2027年3月期1Qで増益率が三桁になった中身
連結の数字に戻ってみよう。2027年3月期1Qの売上収益は2,099億円で前年同期比+26.1%。売上総利益は975億円、粗利率は46.5%で1.0ポイント改善した。
営業利益は189億円で+226.0%、営業利益率は9.0%と5.5ポイント上がった。税引前四半期利益は185億円で+217.8%、親会社の所有者に帰属する四半期利益は106億円で+131.1%だ。増益率が三桁で並ぶ決算はそう多くない。
なぜここまで伸びたのか。会社の説明によると、制御機器事業でAI需要を背景とした半導体投資やデータセンター向けの二次電池投資を着実に捉えたことに加え、代理店とのリレーション強化や新商品の拡充を通じた顧客基盤の拡大が効いた。営業利益についても、制御機器事業の増収効果と継続的な収益性向上施策の効果が大きいとしている。
オムロンは通期予想を引き上げた
会社は通期予想も上方修正した。売上収益は期初の8,200億円から8,800億円へ、営業利益は620億円から800億円へ、親会社の所有者に帰属する当期利益は275億円から405億円へと引き上げている。
2Q以降についても、半導体業界および二次電池業界向けの設備投資が期初想定から拡大して推移すると見込む一方、社会システムでは競争環境が期初想定より厳しくなると見ている。強気と慎重が同居した見通しだ。
修正後の通期営業利益800億円に対し、1Qの189億円は23.6%の進捗にあたる。四半期を単純に4等分した25%にはわずかに届かないが、引き上げた直後の予想に対してこの水準なら、出足として無理のない位置と読み取れる。
なお1Qの営業利益率9.0%は、電気機器の営業利益率中央値6.7%を上回る。この四半期に限れば、収益性は業種の平均より上の側にいる。
5期のROEが映す、稼ぐ力の落ち込みと戻り
ただし年単位に目を移すと、景色は反転する。
過去5期のROE(自己資本利益率)は、2022年3月期が9.7%、2023年3月期が10.6%と二桁に届いていた。ところが2024年3月期は1.1%へ急落し、2025年3月期2.1%、2026年3月期3.5%と、戻りは緩やかだ。
電気機器の業種中央値は7.4%である。四半期の利益率では業種の上位側にいるのに、年次の資本効率では中央値の半分にも届かない。この二つは矛盾するようでいて、同じ会社の中で同時に成り立っている。落ち込みが深かったぶん、戻る途中の断面がいまの数字だと考えられる。
還元はこの間ほぼ据え置かれた。2026年3月期の1株当たり配当は104円で、配当性向は71.8%まで上がっている。利益が縮んだのに配当を維持したので、性向が受動的に押し上げられた形だ。電気機器の配当性向中央値は35.7%なので、水準は倍ほどある。2027年3月期は1株110円の予想で、増配を見込む。
自己資本比率は2026年3月期で55.1%、業種中央値の62.2%より低い。通期予想の親会社の所有者に帰属する当期利益405億円を1Q末の親会社所有者帰属持分8,320億円に当てても、ROEは5%前後にとどまる計算だ。中央値の7.4%まではまだ届かない。
筆者コメント
この会社の何が変わろうとしているのか。
私が引っかかるのは、上方修正の中身が制御機器に大きく寄っている点だ。AI関連の設備投資は強い材料だが、需要の波が最も荒い領域でもある。その波に業績の伸びを預けるほど、1株利益の振れ幅は大きくなる。
そこで意味を持つのが、血圧計とデータの事業だろう。生活財に近いヘルスケアは、設備投資サイクルとは別の理屈で動く。データソリューションは黒字に転じたばかりだが、測って集めたものを継続的に売る型に近い。振れの大きい柱と振れの小さい柱を並べて持てるかどうかが、資本効率が業種の真ん中へ戻る道筋を左右するのではないだろうか。
還元の姿にも同じ論点がある。利益が縮んだ局面で配当を維持したのは株主にとって心強いが、性向が受動的に上がった状態を長く続けるのは難しい。増配を重ねる前提には、稼ぐ力の回復が要る。
四半期の勢いではなく、柱の組み合わせがどう変わるかを追ってほしい。
参考資料
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石津 大希