株価が急に動き出すとき、材料は一つとは限らない。

三菱マテリアル(5711)は8月上旬の四半期決算を境に、直近1カ月で株価が大きく水準を切り上げた。通期の利益予想が大幅に引き上げられたことが、直接の引き金になったとみられる。

もっとも、非鉄金属という業種につきまとう「市況次第」というイメージだけでは、足元の数字は読み切れない。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

この記事の3つのポイント

  •  ①三菱マテリアルは2027年3月期通期の純利益予想を前期比+245%へ大幅に引き上げた
  •  ②株価は直近1カ月で2割ほど高い水準となり、直近時点のPERは4.83倍、PBRは0.87倍と1倍を下回る
  •  ③金属市況や円安に加え、資源事業の配当やAI関連需要が利益を押し上げた構図

直近1カ月で2割上昇、決算を境に一段高となった三菱マテリアル

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

三菱マテリアルの株価は、直近1カ月で大きく水準を切り上げた。

7月中旬は4,200円前後での推移で、7月下旬には一時3,900円台まで下押しする場面もあった。流れが一変したのは8月上旬だ。

四半期決算の開示を境に株価は急伸し、5,100円台へと一気に水準を上げた。その後も5,300円台まで上値を伸ばし、直近では5,100円台での推移となっている。当日は前日から小幅に下落したものの、直近1カ月では株価は2割ほど高い水準にある。

バリュエーションの見え方も大きく変わった。直近時点のPERは4.83倍と低い水準にあり、PBRは0.87倍と1倍を下回っている。とくにPERは決算前の10倍台から急低下しており、これは通期の1株当たり利益予想が大きく引き上げられたことを反映していると考えられる。

1Qは黒字転換、通期純利益予想を+245%に引き上げ

株価の急伸の裏側には、四半期決算での大幅な業績の上振れと通期予想の引き上げがある。

2027年3月期1Qの売上高は5,970億円と前年同期比38.4%増、営業利益は329億円となった。前年同期は営業損失だったため黒字転換である。経常利益は519億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は512億円で、いずれも前年同期の損失から黒字に転じた。

これを受けて会社は通期予想を引き上げた。通期の売上高予想は2兆4,000億円(前期比30.1%増)、営業利益予想は1,300億円(同114.9%増)、経常利益予想は1,800億円(同84.5%増)、純利益予想は1,400億円(同245.0%増)となる。純利益は前期実績の3.5倍にあたる水準だ。

利益はなぜここまで伸びたのか。会社の説明によると、中核のマテリアル領域で銅・タングステン・金といった主要金属の価格が上昇し、為替が円安基調で推移したことが効いた。加えて資源事業では鉱山からの受取配当金が増え、高機能製品事業ではAI関連の需要拡大が寄与したという。

市況、為替、配当、AI需要。複数の追い風が同じ四半期に重なったことが、利益の水準を押し上げた構図と読み取れる。もっとも金属価格や為替は反転もありうるだけに、この水準がどこまで続くかは慎重に見ておきたい。

筆者コメント

見逃せないのは、株価の急伸と同時に、PERの見え方が大きく変わった点だ。

株価は上がったのに、PERはむしろ低くなった。分母である利益の予想が、株価の上昇以上に引き上げられたためと考えられる。

株価が先に走ったというより、利益の絵が塗り替えられ、そこに株価が後から追いついた。足元の動きは、そんな順序で読めるのではないだろうか。