「厚生年金は月10万円もらえない人がどれくらいいるのだろうか」と気になったことはありませんか。老後家計を組み立てるとき、平均額だけでなく分布の実態を押さえておく必要があります。

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金の受給者のうち月額10万円未満の割合は19.0%でした。男女別では男性9.3%・女性38.2%と大きな差があり、女性では約4割が10万円未満という結果です。

この記事では、少額受給層の分布と背景を、令和6年度の一次資料をもとに整理していきます。あわせて、少額受給層が使える補完制度と、家計を安定させる書面での確認方法を確認していきましょう。

1. 厚生年金10万円未満の分布

まずは公表データから、少額受給層の割合を確認していきましょう。老齢厚生年金(基礎年金込み)の月額別分布です。

1.1 全体で19.0%、5人に1人が10万円未満

令和6年度末時点の老齢厚生年金受給者のうち、月額10万円未満は19.0%でした。約5人に1人が該当する水準です。5万円未満は1.5%、5万〜10万円未満は17.5%という内訳になっています。

受給額が10万円を下回るケースは決して少数派ではありません。制度上、平均額(男性16万9967円・女性11万1413円)を大きく下回る受給者の層が一定数存在することを、まず数字で押さえておく必要があります。

1.2 男女差:男性9.3%、女性38.2%

男女別に見ると、男性で10万円未満の割合は9.3%、女性は38.2%でした。女性は約4割が該当する計算です。差の背景には、加入期間や平均標準報酬月額の男女差があります。

女性で10万円未満に該当する方の多くは、結婚・出産で加入期間が短くなったケース、第3号被保険者期間が長かったケース、あるいは平均標準報酬月額が低い水準で推移したケースが重なっています。

男女別・月額階級別の受給者割合を整理し、10万円未満の分布を可視化しています1/2

厚生年金10万円未満の男女別割合

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」よりLIMO編集部作成

2. 少額受給の背景にある3要因

少額受給層が生まれる背景は、個人の加入履歴と制度設計の重なりから説明できます。3つの要因に分けて整理していきます。

2.1 要因1|加入期間の短さ

厚生年金の受給額は「加入月数×平均標準報酬月額×一定の乗率」で計算されます。加入期間が短ければ短いほど、報酬比例部分が薄くなります。

大学卒業後22歳から60歳まで40年勤めた場合と、途中で10年ブランクがあった場合を比べると、報酬比例部分は約4分の3の水準にとどまります。加入期間の抜けは、そのまま受給額の差に反映されます。

2.2 要因2|平均標準報酬月額の低さ

加入期間全体の平均標準報酬月額が低いと、報酬比例部分の積み上がりも小さくなります。パート・アルバイトの短時間勤務が長い方、途中で正社員から契約社員に切り替わった方などが該当します。

令和6年度時点の平均標準報酬月額の男女差は、女性が男性の約6〜7割の水準にあります。この差が、少額受給層の男女差に反映されています。

2.3 要因3|基礎年金部分の抜け

老齢基礎年金は20歳〜60歳の40年間で加入期間・保険料納付済期間が決まります。この期間に未納・免除・学生納付特例などがあると、基礎年金部分も満額(令和8年度で月7万608円)に届きません。

厚生年金の報酬比例部分と基礎年金部分の両方が薄くなると、合計月額が10万円未満に落ち込む構造です。「加入履歴の抜け」を早めに把握しておくことが、対策の第一歩になります。

3要因それぞれが受給額にどう影響するかをモデルケースで整理しています2/2

少額受給の3要因分解

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」等をもとにLIMO編集部作成

3. 少額受給層が使える補完制度

受給額が少ない層向けに、公的な補完制度が用意されています。要件確認と申請の書面手続きが必要です。

3.1 年金生活者支援給付金(月5620円)

老齢年金生活者支援給付金は、65歳以上で老齢基礎年金を受給し、要件を満たす人に支給される給付金です。令和8年度の基準額は月5620円で、年間約6万7000円の上乗せになります。

対象になるには「世帯全員が住民税非課税」かつ「本人の前年所得が80万9000円以下」の両方を満たす必要があります。少額受給層でも同居家族に住民税課税の方がいれば対象外になるため、世帯全員の状況を書類で確認しておく必要があります。

