3. 終活とエンディングノート、60歳代・70歳代の準備は進んでいるのか

長寿化と認知症リスクを背景に関心を集めているのが「終活」です。NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)の「第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)」によると、「終活」という言葉の認知度は96.9%に達しています。

【グラフ】終活に対するイメージ(全体・男女別・年代別)3/3

【全体・男女別・年代別】終活に対するイメージのグラフ

出所:NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)

ところが「エンディングノート」については、名前は知られていても実際の記入までは進んでいません。年齢が上がるほど「まだ早い」という心理や体力面の事情が働き、筆が止まりやすい傾向があります。

3.1 エンディングノートの認知度・所有率・実行率

  • 認知度:60歳代以上で9割を超える。
  • 所有率:70歳代以上が24.2%と最も高いが、50歳代以下は1桁台。
  • 実行率(持っている人のうち):20歳代が9割以上書いているのに対し、70歳代以上は約5割にとどまる。

年齢が上がるにつれて筆が進みにくくなる背景には、書くべき項目が多岐にわたること、「まだ早い」という心理的な先送り、健康上の理由などが考えられます。資産や医療・介護の希望をきちんと反映させるには、気力と体力が充実しているうちに着手しておくことが大切です。

3.2 《試算》70歳代以上で、実際にエンディングノートを書けている人はどれくらい?

上記の所有率と実行率を組み合わせると、実際に記入まで進んでいる人の割合が見えてきます。

  • 70歳代以上の所有率:24.2%
  • そのうち記入している人:約5割
  • 実際に書けている人:24.2%×約50%=約12%(およそ8人に1人)

所有率が最も高い70歳代以上でも、記入まで到達しているのは8人に1人程度という計算になります。「持っているだけ」で止まってしまうケースが多いということです。

一度にすべてを書き上げようとせず、預貯金や保険の一覧など、書ける項目から埋めていく進め方が現実的でしょう。あくまで調査結果をもとにした概算であり、実際の割合とは異なる場合があります。

【調査概要】NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)

  • 調査目的 :高齢社会における終活意識の実態を明らかにし、個人が豊かで安心した人生後半期を送るための支援策や啓発活動に役立てる
  • 調査対象 :20~89歳の男女
  • 調査地域 :全国
  • 調査方法 :インターネットリサーチ
  • 調査時期 :2024年12月4日(水)~12月6日(金)
  • 回答者数 :2,052名
  • 割付方法 :人口構成比割付(令和2年国勢調査の性年代別人口比率に基づく)
  • 調査委託先 :株式会社マクロミル
横野 会由子

保険の営業に携わっていた頃も、ご契約内容をご家族が把握していないケースは珍しくありませんでした。ご本人が元気なうちは問題になりませんが、判断力が低下してから整理を始めるのは簡単ではありません。

エンディングノートは、完璧に書き上げることを目標にすると手が止まってしまいます。まずは預貯金の口座、加入している保険、年金の受取口座といった「お金の置き場所」だけでも一覧にしておく。それだけでもご家族の負担は大きく変わります。

気力と体力があるうちに少しずつ進めておくこと。それが、長い老後を安心して過ごすための現実的な備えになると考えています。

4. まとめにかえて

本記事では、厚生年金の受給額の分布と最新の平均寿命を確認したうえで、長い老後に向き合ううえで避けて通れない認知症のリスクについて解説しました。

厚生年金のボリュームゾーンは10万円台前半で、全体平均の15万289円とはずれがあります。また平均寿命は男性81.35年・女性87.33年まで延び、65歳以上の約4人に1人が認知機能について注意を必要とする状態にあると推計されています。

長い老後を見据えるなら、資産の額だけでなく、それを自分で動かせる状態をどう保つかという視点も欠かせません。終活やエンディングノートの準備は、気力と体力が充実しているうちに始めておきたいところです。

参考資料

横野 会由子