「オルカン」「S&P500」という愛称で親しまれる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。どちらも長期の積立投資先として選ばれることが多い人気ファンドですが、2026年7月は両ファンドとも基準価額を下げて月末を迎えました。

「結局、7月はどちらの利回りが良かったのか」「なぜ2つとも下がったのか」。

この記事では、両ファンドの月次レポート(2026年7月末時点)をもとに、7月の運用成績を数字で比較したうえで、下落の背景にある「為替」の影響を掘り下げていきます。

あわせて、海外資産に投資する際に欠かせない「分散」の考え方も、公的年金の運用を担うGPIFの例を交えて整理します。

ココがポイント
  • 2026年7月の基準価額はオルカン▲496円、S&P500▲449円と、下落幅はオルカンの方がやや大きい
  • 両ファンドとも下落の主因は「為替」。S&P500は下落分のほぼ全てが為替要因、オルカンも為替要因が半分近くを占める
  • 海外資産は為替変動の影響を避けられない。GPIFの基本ポートフォリオ(国内債券・国内株式・外国債券・外国株式を各25%ずつ)のように、資産や通貨を分散させる発想が値動きの波を和らげるカギになる

1. 7月の基準価額、下がったのはどっち?下落幅を比較

まず結論から確認しましょう。

2026年7月の1カ月間で、オルカンの基準価額は496円下落、S&P500は449円下落しました。

金額でみるとオルカンの方が下げ幅は大きく、月間騰落率でもオルカンが▲1.3%、S&P500が▲1.0%と、7月単月の「利回り」はS&P500の方が相対的に「マシ」だったことになります。

ただし、これは7月だけを切り取った結果にすぎません。同じ月次レポートには、3カ月・6カ月・1年・3年・設定来といった複数の期間のトータルリターンも公表されています。次の章で、この期間別の数字を並べて、どちらのファンドが「勝っている」と言えるのかを確認していきます。

2. 期間別で見ると順位は入れ替わる(トータルリターンと年平均利回り)

2026年7月31日時点の月次レポートをもとに、期間別のトータルリターンと、それを年率換算した年平均利回りを1枚の表に整理しました。

オルカン・S&P500 期間別トータルリターン&年平均利回り比較(2026年7月末時点)1/3

オルカン・S&P500 期間別トータルリターン&年平均利回り比較

出所:三菱UFJアセットマネジメント 各ファンド月次レポート(2026年7月)をもとにLIMO編集部が年率換算・作成(運用期間:オルカン約7年9カ月、S&P500約8年1カ月)

面白いのは、期間を変えるだけで優劣が入れ替わる点です。1カ月・3カ月・6カ月という短中期はS&P500が優勢、直近1年だけはオルカンが上回り、3年・設定来という長期になると再びS&P500が優勢になります。「どちらが正解か」を一概に決めるのは難しく、比較する期間次第で結論が変わることを踏まえておく必要があります。

3. 複利で効いてくる「年率」と「コスト」の差

長期の年平均利回りを見ると、S&P500がオルカンを1年あたり1%前後上回るペースで増えています。わずか1%程度の差に見えても、長期の複利運用では最終的な資産額に大きな違いを生むポイントです。

あわせて確認しておきたいのが、保有中ずっとかかり続ける信託報酬(コスト)です。

  • オルカン:年率0.05775%以内(100万円保有時の目安:年間約578円)
  • S&P500:年率0.09372%以内(100万円保有時の目安:年間約937円)

コスト面ではオルカンにわずかな優位性があります。差額自体は年間で数百円程度ですが、リターンの差だけでなく、こうしたコストの積み重ねも長期運用ではじわじわと効いてきます。

4. 下落の正体は「為替」。変動要因を分解する

7月の下落がどのような内訳で発生したのかは、月次レポートの「変動要因」という項目で確認できます。

オルカン・S&P500 2026年7月の変動要因2/3

オルカン・S&P500 2026年7月の変動要因

出所:三菱UFJアセットマネジメント 各ファンド月次レポート(2026年7月)をもとにLIMO編集部作成

S&P500の内訳を見ると、株式要因は+5円とわずかながらプラスでした。つまり、投資先である米国企業の株価そのものは底堅く推移していたことになります。それにもかかわらず基準価額全体がマイナスになったのは、為替要因が▲454円と、下落分のほぼすべてを占めていたためです。米国株式にほぼ100%投資するS&P500は、為替の動きが基準価額にダイレクトに反映される構造だと分かります。

オルカンも構図は近く、先進国株式は+183円のプラスでしたが、新興国株式が▲419円、為替要因が▲237円とマイナス側に働き、合計で▲496円となりました。オルカンは新興国株式や国内株式にも資産を振り分けている分、為替以外の要因も混ざりますが、それでも為替要因は下落幅の半分近くを占めています。

つまり今回のケースでは、両ファンドとも「投資先企業の業績が悪化した」というより「円高方向への動きが基準価額を押し下げた」という側面が強いと言えます。海外資産に投資する商品である以上、株価と為替という2つの変動要因が常にセットで働いていることを、あらためて意識しておきたいところです。

和田 直子

「基準価額が下がった=投資先の会社の業績が悪化した」と受け止めてしまう方は少なくないでしょう。しかし今回のように、株式要因はプラスなのに為替要因のマイナスで全体が押し下げられるケースは珍しくないのです。ニュースで円高・円安が話題になったときこそ、保有ファンドの月次レポートを開いて、下落が「株価」由来なのか「為替」由来なのかを切り分けてみる習慣をつけると、必要以上に不安にならずに済みます。