4. 介護費用の平均額「20万6300円」に潜む「実感の重さ」

介護費用の平均20万6300円という数字は、あくまで介護保険が給付する前の総費用額です。実際には自己負担が1〜3割となり、さらに高額介護サービス費などの上限制度があるため、家計を直撃するのはこの何分の一かに収まります。

4.1 「使い切らない人」と「使い切れない人」がいる

介護費用は要介護度と本人・世帯の所得区分によって自己負担が変わり、実際に使う金額には大きな幅が生じます。

同じ要介護度でも、必要なサービスを控えめに使う方と、区分支給限度基準額の上限近くまで使う方に分かれる傾向があります。

家族の介護負担、住まいの環境、地域のサービス供給量など、平均額だけでは見えない要素が積み重なるためです。

5. 【落とし穴】平均寿命の時間軸と物価上昇のダブル圧力

厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」によると、平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳です。65歳以降のセカンドライフは15〜20年ほど続く計算になります。

5.1 15年間続く月4万円赤字は「約760万円」の重み

先述の月4万2434円の赤字を15年間続けた場合、単純計算で約760万円の取り崩しになります。ここに介護費用や大型支出(家電の買い替え、住まいの修繕など)が加わることを想定すると、老後費用の大切さを実感するものです。

5.2 物価が年2〜3%上がると、実質購買力は10年で2〜3割目減り

近年の物価上昇を踏まえると、現金だけで備える場合の実質的な目減りも無視できません。10年で2〜3割程度の購買力低下を想定しておくと、対応の幅が広がります。

6. 【対応策】固定費見直し・年金繰下げ・NISAの三本柱

では、具体的にどのような備えが考えられるでしょうか。順に整理します。

6.1 通信費・保険料の見直しで月1万〜2万円の削減も

まず着手しやすいのは固定費の見直しです。格安SIMへの切替や生命保険の整理で、月5000円〜1万円ずつの削減が現実的な範囲です。年間で12万〜24万円の余力が生まれれば、赤字の圧縮効果は大きくなります。

6.2 年金繰下げは1年で8.4%増、最大10年で84%増

年金の繰下げ受給制度があります。年金の受給開始を1カ月遅らせるごとに0.7%、1年で8.4%受給額が増えるという仕組みです。最大10年繰下げると84%の増額です。

もちろんデメリットもありますが、健康寿命や資産の状況を踏まえながら、繰下げの是非を検討する価値はあるでしょう。

6.3 NISAのつみたて投資枠で長期の積立を

2024年から始まった新しいNISAでは、つみたて投資枠を使って長期の資産形成が可能です。iDeCoとの併用も選択肢に入ります。

投資には元本割れのリスクがあるため、無理のない金額から始めることが基本です。

7. まとめ|統計データから逆算する老後の備え

介護費用の総額11兆9381億円、受給者1人あたり月20万6300円という数字は、老後の家計に「介護」というもう一つの支出項目が加わる可能性を示しています。

65歳以上無職夫婦の月4万2434円の赤字、平均貯蓄2494万円という現実と重ね合わせると、備えの具体像がより明確になります。

まずは自分の年金額の把握、固定費の見直し、そして早めの資産運用検討の3ステップから始めることが、セカンドライフの安心につながります。

参考資料

太田 彩子