ゲーム会社の業績は新作の当たり外れで大きく振れる。多くの人がそう捉えているだろう。だがスクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)の直近の決算は、売上が減っても利益は伸びるという姿を見せている。株価も1カ月で水準を切り上げた。この「減収増益」の中身を、利益の質という切り口でたどりたい。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

この記事の3つのポイント

  •  ①2027年3月期1Qは営業利益170億円と、前年同期の90億円から大きく伸びた。
  •  ②株価は7月下旬の2,494円から切り上がり、8月13日は2,868円と1カ月で1割上昇した。
  •  ③会社は通期の営業利益を490億円、前期比▲10.5%の減益と慎重に見込んでいる。

1カ月で1割上げた株価と、1Qの大幅増益

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近1カ月の株価は、下値を固めてから上へ動いた。7月23日には2,494円と期間の安値をつけたが、その後は切り上がりに転じた。

7月29日に大きく上げて2,900円台に乗せ、1Q決算を発表した8月10日を経て、8月12日には2,974円と期間の高値をつけた。8月13日の終値は2,868円で、前日終値2,974円からは4%弱の反落となったものの、1カ月では1割ほど水準を上げた計算だ。

株価上昇の理由は一つに絞れないが、好調な四半期業績が改めて評価された面はあるだろう。加えて、新作の話題性やIP活用への期待が需給を支えた可能性もある。決算直後にいったん反落したのは、上げてきた後の利益確定の動きと読み取れる。

2027年3月期1Q、営業利益170億円の中身

1Qの数字は力強い。売上高は784億円、営業利益は170億円、経常利益は187億円で着地した。前年同期は売上593億円、営業利益90億円だったため、増収率は3割を超え、営業増益率は9割近くに達する。

なぜ利益がここまで伸びるのか。会社は前通期について、家庭用ゲームの新作が前年より減って売上は落ちたものの、過去に発売したカタログタイトルの販売や、高採算のIPロイヤリティ収入が利益を押し上げ、収益性も改善したと説明している。1Qの大幅増益も、この収益構造の延長線上にあると読み取れる。

興味深いのは、会社が強気になっていない点だ。通期の営業利益予想は490億円で、前期比▲10.5%の減益を見込む。1Qで既に通期予想の35%程度を稼いでいるにもかかわらず、通期は慎重に置いている。好スタートと保守的な計画の開きを、どう埋めていくかが今後の論点になる。

PER33倍・PBR2.9倍をどう見るか

直近時点のPERは33.4倍、PBRは2.92倍だ。いずれも市場平均と比べて高い部類に入る。

この高さの背景には、事業ごとの利益率の高さがある。2026年3月期の連結営業利益率は18%台で、情報・通信業の営業利益率の中央値8%台を上回る。ただしこの業種区分にはゲーム、通信、ITが混在しており、中央値をそのまま比較の物差しにするのは慎重であるべきだ。むしろ注目したいのは、出版やIPライセンスといった高採算事業を抱える同社固有の収益構造だ。新作の当たり外れで業績が決まるというイメージが先に立つが、実際の利益は複数の収益源に支えられている。

筆者コメント

売上が減っても営業利益は増える。1Qのこの姿は、ゲーム会社の業績イメージを少し裏切る。

効いているのは、新作の売上とは別の収益源だ。過去作のカタログ販売や、キャラクターのライセンスから入る収入は、新作の発売サイクルとは違うリズムで積み上がる。

株価はPER33倍と高い期待を映す。新作の話題だけでなく、こうした利益の土台がどこまで厚みを増すか。そこに目を向けて見ていきたい。