お盆の帰省でスーパーに立ち寄り、米売り場の値札に驚いたという方は少なくないのではないでしょうか。
2026年2月には、米5kgの店頭価格が4204円まで上昇しました。その後、新米の流通や政府備蓄米の放出などにより、8月上旬時点では3220円程度まで値下がりしたものの、2022年8月の約2125円と比較すると、依然として5割以上も高い水準にあります。
一方で、2026年度の年金額は4年連続で引き上げられたものの、改定率は国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%にとどまり、前年の物価上昇率3.2%には届いていません。年金は実質的に目減りしている状態です。
本記事では、年金改定の仕組みや米価高騰の実態を整理したうえで、年金世帯における食費負担(エンゲル係数)と主食支出の比率を世帯類型別に試算し、家計防衛の具体策を解説します。
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米5kgは2026年2月に4204円、8月時点でも3220円と、2022年比で5割以上高い水準が続く
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2026年度の年金改定率は1.9〜2.0%にとどまり、前年の物価上昇率3.2%に届かず実質目減り
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高齢夫婦無職世帯では、お米代が手取り収入に占める比率が最大5.7%に達したとの試算結果もある
1. 年金1.9〜2.0%増でも物価3.2%に届かず、実質目減りが続く理由
2026年度(令和8年度)の年金改定では、国民年金(老齢基礎年金・満額)が月額7万608円(新規裁定者。既裁定者は7万408円)、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な世帯)が月額23万7279円となりました。改定率は国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%です。
額面は4年連続のプラス改定ですが、物価上昇に追いついていないのが実情です。本来、年金は物価や賃金の変動に合わせて改定されますが、2026年度は物価上昇率(3.2%)が名目手取り賃金変動率(2.1%)を上回ったため、現役世代の負担能力を考慮し、低い方の「賃金(2.1%)」を基準にするルールが適用されました。
さらに、年金財政を維持するための「マクロ経済スライド」という給付抑制の仕組みが発動され、国民年金で▲0.2%、厚生年金(報酬比例部分)で▲0.1%のスライド調整が差し引かれています。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(新規裁定者、改定率+1.9%)
- 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な世帯):月額23万7279円(改定率+2.0%)
- 2025年(令和7年)の物価上昇率:3.2%
- 名目手取り賃金変動率:2.1%(年金改定率の基準として採用)
- マクロ経済スライド調整率:国民年金▲0.2%、厚生年金(報酬比例部分)▲0.1%
結果として、3.2%の物価高に対し年金の伸びは1.9〜2.0%にとどまり、実質的な購買力は低下を余儀なくされています。
2. 米5kgは3000円台後半で高止まり、購入量そのものを減らす家庭も
年金の実質的な目減りが続くなか、生活を直撃しているのが主食である「米」の価格です。総務省の小売物価統計調査などに基づく、米5kgの小売店頭価格の推移は次の通りです。
- 2022年8月:5kgあたり約2125円
- 2025年12月:5kgあたり4337円(民間調査による過去最高値)
- 2026年2月:5kgあたり4204円
- 2026年8月(上旬):5kgあたり3220円(2月比で約23%安、前年同期比13.8%安)
ピーク時からは下落したものの、2022年比では依然として5割以上高い水準です。店頭価格がやや落ち着きを見せた背景には、政府備蓄米の市場放出や2026年産の新米流通の本格化がありますが、卸売価格そのものは高水準で推移しており、生産・流通コストの上昇から、かつての「5kgあたり2000円前後」といった水準に一気に戻ることは難しいのが現状です。
この影響は、総務省の「家計調査」にも表れています。米、パン、麺類などを含む「穀類」への月平均支出(二人以上世帯、2025年平均)は8808円となり、名目では前年比18.7%増加した一方、物価の影響を除いた実質ベースでは前年比2.6%の減少となりました。価格高騰を受けて、購入量そのものを減らして対応している家庭が多い実態がうかがえます。
3. 【世帯別シミュレーション】年金家計における「お米代」の負担
