5. 「財形貯蓄のままで大丈夫?」投資に抵抗感のある40代共働きの切実な悩み
将来に向けてまとまった資産を築きたいと考えつつも、何から手をつければいいのか迷うという方は少なくありません。特に、長年コツコツと貯蓄を続けてきたものの、今のままで本当に資産が増えるのか不安に感じる方が多いようです。

長年続けてきた貯蓄の習慣は素晴らしいものですが、環境の変化に合わせてお金の置き場所を見直すことには、多くの方が心理的なハードルを感じるものです。同じような迷いや抵抗感は、実際の相談の場でもよく聞かれます。
6. 《FAアドバイス》「預金放置」は損?住宅ローン繰り上げ返済より“運用”を優先すべき理由
こうした悩みに対して、相談を重ねる中でよく見えてくる考え方や注意点を紹介します。
まず見直したいのは、安全だと思い込んでいる貯蓄の持ち方です。財形貯蓄を続けることが最も確実だと考える方は多いのですが、物価上昇の局面ではお金の価値が目減りしてしまう点に気づき、金利が固定された債券などへの切り替えを検討し始める方も増えています。過去に投資で慎重になった経験があっても、仕組みを正しく理解することで、過度な不安を手放せるケースも少なくありません。「預金だけでは価値が下がるかもしれない」という気づきの通り、資産の一部を金利のつく運用に回すことは、資産を守りながら育てるための重要な視点になります。
そのうえで、負債と資産のバランスを冷静に見極めることも大切です。住宅ローンを抱えている場合、手元の資金で繰り上げ返済をすべきか迷う方は多いものですが、金利の仕組みを整理してみると、住宅ローンの金利よりも運用利回りが高いのであれば、無理に繰り上げ返済するよりも運用に回した方が効率的なケースもあります。手元の資金をすべて返済に充てるのではなく、ローン金利と運用利回りの差を考慮して運用に回すという選択肢を持つことは、効率的な資産形成において若い頃以上に大切になります。
また、資産を育てるためには、既存の貯蓄の役割を定期的に見直す習慣が欠かせません。財形貯蓄の金利が低いのであれば、投資に回すか住宅ローンの繰り上げ返済に使う方が良いというケースも見られます。長年続けてきた積立であっても、放置せずに見直すことが重要です。その時々の金利環境や自身のライフステージに合わせて、資金の置き場所を柔軟に変更していく姿勢が、将来のゆとりにつながっていきます。
資産運用は特別な人だけのものではなく、日々の資金管理の延長線上にあります。預金が一番安全だと決めつける前に、現在の貯蓄の金利、抱えているローンの状況、そしてインフレの影響を一つずつ整理してみることが、着実な資産形成の出発点になります。
7. 監修者コメント:貯蓄と負債は「セットで」見直すのが資産形成の近道
銀行の窓口では、財形貯蓄や積立定期を長年続けてこられた方ほど、「これを崩すのはもったいない」という気持ちが先に立ち、見直しに踏み切れないケースを数多く見てきました。ですが、金利がほとんどつかない預貯金に置いたままでは、物価上昇の局面ではお金の実質的な価値が目減りしてしまいます。まずは今の貯蓄がどれくらいの金利で置かれているのかを確認することが、見直しの第一歩です。
住宅ローンの繰り上げ返済と資産運用のどちらを優先すべきかも、非常によく相談を受けるテーマです。ローンの金利と、運用で見込める利回りを単純に比較するだけでなく、繰り上げ返済には「精神的な安心感」という数字に表れないメリットもあります。効率だけで判断せず、ご自身やご家族がどちらの状態でより安心して過ごせるかという視点も大切にしていただきたいです。
今回のケースのように、過去に投資で元本割れを経験した方が運用に慎重になるのは自然な反応です。だからこそ、いきなり大きな金額を動かすのではなく、生活防衛資金を確保したうえで、無理のない範囲から少しずつ始めることをおすすめします。貯蓄と負債の両方を一度に見直すことで、家計全体のお金の流れがより効率的になっていくはずです。
8. 住宅ローンの繰り上げ返済と運用、どちらが得か試算してみる
たとえば、住宅ローンの残高500万円・金利1.0%・残り返済期間15年という条件で、そのまま返済を続けた場合の利息総額は、単純計算でおよそ40万円になります。この500万円を今繰り上げ返済に回すと、この利息負担をまるごと圧縮できる計算です。
一方で、同じ500万円を新NISAで年5%の利回りを想定して15年間運用できたと仮定すると、元本500万円に対して資産評価額は約1039万円(運用益約539万円)になる計算です。新NISAを活用すれば、この運用益には本来かかる約20.315%の税金がかからず、非課税の恩恵をそのまま受け取れます。
単純な期待値だけで比較すると運用に軍配が上がりますが、住宅ローンの金利は「確定した支出」であるのに対し、運用の利回りは「保証されないリターン」である点が大きく異なります。今回のケースのように過去に元本割れを経験した方であれば、繰り上げ返済で得られる「確実な安心感」を優先する選択も十分に合理的です。ご自身がどちらの安心を優先したいか、という軸で考えてみることをおすすめします。
参考資料
- 株式会社野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- LIMO「【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解」
- LIMO「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくらか?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認」
菅原 美優
