子どもの進学を考えるとき、避けて通れないのが学費の話です。「大学は高い」とはよく聞くものの、実際にいくらかかるのかを正確に把握している人は多くありません。
文部科学省は隔年で、私立大学の初年度納付金を調査しています。最新は令和7年度入学者を対象としたもので、2025年12月に公表されました。
この資料から、国立大学・公立大学・私立大学それぞれの学費を確認していきましょう。
- 私立大学の初年度学生納付金は総計で平均150万7647円(令和7年度・592大学)
- 内訳は授業料96万8069円、入学料24万365円、施設設備費17万2550円など
- 国立大学は標準額で入学料28万2000円、授業料53万5800円の合計81万7800円
1. 私立大学の初年度納付金は平均150万7647円
まずは私立大学から見ていきましょう。
文部科学省の調査によると、令和7年度に私立大学へ入学した学生の初年度学生納付金は、定員1人当たりの平均で次のとおりでした。
- 授業料:96万8069円
- 入学料:24万365円
- 施設設備費:17万2550円
- 実験実習料:3万290円
- その他:9万6374円
- 総計:150万7647円
注目したいのは、授業料と入学料を足しただけでは全体像がつかめないという点です。この2つの合計は120万8434円ですが、施設設備費や実験実習料などを加えた総計は150万7647円。差は約30万円あります。
「初年度は120万円ほど」と見積もっていると、実際の請求額との間に大きなずれが生じます。学費を試算するときは、授業料と入学料だけでなく、総計の数字で考える必要があります。
なお、この調査は日本私立学校振興・共済事業団のデータをもとに、令和7年度の入学定員で加重平均したものです。集計対象は592大学の昼間部です。
2. 学部系統によって金額は大きく変わる
150万7647円はあくまで全平均で、学部系統によって金額は大きく異なります。初年度学生納付金の総計を系統別に見ると、次のようになります。
- 文科系学部:130万561円
- 理科系学部:171万6714円
- 医歯系学部:621万481円
- その他学部(家政・芸術・体育・保健など):165万776円
文科系と理科系の差は約42万円。実験や実習に設備と人手がかかる分、理科系が高くなります。
突出しているのが医歯系です。医学部は初年度だけで684万1248円、歯学部は512万6150円。文科系のおよそ4倍から5倍にあたります。
同じ「私立大学」でも、進む学部によって初年度の負担は5倍以上変わる。平均値を使うときは、この幅を頭に入れておく必要があります。
3. 国立大学は81万7800円、入学料は私立より高い
一方、国立大学の標準額は次のとおりです。
- 入学料:28万2000円
- 授業料:53万5800円
合計すると81万7800円です。
興味深いのは、入学料だけを見ると国立の28万2000円のほうが、私立の平均24万365円より高いという点です。差額は4万1635円あります。
しかし授業料では、私立96万8069円に対して国立53万5800円と、43万2269円の差がつきます。授業料と入学料の合計で比べれば私立が39万634円高く、私立の総計150万7647円と比べれば68万9847円の差になります。
なお、国立大学の金額は「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」で定められた標準額です。各大学は特別の事情がある場合、標準額の120%を上限に設定できます。近年は標準額を上回る授業料を設定する大学も出てきています。
公立大学についても同じ資料に記載があり、令和7年度の授業料は平均53万6520円で国立とほぼ同水準です。入学料は地域外からの入学者が平均38万2806円、地域内が平均22万4369円と、居住地によって大きく変わります。
4. 4年間の総額で比べると
入学料は初年度だけですが、授業料は毎年かかります。4年間の総額を試算してみましょう。
- 国立:28万2000円+53万5800円×4年=242万5200円
- 私立:24万365円+96万8069円×4年=411万2641円
4年間で見ると、国立は約242万円、私立は約411万円。その差は約169万円になります。
ただしこの私立の試算は、授業料と入学料だけを積み上げた金額です。実際には初年度に施設設備費などが加わり、大学によっては2年目以降も施設設備費が毎年かかります。実際の総額はこれを上回ると考えておくのが安全です。
これに加えて、教科書代、通学費、実習費、そして自宅外通学であれば家賃や生活費が発生します。仕送りが月8万円なら4年間で384万円。学費と同等かそれ以上の負担になり得ます。
進学先を検討するときは、学費だけでなく「通学できる範囲か」も含めて考える必要があるということです。
5. 授業料は上がり、入学料は下がっている
同じ資料には、私立大学の初年度納付金の長期推移も掲載されています。平成20年度と令和7年度を比べると、次のような変化がありました。
- 授業料:84万8178円 → 96万8069円(14.1%増)
- 入学料:27万3602円 → 24万365円(12.1%減)
- 施設設備費:18万7281円 → 17万2550円(7.9%減)
