面では、その影響をまともに受けやすい性質があります。
個人の資産形成でも、株式一本に絞るのではなく、債券や国内資産、複数の通貨建て資産を組み合わせることで、値動きの波を穏やかにするという発想は参考にできます。
「オルカンなら全世界に分散できているから安心」と思われがちですが、実際には組入上位はアメリカが6割以上を占め、値動きの多くを米国株と為替が左右する構造になっています。GPIFのように国内外の株式・債券を均等に近い比率で持つ発想と比べると、オルカン・S&P500はどちらも「株式・海外資産に寄った」ポートフォリオだと言えます。積立投資そのものを否定するつもりはありませんが、株式ファンドだけで資産形成を完結させるのではなく、預金や債券性の資産もあわせて持っておくことで、今回のような下落局面でも慌てずに済む土台ができると感じています。
6. まとめ
2026年7月の利回りだけを見ればS&P500の下げ幅がやや小さく、単月では分がありました。
しかし3年・設定来といった長期ではS&P500、直近1年ではオルカンが優勢になるなど、比較する期間によって結果は変わります。
そして今回の下落そのものは、株価の悪化というより為替の変動が主な要因でした。
海外資産に投資する以上、為替の影響とは長く付き合っていくことになります。GPIFの基本ポートフォリオのように資産・地域・通貨を分散させる考え方を参考にしながら、目先の月次リターンに一喜一憂せず、自分のリスク許容度に合った資産配分を続けていくことが大切です。
【投資に関するご注意】
- 本記事は特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
- 投資には元本を割り込むリスクが伴います。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行われるようお願いいたします。
参考資料
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」月次レポート(2026年7月)
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」月次レポート(2026年7月)
- 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「基本ポートフォリオの考え方」
- GPIF「2026年度第1四半期運用状況(速報)」
和田 直子