3.2 住民税非課税世帯向けの優遇措置

住民税非課税世帯に該当する場合、介護保険料の軽減・後期高齢者医療の配慮措置・高額療養費の自己負担限度額の引き下げなど、複数の優遇措置が受けられます。それぞれ市区町村や保険者への申請が必要です。

熊谷 良子

少額受給層が使える制度は、ねんきんネットの記録と市区町村の課税証明書を書面で照合するところから始まります。書類ベースで整理していくと、対象になる制度の抜け漏れが少なくなります。

4. 【一次資料で照合する】ねんきんネットで自分の受給見込を把握

少額受給層に該当する可能性がある方は、まずねんきんネットで加入履歴と将来の受給見込額を確認しておくことが出発点です。書面ベースで数字を確認すると、補完制度の該当有無を判断しやすくなります。

4.1 加入期間の抜けを1件ずつ確認

ねんきんネットにログインすると、これまでの加入履歴が一覧で表示されます。「未加入期間」「未納期間」「免除期間」「学生納付特例期間」など、月ごとの状態が確認できます。抜けがある場合は年金事務所で照合を依頼することで、記録の修正や追納の相談ができます。

加入履歴の一覧をPDFでダウンロードして家計簿ファイルに保管しておくと、翌年以降の記録と比べやすくなります。書類として残しておく習慣が、老後家計の管理をシンプルにします。

4.2 将来の受給見込額を毎年更新

50歳未満は「これまでの加入実績に応じた年金額」、50歳以上は「60歳まで加入した場合の年金見込額」が表示されます。毎年誕生月に届くねんきん定期便と併せて、書面ベースで受給見込額を年1回更新しておくことをおすすめします。

5. 【落とし穴】書面で確認しないと見えない項目

補完制度の情報は、対象になる方に自動で届く仕組みではありません。書面と一次資料を自分で照合する必要があります。

5.1 住民税非課税判定は毎年変わる可能性

住民税非課税かどうかは前年所得で毎年判定されます。年金額の改定や、パート収入の変動などで課税・非課税が入れ替わることがあります。毎年6月頃に届く住民税決定通知書と、市区町村で発行する住民税非課税証明書を書類保管しておくと、給付金の該当判定がスムーズです。

5.2 世帯全員の課税状況を書類で確認

老齢年金生活者支援給付金は世帯全員の課税状況が要件です。同居する子どもや配偶者の課税状況を把握していないと、給付金の該当判定を誤ることがあります。世帯全員分の課税・非課税証明書を年1回取得しておくと、確実に判断できます。

6. 【対応策】書面と家族共有で老後家計を安定させる

少額受給層の家計を安定させるには、書面ベースの管理と家族との情報共有が有効です。次の3ステップで整えていきましょう。

6.1 ステップ1|ねんきんネットと課税証明書のセット保管

ねんきんネットの加入履歴・受給見込額と、住民税課税・非課税証明書を、家計簿ファイルに1年ごとにまとめておきます。デジタル管理する場合は共有ドライブに保管しておくと、家族と共有しやすくなります。

6.2 ステップ2|市区町村と年金事務所で該当制度を確認

保管した書面をもとに、市区町村の税務課・介護保険課・国保/後期高齢者医療窓口と、年金事務所または街角の年金相談センターで、該当する制度を確認します。書面がそろっていると、窓口での相談がスムーズです。

6.3 ステップ3|家族と共有して長期計画に活かす

少額受給の状況は、相続や医療費控除の準備にも関わります。夫婦・親子で情報を共有しておくと、いざというときの手続きがスムーズです。年1回、家族で書類を一緒に確認する時間を設けておくと、長期的な家計計画にも活かせます。

7. まとめにかえて

令和6年度末の厚生年金受給者のうち、月額10万円未満は全体で19.0%、女性では38.2%が該当します。この分布は制度設計と個人の加入履歴の重なりから生じており、少額受給層は決して少数派ではありません。

補完制度は書面と一次資料を照合しながら1つずつ確認していく必要があります。ねんきんネット・住民税非課税証明書・年金事務所や市区町村の窓口を活用して、家族と共有できる形で書面を残しておくことをおすすめします。

参考資料