「住民税非課税世帯」という言葉をはじめて調べた方の多くは、まず「年収がいくらなら対象になるのか」を知りたいはずです。

ただ、ネットで見かける「単身なら年収110万円」のような数字だけを覚えても、自分の場合に当てはまるかどうかは判断できません。

基準になっているのは年収の額面ではなく、そこから一定額を引いた「所得」だからです。この記事では、手元の源泉徴収票を見ながら、年収から所得を逆算し、非課税世帯にあたるかどうかを自分で確かめる手順を、実際の項目名で示します。

ココがポイント
  • 非課税かどうかは年収そのものではなく、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に近い「所得」で判定されます。
  • 源泉徴収票の「控除対象扶養親族の数」欄だけでは、住民税の非課税判定に使う扶養人数を数え切れません。
  • 給与所得控除の速算表を使えば、自分の源泉徴収票の数字から所得を自分で逆算できます。

1. 「年収」から「非課税」までの間には、必ず所得の計算が挟まる

住民税には「均等割」と「所得割」という2つの負担があり、どちらも非課税になった状態を「住民税非課税」と呼びます。

1.1 非課税の基準は年収ではなく「合計所得金額」

総務省の資料によると、個人住民税の非課税限度額は、前年の合計所得金額を基準に、生活保護基準の級地区分に応じて自治体の条例で定められています。

ここでいう「合計所得金額」は、給与収入からそのまま出てくる数字ではありません。給与所得控除という一定額を差し引いた後の金額です。

つまり「年収110万円なら非課税」という言い方は、正確には「所得45万円以下」という基準を、給与収入に置き換えて示した目安にすぎません。この置き換えの手順を、次の章から源泉徴収票の実際の欄で確認していきます。

齊藤 慧
「年収いくらから対象か」という質問に、一言で答えられないのがこの制度のもどかしさです。ただ、手順自体は決して難しくありません。落ち着いて一段ずつ数字を追えば、誰でも自分で確かめられる範囲だと感じています。数字が並ぶと身構えてしまいますが、実際に手を動かしてみると、思ったよりシンプルな作業だと気づくはずです。

2. 源泉徴収票の3つの欄を順番にたどれば、所得は自分で逆算できる

会社員やパート・アルバイトの方であれば、年末に受け取る源泉徴収票に、今回の判定に必要な数字がそのまま載っています。

2.1 まず「支払金額」欄で年収を確認する

国税庁の手引きによると、源泉徴収票の「支払金額」欄には、その年に支払が確定した給与等の総額を記載するとされています。

これがいわゆる「年収」の額面です。ボーナスや諸手当も含みますが、通勤手当など非課税とされる手当は含まれません。

2.2 次に「給与所得控除後の金額」欄で所得に近づける

この支払金額から、国税庁の給与所得控除の速算表に沿って一定額を差し引くと「給与所得控除後の金額」になります。

令和7年分以降の速算表では、給与等の収入金額が190万円までであれば控除額は65万円、190万1円から360万円までであれば「収入金額×30%+8万円」が控除額になると定められています。

国税庁の速算表を万円単位で書き直すと、190万円までは控除額65万円、190万円超360万円以下は「収入金額×30%+8万円」という2つの区分になります。

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

この65万円という最低保障額は、令和7年分(所得税)・令和8年度分(住民税)に限った数字です。令和8年度税制改正により、令和8年分(所得税)・令和9年度分(住民税)からは最低保障額の本則が69万円に上がります。

さらに収入220万円以下の場合は令和8年分・令和9年分(所得税)、令和9年度分・令和10年度分(住民税)に限り5万円の特例が上乗せされて74万円になります(特例終了後の令和10年分・令和11年度分以後は69万円)。

この記事の以降の試算は、令和8年度分の住民税(65万円・分岐点190万円)を前提にしています。令和9年度分以降で判定する場合は、74万円・分岐点220万円に置き換えて計算し直してください。

年末調整済みの源泉徴収票であれば、この計算はすでに済んでおり、「給与所得控除後の金額」欄にその結果がそのまま印字されています。自分で計算し直す必要はありません。

一方、年の途中で退職して年末調整を受けていない源泉徴収票では、この欄が空欄のままになっていることがあります。その場合は、上記の速算表を使って自分で概算するか、確定申告を行って正式な所得を確定させる必要があります。

2.3 【源泉徴収票の欄名と非課税判定での役割】

源泉徴収票の欄名と非課税判定での役割1/2

【源泉徴収票の欄名と非課税判定での役割】

出所:国税庁「No.1410 給与所得控除」などを基にLIMO編集部作成

支払金額

  • 記載内容:給与・賞与等の年間総額(年収)
  • 役割:逆算の出発点になる数字

給与所得控除後の金額

  • 記載内容:支払金額から給与所得控除を引いた金額
  • 役割:非課税判定の基準に近い「所得」

所得控除の額の合計額

  • 記載内容:社会保険料控除・扶養控除・基礎控除等の合計
  • 役割:非課税判定には使わない(後述)

