4. 勤続年数によって退職金はどの程度変わる?
中央労働委員会の令和7年調査によると、大学卒の定年退職金は、勤続35年の場合が約1941万円、満勤勤続の場合が約2135万円でした。
- 大学卒・勤続35年:約1941万円
- 大学卒・満勤勤続:約2135万円
高校卒では、勤続35年の場合が約1331万円、満勤勤続の場合は約2029万円です。
- 高校卒・勤続35年:約1331万円
- 高校卒・満勤勤続:約2029万円
ただし、満勤勤続の年数は学歴によって異なります。高校卒は入社年齢が早く、満勤勤続では大学卒より勤続年数が長くなるため、その分退職金額の差も大きくなる傾向があります。
4.1 自己都合退職では支給額が少なくなることも
退職金の算定方法は、退職理由によって異なる場合があります。
企業によっては、自己都合退職に対して、定年退職や会社都合退職より低い支給率を適用しています。特に勤続年数が短い段階では、自己都合退職の支給額が大幅に少なくなるケースもあるでしょう。
一方、退職理由による差を設けていない企業もあります。倒産、解雇、希望退職、転職、結婚や介護による退職などの扱いも、勤務先の規程によって異なります。
具体的な金額を確認する際は、退職金規程の「退職事由別支給率」や「自己都合減額」の項目を確認してください。
5. 自分の退職金、今すぐ確認できる3つの手段
ここまで、平均額や制度の変化について確認してきましたが、最終的に重要なのは「自分自身が、実際にいくら受け取れるのか」を把握することです。ここでは、今すぐ確認できる3つの手段を紹介します。
手段①就業規則・退職金規程を確認する
退職金制度を設けている企業では、就業規則や「退職金規程」に、算定方法が明記されています。多くの企業では、就業規則を社内システムや共有フォルダで従業員がいつでも閲覧できるようにしています。
手段②企業型DC・企業年金の場合は、運営管理機関のポータルサイトで確認する
企業型DCやDBといった企業年金制度を導入している企業に勤めている場合、退職金の見込額は「就業規則」だけでは分かりません。企業型DCの場合、加入者専用のWebポータルにログインすれば、現時点の運用資産額や、これまでの拠出金額の履歴を確認できます。
DBの場合も、多くの企業で年に1回程度、加入者向けに残高や見込額に関する通知が送付されます。この通知を確認する、あるいは総務・人事部門に問い合わせることで、現時点の見込額を把握できます。
手段③人事部・総務部に直接問い合わせる
就業規則や運用ポータルだけでは分かりにくい場合、人事部や総務部に直接問い合わせるのも有効な手段です。特に、勤続年数の通算ルール(転職者の場合など)や、退職金の受け取り方(一時金か年金か、あるいは選択制か)については、規程を読むだけでは判断が難しいケースもあります。
6. 老後資金を上乗せする3つの方法
退職金の制度や支給額を個人が変更するのは難しいものの、老後に向けた資産形成や就労収入は、自分で準備できる余地があります。
6.1 方法1.企業型DCのマッチング拠出を活用する
企業型DCを導入している企業の一部では、企業の掛金に加えて従業員が自ら掛金を上乗せする「マッチング拠出」を利用できます。
加入者掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、課税所得を減らしながら老後資金を積み立てられます。
6.2 方法2.iDeCoとNISAを目的に応じて使い分ける
勤務先の制度だけでは老後資金が不足すると考えられる場合、iDeCoやNISAも選択肢になります。
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象です。運用益も非課税となりますが、積み立てた資産は原則として60歳まで引き出せません。
一方、NISAには掛金の所得控除がありませんが、運用益が非課税となり、必要に応じていつでも資産を売却できます。
なお、企業型DCとiDeCoの併用可否や拠出限度額は、勤務先の企業年金制度によって異なります。
6.3 方法3.定年後の働き方を早めに確認する
老後資金を増やす方法は、金融商品への積み立てだけではありません。定年後も働いて収入を得れば、保有資産の取り崩しを抑えられます。
ただし、再雇用後は定年前より賃金が下がるケースがあります。現在の年収を前提に老後計画を立てず、再雇用後の想定収入を確認しておくことが重要です。
退職金のようなまとまった金額を前にして「何に投資すればいいか」という話から入る方が多い印象です。ですが本来は、退職金だけで老後資金が足りるのかどうかを先に確認し、不足するようであれば、企業型DCのマッチング拠出やiDeCo、NISAといった仕組みを、早い段階から積み上げておく方が選択肢は広がります。
まずは就業規則や運営管理機関のポータルで、ご自身の見込額を具体的な数字で把握するところから始めてみてください。そのうえで、企業型DCやiDeCo、NISAをどう組み合わせるか、そして定年後にどう働くかを、早めに検討していただければと思います。
7. まとめ
退職金の平均相場は、企業規模や退職理由などによって大きく変わります。
まずは、就業規則や運営管理機関のポータル、あるいは人事部への確認といった手段を使い、自分自身の見込額を具体的な数字で把握することが大切です。
さらに、退職金のもらい方自体も、確定給付型から確定拠出型(DC)へと移行が進んでおり、将来の受取額が運用成果によって変動する仕組みへと変化しています。
会社の制度だけに頼らず、企業型DCのマッチング拠出、iDeCoやNISAの活用、定年後の再雇用・再就職による収入確保など、自分自身でコントロールできる「収入アップ」の手段を、早い段階から検討しておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」
- 厚生労働省「平成20年就労条件総合調査」
- 中央労働委員会「令和7年賃金事情等総合調査」
- 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
- 厚生労働省「2025年の制度改正」
- 国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
- 国民年金基金連合会「iDeCoガイド(iDeCo公式サイト)」
- 金融庁「NISAを知る(NISA特設ウェブサイト)」
- 公務員で退職金「2000万円以上」もらう人、日本での
加藤 聖人
