4. 値上げの3割は「中東発」。原油・資材高がじわりと波及

値上げの要因を見ると、依然として「原材料高」が90.9%と最も多くを占めています。

ただし、この割合は3月以降、緩やかに低下する傾向にあります。

代わって存在感を増しているのが、「物流費」(65.8%)と「包装・資材」(64.0%)です。

いずれも、中東情勢の悪化に伴う原油・ナフサ価格の高騰が背景にあります。

トレーやフィルムといった包装資材の値上がりや品薄が、物流コストや原材料コストにも波及している構図です。

実際、「中東情勢」を要因として挙げた値上げは全体の27.8%に達しており、約3割を占めるまでになりました。

加えて、1米ドル160円前後の円安が続いていることも、輸入コストを通じて値上げ圧力を強めています。

和田直子
「カレーが安くなった」という実感と、「食品全体が値上げラッシュ」というニュースが同時に流れると、どちらを信じればいいのか迷ってしまいますよね。

実はこの2つは矛盾していません。

カレー物価を押し上げていたのは主に「コメ」という一つの要因で、その要因が落ち着いたために大きく値下がりしました。

一方で食品全体の値上げは、原材料・物流・資材・人件費といった複数のコストが同時に積み上がっている状態です。

1つのメニューの動きだけで「物価は落ち着いた」と判断せず、家計全体では警戒を続けておくのが実務的な対応だと思います。

5. 消費税「1%」への引き下げ、つなぎ措置の中身

こうした食品全体のコスト高への対応として、政府は2026年8月5日、「給付付き税額控除」の制度導入に関する基本方針を閣議決定しました。

この基本方針では、恒久的な「所得に連動したきめ細かな給付」制度の本格導入を令和11年度と位置づけたうえで、そこに至るまでの2年間の経過措置(つなぎ)として、2027年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%とする方針が示されています。

あわせて、消費税1%相当分の範囲内で、中低所得の現役勤労者を対象とした所得連動型の給付を2027年度に先行導入することで、飲食料品にかかる消費税の実質ゼロ化をめざすとしています。

この方針はまだ閣議決定された段階であり、実施には今後、法制上の措置が必要になります。

帝国データバンクの試算では、6月時点のカレーライス物価をもとに、この減税が実現した場合の家計負担を計算すると、1食あたり328円前後まで下がり、2024年秋ごろの水準まで負担感が和らぐとされています。

6食分の材料が「2000円でお釣りが出る」計算になるとしており、インパクトの大きさがうかがえます。

ただし、店頭価格が実際に7%分そのまま下がるとは限らないうえ、値上げの主因である原材料・物流・資材・人件費といった「粘着質」なコストは、消費税の引き下げによって直接抑えられるわけではありません。

和田直子
消費税を1%に引き下げる効果自体は、家計にとって決して小さくありません。

ただ、今回の値上げの主因は原材料や物流、資材といった「一度上がると下がりにくい」コストです。

減税による負担軽減と、こうした粘着質なコスト高がどちらが優勢になるかは、中東情勢や為替の動き次第という不確実な部分が残ります。

制度が実際に始まるまでにはまだ法制上の手続きも必要なので、決定事項としてではなく、今後の動向として注視しておくのがよいと思います。

6. まとめ:食卓の「休息」は一時的、警戒は続く見通し

2026年6月のカレー物価の急落は、記録的だったコメ高騰が一段落したことによる、いわば一時的な休息です。

その裏では、中東情勢に由来するコスト高が、加工食品や調味料、酒類・飲料など幅広い品目に染み込みつつあります。

9月には今年最多となる4531品目の値上げが見込まれ、2026年後半にかけても断続的な値上げが続くとみられています。

通年の値上げ品目数は、前年(2万609品目)に匹敵する2万品目台での推移が見込まれています。

消費税1%への引き下げ方針は家計にとって助けにはなりますが、それだけで物価高がすぐに解消するわけではなさそうです。

1つのメニューの値下がりに一息つきつつも、食卓全体としては、しばらく値上げの動向を見ておく必要がありそうです。

参考資料

和田 直子