9. 40代に多い「健康なうちに使えなければ意味がない」という葛藤。ファイナンシャルアドバイザー・奥田朝が伝えたいこと
将来への不安から資産形成を始めたものの、いざ資産が育ってくると、いつ、どのように現金化して使えばいいのか迷うという声は、実際の相談の場でもよく聞かれます。ひたすら運用に回し続けるべきか、今の生活のために一部を取り崩すべきか、出口戦略に悩む方が多いようです。
9.1 40代に多いお悩み相談は「どこにいくら持っているのか分からない」

9.2 【ファイナンシャルアドバイザー・奥田朝が回答】全体像を整理し、使いながら運用する
9.3 ポイント1:保有資産の全体像を正確に把握する
まず見直したいのは、ご自身が保有している資産の全体像を正確に把握することです。この方も、バラバラに管理していた預貯金や運用商品を一つにまとめて整理したことで、「自分が一体どこにいくら持っているのか改めて把握できたのが一番よかった」と話すようになりました。運用を続けるにしても現金化するにしても、手元にいくらあり、どれがすぐに使えるお金で、どれが将来のためのお金なのかを色分けすることが重要です。まずは現在の立ち位置を客観的に確認することが、すべての判断の土台として欠かせないステップになります。
9.4 ポイント2:お金の置き場所を変えて「使いながら運用する」
そのうえで、運用か現金化かの二者択一ではなく、お金の置き場所を変えて「使いながら運用する」という選択肢を持つことが重要です。この方は、資産の一部を定期的に利益を受け取れる仕組みに移すことを選び、「今持っているお金の置き場所を変えるような感覚で、毎年いくらか受け取れる方法にしたい」と気づいたように、柔軟な発想へと変化していきました。すべてを将来のために縛り付けるのではなく、運用を継続しながらも定期的に手元に現金が入る仕組みを作ることで、今の生活の潤いと将来への備えを両立させる視点が、年齢を重ねるにつれてより大切になります。
9.5 ポイント3:「増やす運用」から「守る運用」へ目的意識をアップデートする
また、運用に対する目的意識をアップデートすることもポイントです。この方は、資産の一部を価格変動の穏やかな商品へ移し替える過程で、「積極的に増やすというより、築き上げた資産を守り抜くためのものだと理解できた」という気づきを得ました。資産形成の初期段階では増やすことが主目的になりがちですが、ある程度の資産が築けた後は、目減りするリスクを抑えながら守る運用へとシフトしていくことが、安心して資産を持ち続けるための鍵となります。
運用に残すか現金化するかと極端に決めつける前に、まずは資産の全体像を整理し、お金の置き場所や運用の目的を一つずつ見直してみることが、今の楽しみと将来の安心を両立させる第一歩になります。
10. まとめにかえて
65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額は2494万円ですが、毎月の家計収支は約4万2000円の赤字というのが実態でした。この赤字を現金の取り崩しだけで補うか、一部を運用に回して運用益でカバーするかで、資産が目減りするペースは大きく変わります。
今回の試算で確認したとおり、年利2%程度で運用できれば、元本にほとんど手をつけずに毎月の赤字をまかなえる計算になります。すべてを現金に置くか、すべてを運用に回すかという極端な選択ではなく、当面の生活費と当面使わないお金を分けたうえで、ご自身に合った配分を見つけることが、老後の資産を長持ちさせる鍵になります。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2025年(令和7年)平均結果の概要―(二人以上の世帯)」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)―2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「第3 家計調査の貯蓄・負債編の見方」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- LIMO「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」
徳田 椋