3. 【編集者の視点】

ここで一つ、実務上知っておくと役立つ点があります。国税庁のタックスアンサーには、給与等の収入金額が660万円未満の場合、上記の速算表にかかわらず、所得税法別表第五という一覧表で給与所得の金額を求める、という注記があります。

非課税世帯のボーダーラインにあたる年収(110万円台〜250万円程度)は、まさにこの660万円未満の範囲に入ります。つまり厳密には、速算表の計算式は簡易版であり、正式な金額は国税庁の別表第五という一覧表を引いて確認するのが本来の手順です。

実際には速算表の計算結果と別表第五の結果はほぼ一致しますが、1000円単位の丸め方でわずかにずれる場面があります。この記事の試算も速算表による近似値である点を、あらかじめお伝えしておきます。

防衛策としては、際どい金額に近い場合ほど、速算表による自己判断で終わらせず、居住地の市区町村の税務担当窓口で最終的な所得の金額を確認することです。窓口では「給与所得控除後の金額が確定した根拠」まで確認すると、思い違いを防げます。

4. 扶養人数は「控除対象扶養親族の数」だけでは数えきれない

非課税限度額は、本人に扶養している家族が何人いるかによって変わります。ここでの人数の数え方に、見落としやすい点があります。

4.1 16歳未満の子は、源泉徴収票では別の欄に分けられている

源泉徴収票には「控除対象扶養親族の数」という欄がありますが、国税庁の手引きによると、16歳未満の扶養親族は所得税の扶養控除の対象にならず、別に設けられた「16歳未満の扶養親族の数」欄に記載されます。

扶養親族のうち、16歳未満の扶養親族については、扶養控除の適用はありません。

出典:国税庁「『16歳未満の扶養親族の数』欄」

つまり、源泉徴収票の「控除対象扶養親族の数」欄の人数だけを見て「扶養家族は何人」と数えると、16歳未満の子どもが数から漏れてしまいます。

ところが住民税の非課税限度額を判定する際の扶養人数には、16歳未満の子どもも含めて数えます。自治体の説明でも、非課税限度額の算定式は本人・配偶者・扶養親族の人数を合計して使うとされており、年齢による区別はありません。

配偶者についても、似た注意が必要です。源泉徴収票には「控除対象配偶者の有無」という欄がありますが、これは配偶者の所得が一定額以下であることが前提の欄です。

配偶者に一定の所得があり「控除対象配偶者」に当たらない場合でも、住民税の非課税限度額の算定では、生活を共にしている配偶者の所得の状況によって、人数の数え方が変わる場面があります。夫婦それぞれに所得がある世帯では、源泉徴収票の欄だけで判断せず、市区町村の税務担当窓口で扶養人数の数え方を確認したほうが確実です。

齊藤 慧
同じ「扶養」という言葉なのに、税金の種類によって数え方まで変わってしまう。最初にこの事実を知ったときは、正直なところ驚きました。この作り込みの細かさこそ、制度が複雑だと感じられる理由の一つなのだと思います。焦って結論を出す前に、一つずつ紐解いていけば、案外筋道は通っているものです。

4.2 【本人・配偶者・子ども3人(17歳・10歳・5歳)の場合の人数の数え方】

本人・配偶者・子ども3人(17歳・10歳・5歳)の場合の人数の数え方2/2

【本人・配偶者・子ども3人(17歳・10歳・5歳)の場合の人数の数え方】

出所:総務省「地方税制度 個人住民税」などを基にLIMO編集部作成

源泉徴収票「控除対象扶養親族の数」欄

  • 人数:1人(17歳の子のみ)
  • 16歳未満の子:含まない

住民税の非課税限度額判定の扶養人数

  • 人数:3人(子ども3人全員)
  • 16歳未満の子:含む

5. 実際の年収で、判定の手順を一通りたどってみる

ここまでの手順を、具体的な年収の例で確認します。前提は、夫婦と子ども1人(16歳未満)の3人世帯で、1級地の自治体に住んでいる会社員というケースです。

5.1 年収280万円のケースで逆算する

まず「支払金額」欄の年収は280万円です。速算表に当てはめると、給与所得控除額は「280万円×30%+8万円=92万円」になります。

「給与所得控除後の金額」は、280万円から92万円を引いた188万円です。この188万円が、非課税限度額と比べる所得にあたります。

この世帯(本人・配偶者・子1人=3人)の1級地における所得割の非課税限度額は、基本額35万円×3人+加算額21万円+10万円=136万円です。

188万円は136万円を上回るため、このケースは住民税が課税される所得ということになります。年収の目安だけを見て「300万円未満なら大丈夫」と判断すると、実際の結果とズレることが分かります。

