5. 直近決算では、この構造がセグメントの組み替えとして表れた

2027年3月期1Qで、この資本関係は開示の形そのものを変えている。

会社は当連結会計年度の期首から、ファミリーマートの主管を第8セグメントから食料セグメントへ移した。同社に関連する資産・負債と損益を食料セグメントに帰属させたうえで、当社株主に帰属する四半期純利益のうち7割を第8セグメントに配分する形にしたという。前年同期と前期末の数値も組み替えられている。

つまり、コンビニの利益は今期から二つのセグメントに割られて計上される。資本関係が一つ変わるだけで、開示の骨格までが動く。

数字も見ておこう。1Qの収益は3兆8,759億円で前年同期比+8.9%、売上総利益は6,560億円で606億円の増加だった。当社株主に帰属する四半期純利益は2,938億円で98億円の増益である。

会社の説明によると、売上総利益の増加はエネルギー・化学品、金属、情報・金融、機械が押し上げた。一方で有価証券損益は381億円と前年同期の1,305億円から924億円減っており、前年同期にあった株式売却の反動が効いている。

それを埋めたのが持分法による投資損益だ。1,116億円で前年同期の639億円から478億円増えた。会社は機械、金属、食料、住生活の寄与を挙げている。

税引前四半期利益は3,700億円で、前年同期の3,748億円からわずかに減った。それでも当期利益が増えたのは、法人所得税費用が162億円軽くなったためである。

食料セグメントの1Qの数字も押さえておきたい。収益は1兆4,227億円、売上総利益は2,216億円で、前年同期の2,158億円から増えている。ファミリーマートを取り込んだ後の姿がここに乗る。

第8セグメントに残る当社株主に帰属する四半期純利益は125億円で、前年同期の103億円から増えた。分けられた側にも利益は残っている。

6. 粗利率は業種並み。それでもROEが2倍近い理由

5期を並べると、この会社の稼ぎ方の変化が見える。売上総利益は1兆9,371億円、2兆1,299億円、2兆2,323億円、2兆3,764億円、2兆4,805億円と5期連続で増えている。

当期利益も2026年3月期に9,002億円で過去最高を更新した。

ここで粗利率を計算してみる。2026年3月期の収益は14兆8,230億円だから、売上総利益2兆4,805億円に対する比率は16%台になる。卸売業の粗利率の中央値は16.9%だ。ほぼ同じである。

薄い差益で数をこなす商売だという一般的な見方は、この一点だけを見れば当たっている。差益の厚みそのものは業種の真ん中と変わらない。

それでもROEが業種の中央値の2倍近いのは、どこから来るのか。

一つは資本の使い方だ。株主資本比率が業種の中央値より低いぶん、資産を厚く回している。総資産は2026年3月期末で16兆7,328億円まで膨らんだ。

もう一つは持分法投資である。連結の内側に取り込まない出資先の利益が、粗利益を通らずに当期利益へ入ってくる。1Qで1,116億円という規模は、その効きの大きさを示している。

ROE自体はピークからは下がっている。2022年3月期の21.8%から、17.7%、15.6%、15.7%、14.6%へと低下した。ただこれは分母側の事情でもある。株主資本は同じ5期で4兆1,993億円から6兆5,899億円へ、1.5倍を超えて厚くなった。

営業キャッシュフローも1兆1,318億円まで積み上がり、投資キャッシュフローは▲3,888億円、財務キャッシュフローは▲7,264億円だった。稼いだ資金を投資と還元の両方へ回している配分である。

7. 筆者コメント

業種の中での立ち位置に照らすと、この会社の姿はもう少し違って見えてくる。

粗利率は卸売業の真ん中と変わらない。株主資本比率は業種の中央値より低い。数字の形だけを取り出せば、平均的な卸売業者に近い。

それでも資本収益率が業種を大きく上回るのは、薄い差益を大きな資産で回し、そこに連結子会社と持分法投資からの利益を重ねているからだろう。稼ぎ方が一段ではなく二段になっている。

そう考えると、コンビニを連結の内側に置いた選択の意味も見えてくる。あれは小売業への進出というより、粗利益の性質を入れ替える手だったのではないだろうか。トレードの差益は相場で振れるが、店舗網からの収入は振れ方が違う。

資本収益率がピークから下がり続けていることを、私は必ずしも劣化だとは読まない。分母が5期で大きく厚くなった結果でもある。見るべきは水準の低下そのものより、厚くなった資本をどこへ振り向けるかだろう。

 

参考資料

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石津 大希