年金を受け取っていたご家族が亡くなった直後は、葬儀の準備や役所への届出など、やるべきことが次々に重なります。

この慌ただしさの中で、見落とされがちなのが「本来受け取れるはずのお金」です。

年金受給者本人の口座は、死亡の事実が確認されると凍結され、以降は年金が自動で振り込まれることはありません。

それどころか、亡くなった後に家族が受け取れる複数のお金は、届け出をしなければ一切支給されない「請求主義」の仕組みになっています。

本記事では、年金受給者が亡くなったときに遺族が請求できる代表的な5つの給付金について、対象者や金額の目安、注意点を整理してご紹介します。

ココがポイント
  • 年金受給者の死亡後、口座は凍結され年金は自動的に振り込まれなくなる
  • 未支給年金・遺族年金など、家族が請求しないと受け取れないお金が5種類ある
  • 死亡一時金の請求期限は2年と特に短く、他の給付(原則5年)より早めの対応が必要

1. 年金受給者が亡くなった時に家族が受け取れるお金5選

年金受給者が亡くなった時に家族が受け取れるお金5選(未支給年金・遺族年金・死亡一時金・寡婦年金・葬祭費・埋葬料の対象者・金額・請求期限一覧)

1.1 未支給年金と遺族年金――多くの家庭で発生する基本の2つ

未支給年金は、年金の支払いが「後払い」であることから生じます。

年金は偶数月に前2か月分がまとめて支払われるため、亡くなった時点では必ず未受給分が残ります。

この分は自動的には振り込まれず、生計を同じくしていた遺族が請求してはじめて受け取れます。

遺族年金は、亡くなった方の年金の加入状況によって「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分かれます。

自営業者(国民年金のみ)だった場合は遺族基礎年金が中心となり、子がいない場合は対象外になることが多くなります。

会社員・公務員として厚生年金に加入していた場合は、遺族厚生年金が主な給付となります。

未支給年金・遺族年金はいずれも請求期限が5年です。

和田直子

父が会社員として厚生年金に長く加入していた、いわゆる「会社員OB」だったケースを例に考えてみましょう。

まず発生するのは、①未支給年金の請求です。父の年金は偶数月に前2か月分がまとめて支払われる仕組みのため、亡くなった月までの分がまだ手元に届いていない可能性が高く、生計を同じくしていた家族(多くは母)が請求すれば受け取れます。

次に、②遺族厚生年金です。会社員として厚生年金に加入していた期間があるため、母が生計を維持されていた遺族であれば、遺族基礎年金・遺族厚生年金の両方、または遺族厚生年金のみを受け取れる可能性があります(子がすでに独立している場合は遺族基礎年金の対象外になることが一般的です)。母が40歳以上65歳未満で一定の要件を満たす場合には、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が上乗せされることもあるので、年金事務所での確認をおすすめします。

そして③埋葬料です。父が会社の健康保険(協会けんぽや企業の健康保険組合)に加入していたなら、生計を維持されていた家族(多くは母)が申請すれば5万円の埋葬料を受け取れます(生計維持関係のない親族が埋葬した場合は、5万円の範囲内で実際の火葬料や霊柩車代などの実費が「埋葬費」として支給されます)。逆に父が自営業者で国民健康保険に加入していた場合は、埋葬料ではなく市区町村の「葬祭費」を申請することになります。

