5. 「支給停止調整額65万円」への緩和、働くシニアの家計防衛策に

物価高への防衛策として、「就労による収入確保」を選択するシニア層が増えています。さらに2026年4月からは、働く高齢者にとって追い風となる制度緩和が始まりました。

働きながら受け取る厚生年金がカットされる基準を示す「在職老齢年金制度」の支給停止調整額が、月額51万円(2025年度)から月額65万円(2026年度)へと大幅に引き上げられたのです。

2026年4月~在職老齢年金の支給停止調整額が大幅緩和→65万円へ3/4

在職老齢年金の支給停止調整額

出所:厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」

これは、令和7年の年金制度改正によって基本の基準額が「50万円」から「62万円」へと底上げされ、さらに名目賃金の変動(+2.1%)に応じた毎年の改定が適用された結果です。

2026年4月以降は、「総報酬月額相当額(給料+賞与の1/12)+基本月額(厚生年金)」の合計が月額65万円以下であれば、年金が1円もカットされることなく全額支給されます。「働くと年金が減るから勤務時間を抑える」といった就労調整を考える必要性がほぼなくなり、シニア層が意欲と能力を活かして安定した収入を得やすい環境が整いました。

6. 申請漏れに注意、3.2%増額された「年金生活者支援給付金」

低所得世帯や住民税非課税世帯の支えとなるのが「年金生活者支援給付金」です。マクロ経済スライドによる改定率の抑制(▲0.1〜0.2%)を受ける年金本体とは異なり、この給付金は物価の変動がそのまま反映される「物価スライド改定」の仕組みをとっています。そのため2026年度は、2025年の物価上昇率(3.2%)を反映した増額改定となりました。

6.1 2026年度の給付金額(月額の基準額)

2026年度の年金生活者支援給付金額(月額の基準額)4/4

2026年度の年金生活者支援給付金額

出所:日本年金機構「令和8年度の年金額および年金生活者支援給付金支給金額の改定について」をもとにLIMO編集部作成

  • 老齢年金生活者支援給付金:5620円(前年度から+170円)
  • 障害年金生活者支援給付金(1級):7025円(前年度から+212円)
  • 障害年金生活者支援給付金(2級):5620円(前年度から+170円)
  • 遺族年金生活者支援給付金:5620円(前年度から+170円)

※基準額であり、実際の支給額は国民年金保険料の納付済期間や免除期間等に応じて個別に算出されます。

すでに給付金を受け取っている方は、更新の手続きは不要です。偶数月の支給日に、自動的に増額後の金額が振り込まれます。

一方、世帯の所得状況の変動などにより今年度から新たに受給対象となる可能性がある方には、例年9月頃から日本年金機構より請求書が順次発送されます。この給付金は原則として本人の請求申請がなければ受給できない仕組みのため、案内が届いた場合は速やかに返送・申請を行いましょう。

7. まとめにかえて|まずは家計の「主食比率」を定点観測することから

政府は、2026年産米の作柄や民間在庫の状況、お米の買い戻し計画(在庫を秋以降に53万トンに回復させる予定)を定点観測するとしていますが、流通する民間米価格が数年前の「5kgあたり2000円前後」まで急激に戻ることは想定しにくい状況です。

家庭でできる家計防衛策の一つが、農林水産省も推奨する「ローリングストック」です。買いだめや買い控えといった突発的な行動をとるのではなく、日頃から消費する主食やお米を少し多め(例えば1〜2週間分程度)に家庭内にストックし、古いものから消費して減った分を計画的に買い足していく方法です。過度な買いだめは市場の混乱を助長しかねないため、あくまで計画的かつ必要十分な範囲で行うことが大切です。

米価高と年金目減りという構造が続くなか、まずはご自身の家計収支や食費に占める主食支出の比率を、レシートや家計簿で定期的に確認してみることをおすすめします。そのうえで、就労による収入確保や年金生活者支援給付金といった公的な仕組みを漏れなく活用することが、これからの家計防衛の基本になります。

8. 【筆者コメント】

LIMO編集部

今回の在職老齢年金の見直しでは、支給停止調整額そのものの引き上げに注目が集まりがちですが、見落とされやすいのが「令和7年の年金制度改正に基づく経過措置」の存在です。

厚生年金の調整率(本来▲0.3%相当)が▲0.1%に抑えられているのは、調整率を3分の1に緩和する時限的な措置が適用されているためで、この経過措置は将来的に段階的に縮小・終了していく性質のものです。

つまり、現在の「目減り幅の小ささ」がそのまま続くとは限りません。年金生活者支援給付金についても、請求主義である以上、案内が届いてから手続きを後回しにすると受給開始が遅れます。

年に一度は「ねんきん定期便」や日本年金機構の窓口で、自分の年金額の改定内容と、支援給付金の対象になっていないかを確認する習慣を持つことが、地味ながら最も確実な家計防衛策だといえるでしょう。

参考資料