4. 【元銀行員の視点】50歳代からできる3つの上乗せ設計
元銀行員として資産運用アドバイザーを約10年担当してきた経験から、50歳代の給与水準を活かした3つの上乗せ設計を整理していきます。世帯単位の視点で、それぞれの制度を組み合わせることがポイントです。
4.1 上乗せ1|加入期間の延長と在職定時改定
60歳以降も厚生年金の対象で働き続けると、その分の保険料が将来の受給額に反映されます。65歳以上70歳未満は「在職定時改定」で毎年10月分から自動的に増額改定されるしくみもあります。50歳代のうちに60歳以降の働き方をイメージしておくと、上乗せの見通しが立てやすくなります。
4.2 上乗せ2|NISAの成長投資枠と配偶者名義活用
NISAの年間投資枠は1人360万円です。夫婦で使えば年720万円の非課税投資枠を確保できます。50歳代は現役時代で最も可処分所得が厚くなる時期ですので、NISAの成長投資枠を配偶者名義でも活用すると、世帯単位での資産形成が加速します。
「投資は自分だけの名義」と考えがちですが、贈与税の基礎控除(年110万円)の範囲で配偶者名義に振り分ければ、税制上も無理なく分散できます。世帯合算で見ると、老後の可処分所得の底上げにつながる設計です。
4.3 上乗せ3|繰下げ受給と加給年金の組み合わせ
65歳の受給開始を遅らせる繰下げ受給は、1ヶ月あたり0.7%増の強力な制度です。夫婦別々に繰下げ時期を選べる点も活用できます。加給年金の対象になっている場合はそのタイミングとの組み合わせも要確認です。
5. 【落とし穴】50歳代で見落としやすい制度連動
50歳代から老後の年金額を意識するとき、いくつか見落としやすい制度連動があります。
5.1 50歳以上のねんきん定期便の見方
50歳以上のねんきん定期便には「60歳まで加入した場合の年金見込額」が記載されます。この見込額は「今の給与水準で60歳まで働き続ける前提」の試算のため、給与が変動する場合や退職時期を早める場合は、ねんきんネットで最新の試算をし直すことをおすすめします。
5.2 退職金と厚生年金の受給時期の重なり
退職金と公的年金の受給時期が重なる場合、税制上の扱いに注意が必要です。退職金は退職所得控除、公的年金は公的年金等控除の対象です。受給時期をずらすことで税負担を軽減できるケースがあります。
6. 【対応策】世帯単位で老後家計を設計する3ステップ
50歳代からの老後家計設計は、次の3ステップで進めていくのが実務的です。世帯単位の視点で、書面と一次資料を組み合わせて整理していきましょう。
6.1 ステップ1|夫婦それぞれのねんきん定期便を並べる
夫婦それぞれの現時点の受給見込額をエクセルなどに並べ、世帯月額と年換算を計算します。ねんきんネットで受給開始年齢を変えたシミュレーションも合わせて作ると、より精緻な設計ができます。
6.2 ステップ2|NISA・iDeCo・退職金の見込額を書き出す
現時点のNISA・iDeCo・企業年金・退職金の見込額を書き出します。老後の総資産の見通しが具体化すると、月額換算での取り崩しペースが計算できます。
6.3 ステップ3|金融機関・FPで長期プランを設計
世帯単位の年金見込額と資産一覧をもとに、金融機関の資産運用相談やファイナンシャル・プランナーへの相談を組み合わせるのが有効です。相続・介護のスケジュールとあわせた長期プランを書面化すると、判断の基準が明確になります。
7. まとめにかえて
50歳代の平均給与は将来の厚生年金額を大きく左右する時期です。世帯単位で受給額を試算しておくと、老後資金の準備すべき金額感が具体化します。
正確な見込額はねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。50歳代のうちに加入期間の延長・NISA配偶者名義活用・繰下げ受給の3セットを組み合わせて、世帯単位の可処分所得を最大化する設計を検討してみてください。
参考資料
和田 直子