このように、父の働き方によって使う制度の名称も窓口も変わってくる点を覚えておくと、手続きの際に迷いにくくなります。

1.2 死亡一時金・寡婦年金――「国民年金第1号被保険者」がキーワード

死亡一時金と寡婦年金は、他の3つの給付とは対象者の範囲が大きく異なります。

どちらも、亡くなった方が国民年金の第1号被保険者だった期間が一定以上あることが条件になっています。

第1号被保険者とは、自営業者やフリーランス、学生、無職の期間などが該当する区分です。

会社員・公務員として厚生年金に加入していた期間(第2号被保険者)や、その扶養に入っていた期間(第3号被保険者)は、この2つの給付の対象にはカウントされません。

つまり、亡くなった方が一度も自営業等の期間を持たず、会社員・公務員として働き続けていた場合は、死亡一時金も寡婦年金も原則として受け取れません。

死亡一時金の金額は、保険料納付済期間に応じて12万円から32万円です。付加保険料を36月以上納めていた場合は、さらに8,500円が加算されます。

寡婦年金は、夫の老齢基礎年金額のうち第1号被保険者期間に係る部分の4分の3にあたる額を、妻が60歳から65歳になるまで受け取れます。死亡一時金と寡婦年金はどちらか一方を選ぶ選択制です。

ここで特に注意したいのが請求期限です。死亡一時金は死亡日の翌日から2年で時効となり、未支給年金や遺族年金、寡婦年金(いずれも5年)より短くなっています。

和田直子

死亡一時金と寡婦年金は、亡くなった方が国民年金の第1号被保険者、つまり自営業やフリーランス、無職の期間があった方に限られる給付です。会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間や、その扶養に入っていた期間は、この2つの給付の対象にはカウントされません。

たとえば、長く自営業を営んでいた夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取る前に亡くなった場合、妻は寡婦年金(10年以上の婚姻関係があれば60歳から65歳になるまで、夫の老齢基礎年金額のうち第1号被保険者期間分の4分の3にあたる額)を受け取れる可能性があります。ただし寡婦年金と死亡一時金はどちらか一方しか選べない仕組みのため、金額を比較したうえでどちらを選ぶか検討する必要があります。

特に注意していただきたいのが、死亡一時金の請求期限は死亡日の翌日から2年しかないという点です。遺族年金や寡婦年金の5年に比べてかなり短いため、対象になりそうな場合は早めに年金事務所や市区町村の窓口に相談することをおすすめします。

一方、会社員として厚生年金に加入していた夫が亡くなった場合は、そもそも死亡一時金や寡婦年金の対象にはならず、遺族厚生年金が中心の給付になります。「うちは自営業だったか、会社員だったか」という働き方の違いだけで、使える制度が大きく変わってくる点は、多くの方が見落としがちなポイントです。

1.3 葬祭費・埋葬料――請求先は年金事務所ではなく健康保険

葬祭費・埋葬料は、年金制度ではなく健康保険制度からの給付である点に注意が必要です。

会社員・公務員など健康保険(協会けんぽや企業の健康保険組合など)に加入していた方が亡くなった場合、その方によって「生計を維持されていた家族」が請求すれば「埋葬料」として一律5万円が支給されます。

しかし、亡くなった方に生計維持関係のある家族がおらず、別生計の親族などが葬儀を行った場合は「埋葬費」の請求となり、「5万円の範囲内で実際に埋葬に要した実費(火葬料や霊柩車代など)」が支給される仕組みになっています。

一方、自営業者や年金受給者など、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた方が亡くなった場合は、住んでいる市区町村の窓口へ「葬祭費」を申請する形になります。

葬祭費の金額は自治体によって異なり、おおむね3万円から7万円程度の範囲で設定されていますが、多くの市区町村では5万円を採用しています(東京23区など一部地域では7万円が支給されます)。

ここでもっとも注意したいのが、2年という請求期限(時効)の「カウントが始まる日(起算日)」の違いです。

  • 健康保険の「埋葬料」:「死亡した日の翌日」から2年
  • 国保などの「葬祭費」:「葬儀(葬祭)を行った日の翌日」から2年
  • 生計維持関係のない人が行う健康保険の「埋葬費」:「実際に埋葬を行った日の翌日」から2年

「葬儀の翌日から2年」と一括りに思い込んでいると、亡くなってから葬儀までに日数があった場合、埋葬料の時効を過ぎてしまう危険があります。窓口が年金事務所ではなく健康保険側になる点も含めて正しく把握し、申請漏れのないようにしましょう。