5. 手取りが増えない時期こそ、積立をやめる前にできること。ファイナンシャルアドバイザー・松本真奈が挙げる優先順位
出産や育児、働き方の変化などによって収入が減り、手取りが増えない時期に、これまで続けてきた積立投資をどうすべきか迷う。そんな方は少なくありません。家計に余裕がなくなるなかで、「このまま積立を続けても大丈夫なのか」「一度ストップしたほうがいいのではないか」という不安は、実際の相談の場でもよく聞かれます。ここからは、収入が減った時期に積立の扱いに悩まれた40代の方の事例をもとに、ファイナンシャルアドバイザーの松本真奈さんに伺った考え方をご紹介します。
5.1 貯蓄を取り崩す日々のなかで、積立をどうするか迷っていた40代

手取りが増えない時期に、日々の生活を守ることと、将来に向けた資産形成をどう両立させていくか。この葛藤から家計のやりくりに頭を悩ませるという声は、相談の場でも数多くいただきます。
5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・松本真奈が回答】まず手元資金、次に固定費、そして柔軟性
将来資金のために積立をしている人が増えていますが、「NISAを主体」とした資産形成に偏っていないか確認することが必要になります。
昨今はマーケット環境が好調であり、誰が初めてもたいていうまくいくのがNISAのイメージとなっています。ですが、やはりその中身は投資信託であり、絶対の信頼がおけるものではありません。過去には資産価値が半分まで下がった事例もあります。
この投資が主体となっている中で急な出費が必要となると、下落相場であれば損をしてしまう可能性があります。
そのため、手元の必要資金を整理したうえでの余剰資金を投資に充てていくという順序をできるだけ守って進められると良いですね。
5.3 ポイント1:手元資金の確保を、積立額より先に置く
まず見直したいのは、手元資金の確保と積立額のバランスです。貯蓄が目減りしていく状況では、将来の備えよりも先に、今の暮らしを支える資金へ目を向ける必要があります。この方は、目的が重複していた年金保険を解約して生活費の足しにしつつ、NISAでの積立額を無理のない範囲に調整する方針を立てられました。「手元の資金が減って不安な中、一部の保険を解約して生活費に充てながら、積立のペースを見直したい」――収入が減った時期は、無理に高い金額で積立を続けるよりも、まずは日々の生活を支える手元資金を確保することが何より大切になります。ただし、貯蓄性のある保険を途中で解約すると、受け取れる額が払い込んだ額を下回ることがあります。解約を検討する際は、返戻金の水準と、その保障を手放すことの影響をあわせて確認しておきたいところです。
5.4 ポイント2:固定費を見直して、積立を続ける余力を作る
そのうえで重要になるのが、積立を続けるための原資をどう捻出するかです。この方は、健康への不安から複数の保険に加入していましたが、状況を整理していくなかで、本当に必要な保障とそうでないものが見えてきました。保障で備える部分と、時間をかけて積み立てていく部分。この二つの役割を切り分けて考えると、手取りが増えない時期でも、外せる特約や重複した契約が見つかることがあります。一度削れば効果が続く固定費に手をつけることで、少額でも積立を続ける余力は生まれます。ただし、どこまで保障を削れるかは、扶養する家族の有無や健康状態によって変わります。特約を外したあとで同じ条件には戻せないこともあるため、削る前に、その保障が本当に不要かを確認しておく必要があります。
5.5 ポイント3:状況に応じて、方針を変えてよいと決めておく
また、状況に応じて柔軟に方針を変えていく姿勢も欠かせません。この方はその後、想定していなかった出来事が重なり、資産運用に対する考え方にも変化が生じました。積立は継続しつつも、必要に応じて引き出しを検討し、状況が落ち着いてから改めて運用方針を考える――そう切り替えられたのです。苦しい時期は積立を一時的に減らしたり、必要に応じて引き出したりする。その柔軟性が、長期的な安心につながっていきます。なお、値下がりしている局面で引き出せば、その時点で損失が確定します。近いうちに使う可能性があるお金と、当面動かさずに置いておくお金を分けておくと、こうした判断がしやすくなります。
手取りが増えないからと積立を完全にやめてしまう前に、手元資金の確保、固定費の見直し、そして柔軟な運用方針という三つを一つずつ整理してみる。それだけでも、続けられる形は見つかるものです。なお、どこまで積立を減らせるか、どの保障を残すべきかは、家族構成や収入、健康状態によって変わります。保険の解約や運用資金の引き出しを検討される際は、契約内容と解約時の条件を確認したうえで、個別の事情に応じて専門家にご相談ください。
6. まとめにかえて|地域差も資産形成の差も、積み重ねの結果
厚生年金の平均年金月額は神奈川県17万457円、青森県12万8129円で、地域差は月4万円以上、20年間の累計では約1016万円にのぼります。ただしこの差は、現役時代の報酬水準や加入期間という「積み重ね」の結果であり、住んでいる場所そのものが原因ではありません。
資産形成も同じです。今回の試算では、35年間の積立のうち5年間を中断しただけで、資産額に約159万円の差が生まれることを確認しました。手取りが増えない時期こそ、積立をゼロにするのではなく、金額を減らしてでも続けることが、将来の差を小さくする近道になります。