- 総計:145万3075円 → 150万7647円(3.8%増)
授業料は着実に上がっている一方、入学料と施設設備費はむしろ下がっています。入学時にまとまった額を求めるのではなく、在学中の授業料で回収する構造に移ってきた、とも読めます。
前回調査(令和5年度)との比較では、授業料が0.9%増、入学料が0.2%減、施設設備費が4.4%増、総計が2.1%増でした。伸びが最も大きいのは「その他」の15.8%増です。
対照的に、国立大学の標準額は授業料53万5800円が平成17年度から、入学料28万2000円が平成14年度から据え置かれています。
6. 学費をどう準備するか
大学進学の費用は、子どもが生まれた時点から準備期間が18年あるという特徴があります。
- 毎月一定額を教育資金として積み立てる
- 児童手当を使わずに貯めておく
- 学資保険やつみたて投資を活用する
たとえば私立の平均的な4年間411万2641円を18年で準備するなら、月あたり約1万9000円。生まれてすぐに始めれば、決して不可能な金額ではありません。
一方、準備が間に合わない場合は、奨学金や教育ローンという選択肢もあります。日本学生支援機構の奨学金には給付型と貸与型があり、貸与型は卒業後に返還が必要です。
奨学金や授業料減免の制度は、世帯収入や資産の要件が定められており、内容も改正されることがあります。利用を検討する際は、進学先の大学の窓口や日本学生支援機構の公式情報で最新の要件を必ず確認してください。
7. 「実際にいくら払うか」は大学ごとに違う
ここまで見てきた金額は、いずれも平均値です。使うときの注意点を整理しておきます。
私立大学の授業料は、同じ文科系学部でも大学によって差があります。理科系、医歯系はさらに大きく変わり、系統別の平均どうしでも5倍近い開きがありました。
また、多くの大学では入学料と授業料以外に、施設設備費や諸会費が必要です。これらを含めた「初年度納入金」は、各大学の募集要項に明記されています。
平均値で全体像をつかんだうえで、志望校の実際の金額を調べる。この2段階で確認すると、現実的な資金計画が立てられます。
8. 学費以外にかかるお金も見落とせない
大学進学で必要になるのは、入学料と授業料だけではありません。
まず、受験そのものに費用がかかります。受験料は大学や入試方式によって異なり、複数校を併願すればまとまった額になります。金額は各大学の募集要項で確認できます。遠方であれば交通費と宿泊費も加わります。
入学が決まれば、教科書や参考書、パソコン、実習で使う道具や白衣などが必要です。学部によっては、これらの負担も小さくありません。
さらに、自宅外通学であれば住居費が発生します。敷金・礼金・家具家電の購入といった初期費用に加えて、毎月の家賃と生活費が続きます。
学費の平均額はあくまで出発点です。志望校が決まったら、通学方法まで含めた総額で見積もることが大切になります。
9. まとめにかえて
今回は、文部科学省の資料から大学の学費を確認しました。
- 私立大学の初年度学生納付金は総計で平均150万7647円(令和7年度)
- 内訳は授業料96万8069円、入学料24万365円、施設設備費17万2550円など
- 学部系統別では文科系130万561円、理科系171万6714円、医歯系621万481円
- 国立大学の標準額は入学料28万2000円と授業料53万5800円で、初年度合計は81万7800円
進学は家計にとって大きなイベントです。早めに数字を把握して、無理のない計画を立てておきたいところです。
10. 【執筆者コメント】払う金額は、いちばん目立つ数字の外側にもある
資料を開いて最初に手が止まったのが、授業料と入学料を足した120万8434円と、総計150万7647円の差でした。その差は約30万円です。
内訳は施設設備費が17万2550円、実験実習料が3万290円、そして「その他」が9万6374円。この「その他」が何を含むのかまでは資料から読み取れませんが、金額としては決して小さくありません。しかも前回調査からの伸びは15.8%で、授業料の0.9%を大きく上回っています。値上げは、いちばん目につく項目以外でも起きているようです。
パンフレットに大きく載るのは授業料で、実際に振り込むのは総計のほうです。表示されている数字と、口座から出ていく数字は別物だという前提で見たほうが、見積もりのずれは小さくなりそうです。
もうひとつ、地方に住んでいる立場から補足すると、進学先が自宅から通える範囲にあるかどうかは、学費以上に効いてくる要素です。本文にある仕送り月8万円・4年で384万円という金額は、住んでいる場所によっては選ぶ余地なく発生します。国立と私立の差が約169万円であることを考えると、どこの大学かと同じくらい、どこから通うかが総額を左右します。
参考資料
- 文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(2025年12月公表)
- 文部科学省「(資料1)令和7年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」
- 文部科学省「(参考1)私立大学の初年度学生納付金等の推移」/「(参考2)国公私立大学の授業料等の推移」
中沢 新