鉄道会社と聞くと、景気に左右されにくい安定した商売という姿を思い浮かべる人が多いだろう。だが西武ホールディングス(9024)の利益は、年ごとに大きく振れる。増益の1Q決算を挟んでも株価は下げた。安定のイメージと、実際の利益の揺れ。この落差がどこから来るのかを整理したい。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

この記事の3つのポイント

  •  ①2027年3月期1Qは営業利益260億円、前年同期比+41.5%と増益で着地した。
  •  ②株価は7月末に3,700円台をつけた後に軟化し、8月13日は3,242円まで下げた。
  •  ③会社は通期の純利益を270億円、前期比▲30.5%の減益と見込んでいる。

1カ月で1割下げた株価と、増益の1Q

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近1カ月の株価は、上げてから下げる展開だった。7月下旬にかけて水準を切り上げ、7月29日には3,761円と期間の高値をつけた。

しかし1Q決算を発表した7月31日を境に流れは変わった。8月に入ると軟調に転じ、8月10日には3,231円まで下げている。8月13日の終値は3,242円で、前日終値3,412円からは5%の下落となった。1カ月では1割ほど水準を落とした計算だ。

増益決算のあとに株価が下げたのは、なぜか。真の理由は需給や地合いが絡み断定できないが、通期の純利益が減益見通しであることや、高値をつけた後の利益確定売りが重なった可能性がある。目先の増益と通期の減益予想という二層の構図が、上値を抑えたと読み取れる。

2027年3月期1Q、営業利益260億円の実像

1Q単体の数字は明るい。営業収益は1,545億円で前年同期比+16.7%、営業利益は260億円で同+41.5%、経常利益は255億円で同+48.0%、親会社株主に帰属する四半期純利益は167億円で同+24.4%となった。

会社によると、保有物件の流動化や国内ホテル業でのインバウンド需要の取り込み、鉄道業での需要増が収益を押し上げた。とりわけ不動産事業のセグメント利益は118億円と、前年同期の61億円からほぼ倍増し、1Qの増益を牽引した。1Qには不動産子会社を通じて不動産会社を取得し、のれんが170億円増えている。

もっとも会社は通期の営業利益を530億円(前期比+16.4%)とする一方、純利益は270億円(同▲30.5%)と減益を見込む。1Qの勢いと通期の慎重な見通しには開きがある。四半期の好調をそのまま通期に引き延ばして読まない姿勢が要る局面だ。

PBR1.4倍と、鉄道株というイメージのズレ

直近時点のPERは30.5倍、PBRは1.44倍だ。PBRは1倍台にとどまり、株価純資産倍率としては控えめに映る。

ここで効いてくるのが、利益のブレの大きさだ。自己資本利益率(ROE)は2025年3月期に52%まで跳ね上がり、2026年3月期は6.9%へ急落した。陸運業のROEの中央値が7.7%前後であることを踏まえると、直近は業種の平均並みに戻った格好だが、前年の突出ぶりは異例だった。自己資本比率も32.9%と、陸運業の中央値41%を下回る。

鉄道会社は安定、という一般的な見方と、この乱高下は噛み合わない。安定して見えるのは運輸や日々の生活サービスの部分であり、そこに大型不動産の売却損益が乗ることで、連結の利益は年ごとに大きく姿を変える。安定と変動という二つの顔が、一つの会社の中に同居している。

筆者コメント

増益の1Qを出しながら株価が下げる。ちぐはぐに見えるこの動きは、通期の減益予想を市場が先に見ているためと読み取れる。

四半期の数字だけを追うと、この会社の利益は理解しづらい。鍵は、日々の運輸で稼ぐ安定した部分と、不動産の売却で一時的に膨らむ部分を分けて見ることだ。

1Qの主役だった不動産事業が、通期でどのタイミングで利益を計上するのか。そこに着眼して観察したい局面だ。