連結の利益を揺らす不動産流動化

年度をまたいで並べると、利益の振幅の大きさが際立つ。2025年3月期は営業収益9,011億円、営業利益2,927億円、純利益2,581億円と、それまでの水準から大きく跳ねた。

翌2026年3月期はその反動で、営業収益5,132億円(前期比▲43.0%)、営業利益455億円(同▲84.4%)、純利益388億円(同▲84.9%)へ急落した。会社は、東京ガーデンテラス紀尾井町の流動化を実行した反動などが減収減益の主因だと説明している。実際、不動産事業のセグメント営業収益は前期比▲85.8%、セグメント利益は同▲94.8%と大きく落ち込んだ。

保有する都心の大型物件を売却すれば、その期の利益は一気に膨らむ。逆に売却のない期は反動で落ちる。この流動化のタイミングが、連結利益を年ごとに揺らす最大の要因だ。ストック型で安定というイメージとは、少し異なる稼ぎ方がここにある。

柱はホテル・レジャー、支えは都市交通

不動産の振幅の一方で、事業ポートフォリオの土台を作っているのがホテル・レジャー事業だ。2026年3月期の営業収益は2,466億円で連結の48%を占め、セグメント利益は226億円、営業利益率は9.2%だった。セグメント利益は前期比+21.6%と伸び、インバウンド需要の取り込みが効いている。

都市交通・沿線事業は営業収益1,504億円で連結の29%を占める。セグメント利益は95億円で前期比▲15.6%と減ったが、これは人件費や減価償却費の増加が響いたためで、鉄道需要そのものは底堅い。会社は2026年3月に鉄道旅客運賃を改定しており、運輸収入の押し上げ効果が今後の下支えになると見込んでいる。安定した生活サービスの上に、変動の大きい不動産が乗る。この重なりを分けて眺めると、会社の稼ぐ力の性質が見えてくる。

筆者コメント

西武ホールディングスの決算は、連結の一本の数字だけを追うと読み違えやすい。2025年3月期のROE52%と2026年3月期の6.9%を並べれば、まるで別の会社のようにも映る。だが中身を分ければ、揺れているのは主に不動産で、ホテルや鉄道の土台は着実に積み上がっている。

見るべきは、この二層構造だ。日々の運輸とホテルが生む安定した利益に、大型物件の売却益がスパイスのように乗る。売却は毎年あるわけではないから、連結の利益は年ごとに大きく波打つ。

1Qで不動産が大幅増益となった一方、会社は通期の純利益を減益と見込む。この一見の矛盾は、流動化の計上時期のズレとして理解できる。鉄道株だから安定、と一括りにラベリングせず、どの事業がどの期に利益を生むのかを分けて追う姿勢をおすすめしたい。安定の顔と変動の顔を切り分けて見ることが、この銘柄では特に有効だと考える。

参考資料

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石津 大希