逆に、同じ世帯構成で年収が190万円だった場合を確認してみます。給与所得控除額は190万円までの区分にあたるため65万円、給与所得控除後の金額は190万円-65万円=125万円です。

125万円は非課税限度額の136万円を下回るため、このケースは非課税に当たります。

5.2 【夫婦と子ども1人(16歳未満)の3人世帯・級地区分別】

1級地

  • 所得割非課税限度額:136万円
  • 非課税となる年収の目安:約205万7143円以下

2級地

  • 所得割非課税限度額:約123万4000円
  • 非課税となる年収の目安:188万4000円以下

3級地

  • 所得割非課税限度額:約110万8000円
  • 非課税となる年収の目安:175万8000円以下
齊藤 慧
数字を追い切ると、住んでいる場所だけで結果が変わる場面にたどり着きます。同じ年収なのに判定が分かれるのは不思議に思えますが、それぞれの地域の生活費の物差しが反映された結果なのだと理解しています。一つの表に自分の家族構成と地域を当てはめてみるだけで、ぼんやりとした不安が具体的な数字に変わっていくはずです。

※本記事は、編集部が国税庁・総務省・横須賀市・香芝市が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

6. 【編集者の視点】

この試算で気をつけたい実務の罠は、「所得控除の額の合計額」欄を使ってしまうミスです。この欄には社会保険料控除や生命保険料控除、基礎控除などの合計額が記載されています。

これは所得税の課税所得を求めるための欄であり、住民税の非課税限度額と比べるべき「合計所得金額」ではありません。うっかりこの欄の金額まで引いてしまうと、実際より低い所得が出てしまい、本来は課税対象なのに「非課税のはず」と誤解する結果になりかねません。

比べるべきなのは、あくまで「給与所得控除後の金額」(給与収入以外の所得がなければ、これがほぼ合計所得金額にあたります)です。社会保険料控除や扶養控除を差し引くのは、この後の所得税・住民税額そのものを計算する場面での話であり、非課税かどうかの判定とは別の工程になります。

年の途中で転職・退職があった場合や、副業などで給与以外の所得がある場合は、この逆算だけでは正確な判定ができません。確定申告の内容を含めて確認する必要があるため、判断に迷う場合は税務署や市区町村の税務担当窓口に相談することをおすすめします。

7. まとめ

  • 住民税非課税世帯にあたるかどうかは、年収の額面ではなく、給与所得控除を経た後の「所得」で判定されます。
  • 源泉徴収票の「支払金額」→「給与所得控除後の金額」の順にたどれば、この所得を自分で確認できます。
  • 「控除対象扶養親族の数」欄には16歳未満の子は含まれませんが、住民税の非課税判定では16歳未満の子も人数に含めます。
  • 「所得控除の額の合計額」欄は非課税判定には使わない、別の目的の欄です。

年収の一覧表だけを眺めていても、自分の家庭がどちらに当たるのかは最終的には分かりません。手元の源泉徴収票を開いて、実際の欄を一つずつ確認する作業が、遠回りのようで実は一番確実な近道です。

逆算した結果が非課税の基準に近い場合や、扶養人数の数え方に迷いが出た場合は、目安の数字だけで結論を出さず、居住地の市区町村の税務担当窓口に確認してみてください。

8. よくある質問

8.1 Q. 源泉徴収票がない場合、どうすれば所得を確認できますか。

A. 個人事業主や年金受給者など源泉徴収票がない、または別形式の場合は、確定申告書の「所得金額」の欄や、年金の場合は公的年金等の支払通知書などで、給与所得控除に相当する控除後の金額を確認する必要があります。正確な金額は市区町村の税務担当窓口で確認できます。

8.2 Q. 「給与所得控除後の金額」欄が空欄になっている源泉徴収票があるのはなぜですか。

A. 年末調整を行っていない場合(年の途中で退職した場合など)は、この欄が記載されないことがあります。その場合は確定申告を行うことで、正式な所得の金額が確定します。

8.3 Q. パートで複数の勤務先から給与をもらっている場合、年収はどう数えますか。

A. 複数の勤務先からの源泉徴収票がある場合は、それぞれの「支払金額」を合計した金額を年収として、給与所得控除の速算表に当てはめます。年末調整をどちらか一方の勤務先でまとめて行っている場合は、その源泉徴収票に合計額が反映されていることもあります。

8.4 Q. 逆算した所得が非課税限度額とほぼ同じだった場合、どうすればよいですか。

A. この記事の試算は給与所得控除の速算表による近似値です。限度額に近い金額の場合は、居住地の市区町村の税務担当窓口で、正式な合計所得金額と非課税限度額を確認することをおすすめします。

参考資料

LIMO編集部家計解説班