主食や食料品の価格上昇は、収入が相対的に少ない年金世帯の家計を直撃します。消費支出に占める食料費の割合を示す「エンゲル係数」は、2025年(暦年)の二人以上世帯平均で28.6%に達しました。
年間収入別に見ると、全体平均が28.8%であるのに対し、年間収入280万円未満の世帯では34.4%まで上昇します。年金だけで生活する高齢無職世帯の多くは、この「年間収入280万円未満」の層に該当、あるいはそれを下回るケースが少なくありません。
- 二人以上世帯の全体平均エンゲル係数:28.8%
- 年間収入280万円未満の世帯のエンゲル係数:34.4%
ここで、総務省の家計調査データをもとに、高齢無職世帯の平均的な収支状況と、お米代の変動が家計手取りに与える影響を試算してみます。
※本シミュレーションは総務省「家計調査」の高齢者無職世帯の平均値をモデルケースとした試算であり、実際の受給額や生活費の構成、お米の消費量は世帯や個人の状況により異なります。
3.1 高齢夫婦無職世帯(夫婦とも65歳以上)の場合
実収入25万4395円、可処分所得(手取り収入)22万1544円、消費支出26万3979円で、毎月の家計収支は約4万2434円の赤字(貯蓄の取り崩し等で補填)。食料費は7万8964円で、消費支出に占める割合は29.9%です。
この世帯が月に5kgの米を3袋(計15kg)消費すると仮定した場合、手取り収入(約22.1万円)に占めるお米代の比率は次のように変動します。
- 米5kgが2125円(2022年)の場合:3袋で6375円、手取りに対する比率は約2.9%
- 米5kgが4204円(2026年ピーク時)の場合:3袋で1万2612円、手取りに対する比率は約5.7%
- 米5kgが3220円(2026年8月現在)の場合:3袋で9660円、手取りに対する比率は約4.4%
毎月貯蓄を取り崩して生活する高齢世帯にとって、お米代が手取りの5%近くを占める状態は、削ることのできない経費として大きな負担となります。
3.2 70歳以上高齢無職二人世帯(平均世帯主年齢78.4歳)の場合
家計調査(2025年暦年実績)によると、実収入26万2317円、可処分所得22万8697円、消費支出25万8626円で、毎月の家計収支は約2万9930円の不足。
65歳以上全体平均と比べ、外出や衣服、教養娯楽などの支出は抑制される一方、食料費は8万1645円とむしろ高額になっており、エンゲル係数は31.6%まで上昇しています。
この世帯における主食(穀類)への支出は月平均8326円で、その内訳は次の通りです。
- 米(お米):3507円(穀類支出の42.1%)
- パン:2655円
- 麺類:1625円
月平均のお米支出(3507円)は、現在のお米価格(5kgあたり3220円)に当てはめると、およそ月5.4kgの購入量に相当します。
仮に同じ5.4kgを、米5kgが2125円(2022年平均)から3220円(現在)、さらにピーク時の4204円へと価格が変動する中で消費し続けたとすると、手取り収入(22.8万円)に占めるお米代の比率は約1.0%から約1.5%、さらに約2.0%近くへと上昇します。
3.3 高齢無職単身世帯(おひとりさま)の場合
実収入13万1456円、可処分所得11万8465円、消費支出14万8445円で、毎月の家計収支は約2万9980円の赤字。食料費は4万2545円で、エンゲル係数は28.7%です。
この世帯が月に5kgの米を1袋消費すると仮定した場合、手取り収入(約11.8万円)に対するお米代の比率は次のように推移します。
- 米5kgが2125円(2022年)の場合:手取りに対する比率は約1.8%
- 米5kgが4204円(2026年ピーク時)の場合:手取りに対する比率は約3.5%
- 米5kgが3220円(2026年8月現在)の場合:手取りに対する比率は約2.7%
単身世帯はお米の絶対的な消費量は少ないものの、収入総額自体が限られているため、米価の変動が家計手取りに与えるインパクトは小さくないでしょう。
4. 筆者からのコメント
店頭価格だけを見ると米価は落ち着いてきたように映りますが、農林水産省が定点観測している卸売段階の相対取引価格は、依然として高水準で推移しているとされています。
肥料・燃料費や輸送コストといった生産・流通側のコスト構造そのものが変わらない限り、店頭価格が数年前の水準まで一気に戻ることは考えにくいというのが実情です。
家計側でできる工夫としては、5kg単位の総額だけでなく「100gあたり単価」で銘柄や販売店を比較する、無洗米や古米・古古米を上手に組み合わせて単価を下げる、といった地道な方法が有効です。
また、家計調査の「実質ベースの購入量減少」が示すように、量を減らして帳尻を合わせている家庭が多いのも事実です。栄養バランスを崩してまで主食を削るのではなく、まずは自分の家計における主食支出の比率を把握することから始めることをおすすめします。
