厚生年金の受給額には、都道府県によって月4万円以上の差があることをご存知でしょうか。この記事では、厚生年金の全国平均と都道府県別の格差を確認したうえで、その差がなぜ生まれるのか、そして手取りが増えない時期にも積立を続ける工夫について整理していきます。

松本 真奈
30代・40代の方から「手取りが増えない時期に積立をどうすべきか」というご相談をよくいただきます。この記事では、都道府県による年金格差の大きさを確認したうえで、積立を中断した場合としなかった場合の差を試算します。

なお、厚生年金の全国平均・都道府県別平均年金月額・受給額の決まり方のデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【北海道から沖縄県まで】厚生年金の平均月額《都道府県別の受給額格差》をランキングで比較!《多い都道府県・少ない都道府県》上位5都県とは? 厚生年金(老齢基礎年金を含む)の全国平均は15万289円。男女差・個人差、そして地域差を見る!
【北海道から沖縄県まで】厚生年金の平均月額《都道府県別の受給額格差》をランキングで比較!《多い都道府県・少ない都道府県》上位5都県とは? 厚生年金(老齢基礎年金を含む)の全国平均は15万289円。男女差・個人差、そして地域差を見る!
ココがポイント
  • 厚生年金の平均年金月額は神奈川県17万457円、青森県12万8129円。地域差は4万円以上にのぼる
  • 受給額は住んでいる場所ではなく、現役時代の報酬と加入期間で決まる
  • 積立を5年間中断すると、35年間続けた場合と比べて資産額に約159万円の差が生まれる

1. 厚生年金の全国平均

会社員や公務員、またパートで特定適用事業所(※1)に働き一定要件を満たす人は、老齢厚生年金+老齢基礎年金(国民年金)の併給となります。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の全受給権者(※2)の平均年金月額は15万289円でした。

ただし、男女差・個人差があり、実際に受け取る金額は一人ひとり違います。

※1 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介

〈全体〉平均年金月額:15万289円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金部分を含む

1.1 厚生年金受給額の個人差(受給額分布・抜粋)

  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人(最多)
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 30万円以上~:1万9283人

このように、厚生年金は幅広い受給額層に分布しています。同時に平均年金月額の「都道府県差」もあるのです。

2. 厚生年金の平均年金月額「多い都道府県」「少ない都道府県」

厚生年金の平均受給額は、都道府県で差があります。では、平均年金月額が「多い都道府県」「少ない都道府県」はどこなのでしょうか。厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、ランキング形式で見ていきましょう。

2.1 厚生年金の平均年金月額が「高い」都道府県【上位5都県】

  • 神奈川県:17万457円
  • 千葉県:16万5103円
  • 東京都:16万3892円
  • 奈良県:16万2292円
  • 埼玉県:16万1752円

2.2 厚生年金の平均年金月額が「低い」都道府県【上位5県】

  • 青森県:12万8129円
  • 沖縄県:12万8819円
  • 宮崎県:12万9224円
  • 秋田県:12万9503円
  • 山形県:13万1169円

都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額2/3

都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

都道府県別の平均年金月額において1位の神奈川県と47位の青森県では、その差は月額4万円以上になります。年間で考えると50万円を超えるため、地域ごとの格差は小さいとはいえないでしょう。

もちろん、厚生年金の受給額は住んでいる場所で決まるわけではありません。この差は、厚生年金受給額がどのように決まるかに理由があります。

2.3 神奈川県と青森県の差、20年間受け取るといくらになる?

1位の神奈川県(17万457円)と47位の青森県(12万8129円)の月額差は4万2328円でした。この差を、65歳から85歳までの20年間受け取り続けた場合の総額に換算してみましょう。

【月額の差】
17万457円 - 12万8129円 = 4万2328円

【20年間(65〜85歳)の累計差】
4万2328円 × 12カ月 × 20年 = 約1016万円

都道府県による平均額の差だけでも、生涯では1000万円を超える開きになる計算です。ただし、これは地域そのものが原因ではなく、次に見る「現役時代の働き方の違い」が積み重なった結果です。

3. 厚生年金受給額の決まり方

厚生年金の受給額の計算には、現役時代の報酬(給与や賞与)と、年金加入期間が使われるため、個人差が出やすいしくみです。厚生年金の報酬比例部分は、以下の計算式の合計で決まります。

  • A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
  • B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数

厚生年金の受給額は、現役時代の報酬と加入期間の長さによって決まります。このしくみが、都道府県ごとの平均年金額の差に直結しています。都市部では賃金水準が高い傾向があり、また、地域によって自営業や共働き世帯の比率も異なります。こうした現役時代の働き方の違いが、年金の平均年金月額の差として表れているのです。

4. 国民年金の平均月額

国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、保険料を納付した月数で決まります。そのため、厚生年金に比べて、個人差や男女差、そして地域による格差は大きくありません。参考として、国民年金(老齢基礎年金)の都道府県別平均年金月額を見てみましょう。

4.1 都道府県別「国民年金(老齢基礎年金)」の平均年金月額(抜粋)

  • 北海道:5万8435円
  • 東京都:5万8313円
  • 富山県:6万2989円(全国最高水準)
  • 沖縄県:5万4217円

国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、5万円から6万円台が中心で、全国平均は5万9431円です。この金額だけで老後の生活費をまかなうのは、現実的に厳しいと感じる人も多いでしょう。そのため、厚生年金の上乗せがない自営業者やフリーランスの方などは特に、現役時代から計画的な資産形成を始めることが大切です。

4.2 積立を5年間中断した場合、35年後の資産額はどれだけ変わる?

現役時代の「継続」が老後の受給額を左右するのと同じように、資産形成における「積立の継続」も将来の資産額を大きく左右します。手取りが増えない時期に積立を中断した場合と、続けた場合を試算してみましょう。30歳から65歳までの35年間、毎月1万円を年利3%で積み立てるケースを基準とします。

【35年間、毎月1万円を継続した場合】
35年後の資産額:約742万円

【最初の5年間を中断し、残り30年間だけ積み立てた場合】
35年後の資産額:約583万円

【差額】
約742万円 - 約583万円 = 約159万円

全体の積立期間のうち、わずか5年(約14%)を中断しただけで、35年後の資産額には約159万円もの差が生まれます。これは、中断していた期間の積立元本が失われるだけでなく、その期間分の複利効果もまるごと失われるためです。手取りが増えない時期こそ、積立額をゼロにするのではなく、少額でも続けることに意味があると言えるでしょう。なお、これは一定の利回りが続くと仮定した試算であり、投資信託などの運用には元本割れの可能性があります。

松本 真奈
積立期間の一部を中断するだけでも、複利の効果を失う分、将来の資産額への影響は想像より大きくなります。手取りが増えない時期は、金額を減らしてでも続けることを優先していただければと思います。

監修者コメント

中本 智恵

厚生年金の都道府県差が月4万円以上という数字は、住んでいる場所そのものではなく、現役時代の報酬水準や加入期間の積み重ねが結果として表れたものです。同じように、資産形成における差も、一時の判断ではなく「続けたかどうか」の積み重ねで生まれます。

記事中の試算のとおり、積立を5年間中断するだけで、35年後の資産額には約159万円の差が生まれます。手取りが増えない時期には、積立をやめるという選択肢がまず頭に浮かびがちですが、金額を減らしてでも続けることのほうが、長期的には効果が大きいケースが多いと感じています。

家計が苦しい時期こそ、ゼロか継続かの二択ではなく、「いくらなら続けられるか」を考えてみましょう。少額でも継続することが、複利の効果を活かす一番の近道になります。