利益が大きく振れた5期

過去5期の利益を並べると、この会社の振れの大きさが見えてくる。営業利益は2022年3月期の592億円から、2024年3月期には325億円まで落ち込み、2026年3月期は547億円へ戻した。

純利益の振れはさらに大きい。2022年3月期の510億円から2024年3月期は149億円へ沈み、2026年3月期は296億円へ回復した。ROEも19.4%、16.4%、4.7%、7.5%、8.7%と、山と谷を描いている。2024年3月期の落ち込みには、組織再編にともなう費用や減損が重なった。

直近の2026年3月期も、経常利益は644億円と前期比+57.5%に伸びたが、その一因は円安による為替差益72億円だった。さらに組織再編費用121億円を特別損失に計上している。会社が説明するこうした一時的な要素を差し引いて、本業がどれだけ稼いだのかを見分ける目が要る。単年の利益の増減だけで、稼ぐ力を判断しないよう注意したい。

減収でも増益を生む収益構造

利益の質を確かめるには、セグメント別の姿が手がかりになる。中核のデジタルエンタテインメント事業は2026年3月期の売上が連結の58%を占めるが、売上は前期比▲16.3%と減った。それでもセグメント利益は同+28.0%と増え、営業利益率は25%台に乗せた。新作が減っても、既存タイトルの運営や収益性の改善で利益を伸ばした形だ。

より鮮明なのがライツ・プロパティ等事業だ。売上は235億円と小さいが、営業利益率は47.7%と際立って高く、セグメント利益は前期比+85.2%と急伸した。キャラクターやタイトルのライセンスから入るロイヤリティ収入が中心で、開発費や在庫を大きく抱えずに稼げる。出版事業も営業利益率33%台と厚い。これら高採算の事業が、新作サイクルの谷を埋める緩衝材として働いている。連結の一本の売上だけを見ていては、この稼ぐ力の分散は見えてこない。

筆者コメント

スクウェア・エニックスというと、大型タイトルの発売で株価も業績も動く会社という見方が根強い。もちろん新作は重要な収益源だ。しかし過去5期の利益の振れと、直近のセグメント別の利益率を重ねて見ると、少し違う姿が浮かび上がる。

売上の6割弱を占めるデジタルエンタテインメントが減収でも増益となり、売上比8%に満たないライツ・プロパティが47%を超える利益率で急伸する。稼ぐ場所が、新作一本足から複数の収益源へ広がりつつある。IPを持つ会社の強みは、まさにこの点にある。

一方で、利益の振れの大きさは残る。為替差益や組織再編費用といった一時的な要素も、単年の数字を膨らませたり削ったりする。だからこそ、発表される営業利益の大小に一喜一憂せず、どの事業がどんな利益率で稼いでいるのかを分けて追う姿勢をおすすめしたい。新作の話題性と、IPが生む継続的な収入。この二つを切り分けて見ることが、この銘柄では特に有効だと考える。

 

参考資料

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石津 大希