半導体の製造装置を手がける会社と聞くと、需要の波に大きく揺れる姿が先に立つ。だが装置の陰で静かに効いているのが、繰り返し買われる消耗品の需要だ。ディスコ(6146)の直近1カ月は、好決算を挟んで株価が荒く動いた。値動きの裏側で、同社の稼ぐ力がどう変わったのかを見ておきたい。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
この記事の3つのポイント
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①2027年3月期1Qは営業利益490億円、前年同期比+42.2%と大幅増益で着地した。 -
②株価は1Q発表後にいったん5万1千円台まで急落し、8月13日は65,830円へ切り返した。 -
③営業利益率は4割を超え、機械業種の中央値を大きく上回る稼ぐ力が続いている。
好決算を挟んで荒れた1カ月の値動き
直近1カ月の株価は、振れ幅の大きい展開となった。7月半ばは7万円台前半で推移していたが、1Q決算を発表した7月下旬から下押しが強まった。
7月23日の終値69,410円から一転、7月29日には51,320円まで売られ、数営業日で2割超の下落となった。その後は切り返し、8月13日の終値は65,830円と6万5千円台を回復している。前日終値62,960円からは4%を超える上昇だ。直近時点のPBRは12.3倍と、市場平均と比べて高い水準にある。
増益決算の直後に急落したのは、やや意外に映る。もっとも株価は業績だけで動くわけではない。高いバリュエーションのもとで材料が出尽くしたとの見方や、半導体関連株に共通するボラティリティの高さが、当日の売りを誘った可能性がある。その後の戻りは、生成AI関連投資の持続性が改めて意識された場面と読み取れる。
2027年3月期1Q、営業利益490億円の中身
肝心の決算は力強い内容だった。2027年3月期1Qの売上高は1,143億円で前年同期比+27.1%、営業利益は490億円で同+42.2%、経常利益は484億円で同+42.5%、親会社株主に帰属する四半期純利益は342億円で同+44.0%と、増収を上回るペースで利益が伸びた。
利益はなぜ伸びたのか。会社によると、生成AIの需要拡大を背景にデータセンタ向け投資が続き、先端ロジックやHBMなど高性能半導体向けの需要が高水準で推移した。精密加工装置の出荷が高付加価値製品を中心に好調で、消耗品である精密加工ツールの出荷も顧客の設備稼働率に連動して高水準だったという。損益面では、為替の影響と高付加価値製品の増加でGP率(粗利率)が上昇し、人件費や研究開発費の増加を吸収して増益になったとしている。
通期の営業利益予想は1,049億円(前期比+33.0%)で、1Qで既に47%近くを稼いだ計算になる。単純な進度でみれば速く、上振れの余地を意識したくなる水準だ。ただし装置の検収時期で四半期はぶれやすく、単純な年間換算で先走らない姿勢が要る。
PBR12倍を支える利益率4割の意味
PBR12.3倍という水準は、機械業種のなかで際立って高い。この高さを正当化しているのが、同社の異例の利益率だ。
2026年3月期通期の営業利益率は42.3%、粗利率は70%を超える。機械業種の営業利益率の中央値が8%前後、粗利率の中央値が30%弱であることを踏まえると、水準がまるで異なる。自己資本利益率(ROE)も25.1%と、同業種の中央値7.8%を大きく上回る。
半導体は水物で値動きが荒い、というイメージが先に立つ。だが利益の土台には、装置が動くほど買い替えが発生する消耗品の需要がある。装置需要の波を受けながらも利益の水準そのものが切り上がってきたのは、この繰り返し需要があるからだ。株価の荒さと収益基盤の底堅さという二つの姿は、同じ会社の中で同時に成り立っている。
筆者コメント
増益決算の直後に株価が急落し、数日で戻す。この一往復だけを見ると、業績と株価が噛み合っていないように映る。
だが噛み合っていないのは時間軸だ。四半期の数字は足元の稼ぎを映すが、株価は将来の期待とバリュエーションの調整を同時に織り込む。PBR12倍の株では、良い決算がそのまま上昇には直結しない。
荒い値動きに引っ張られず、消耗品需要という土台が利益をどこまで底上げし続けるか。そちらに目を向けて観察したい局面だ。
