4. 供養やお墓の話、実は親子で「話し合えていない」現実

供養やお墓について、世間の人はいつ頃から考え始め、また家族とどの程度話し合いを進めているのでしょうか。

株式会社NEXERと遺骨供養ウーナが共同で全国の男女500名を対象に実施した「供養方法に関するアンケート」(2026年7月7日公表)によると、「自身の供養方法について意識し始める年齢」は「60歳代」が32.0%で最も多い結果となりました。次いで「70歳代以上」が25.4%、「50歳代」が20.8%で、約8割の人が50歳代以降に自分自身の供養やお墓について考え始めていることが分かります。

一方で、親世代に「供養方法の希望」を聞いておきたいか、また実際に話し合っているかという質問では、「ぜひ聞いておきたいし、すでに話し合っている」と回答した人はわずか14.6%にとどまりました。最も多かった回答は「あえて聞く必要はないと思う」(34.8%)で、続いて「聞いておくべきだとは思うが、なかなか言い出しにくい」(28.0%)、「聞いておくべきかどうか、正直わからない」(22.6%)となっています。必要性を感じている人は多いものの、実際には親と具体的な話し合いができていない家庭が少なくないようです。

4.1 60歳代の過半数が「墓じまい」に関心あり

親との話し合いが進みにくい一方で、自分自身の供養のあり方として関心が高まっているのが「墓じまい」です。親の相続や実家の整理を経験する世代だからこそ、「自分の子どもには同じ負担を背負わせたくない」と考える人が増えています。

40歳代〜70歳以上「墓じまいへの意識」5/6

40歳代〜70歳以上「墓じまいへの意識」

出所:全国石製品協同組合「『墓じまい』に関するアンケート調査を実施」

  • 墓じまいを「経験した」「検討している」「将来的に検討する可能性がある」:42.8%
  • 50歳代:35.8%
  • 60歳代:53.2%

全国石製品協同組合が40歳代から70歳代以上を対象に実施した「『墓じまい』に関するアンケート調査」によると、60歳代では半数を超える人が墓じまいに関心を持っていることが分かります。検討理由として最も多かったのは「今あるお墓の管理やお参りが大変」(21.0%)で、遠方への引っ越しや後継者不足などが背景にあるとみられます。

一方で、相談するタイミングについては「誰にも相談しないのでわからない」(37.0%)が最多で、「自分が終活を始めた時」(21.2%)、「家族が亡くなった時」(13.4%)と続きます。自分自身のセカンドライフを考える中で、終活の一環として墓じまいを検討する人が一定数いる一方、相談先が定まらないまま関心だけが先行しているケースも少なくないようです。

5. 相続トラブルは「一般家庭」にこそ起きている

供養やお墓の整理と並んで向き合うことになるのが、「親の相続」という問題です。「財産がそれほど多くないから、我が家は相続でもめることはないだろう」と考える人もいるかもしれません。しかし、実際には相続トラブルは一部の富裕層だけに起こる問題ではありません。

令和4年 第二審判事件の新受事件数の事件別の構成比6/6

令和4年 第二審判事件の新受事件数の事件別の構成比

出所:最高裁判所事務総局「令和4年 司法統計年報概要版(家事編)」

最高裁判所「令和6年 司法統計年報(家事編)」によると、家庭裁判所で成立した遺産分割事件のうち、遺産総額5000万円以下のケースは全体のおよそ78%を占めています。また、令和4年の統計では、家庭裁判所で取り扱われる家事事件のうち、約1割が遺産分割に関する事件となっています。

つまり、高額な金融資産を持つ家庭だけではなく、「実家と多少の預貯金」といった一般的な財産構成であっても、遺産の分け方をめぐって話し合いが難航し、家族間の争いに発展する可能性があるということです。親の財産状況を十分に把握しないまま相続を迎えると、遺産分割協議が長引き、残された子ども自身が精神的にも経済的にも大きな負担を抱えることになりかねません。

6. まとめにかえて|家族の未来を見据えた生前整理を始めよう

50歳代・60歳代は、自分自身の老後資金を準備しながら、親の介護や相続にも向き合う「はざまの世代」といえます。

今回確認したように、老後資金を確保することに加えて、実家の財産整理や、お墓を含めた将来の負担を子ども世代へ残さないための準備も、これまで以上に重要になっています。

一方で、墓じまいや相続に向けた生前整理を進めるためには、専門家への相談費用や墓石の撤去費用など、一定のお金が必要になるケースも少なくありません。だからこそ、自分自身の家計や貯蓄状況を把握する「お金の整理」と、お墓や財産をどのように残すのか、あるいは整理していくのかを考える「終活」は、切り離して考えることのできないテーマです。

元気なうちから、この2つをあわせて計画し、家族と話し合っておくことは、自分自身の将来への安心につながるだけでなく、結果として子どもたちへ余計な負担を残さないことにもつながります。それが、より安心してセカンドライフを迎えるための大切な第一歩になるのではないでしょうか。

※個別の相続税や法的手続きについては、税理士や弁護士などの専門家へご相談ください。

7. 【筆者コメント】

熊谷 良子

相続でもめるのは資産家だけ、と考える方は多いのですが、実際に遺言書を用意している人はごく少数にとどまります。

日本財団が60〜79歳を対象に行った「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」(2023年1月5日公表、対象2000名)によると、すでに遺言書を作成している人はわずか3.5%(公正証書遺言1.5%・自筆証書遺言2.0%)で、「近いうちに作成予定」と答えた人(12.2%)を合わせても15.7%にとどまります。8割以上が、まだ具体的な準備に踏み出せていない計算です。

財産が「実家と多少の預貯金」程度の一般的な家庭ほど、遺産分割の明確な取り決めがなく、話し合いが長引きやすい側面があります。

まずは法務局の自筆証書遺言書保管制度など、費用を抑えて始められる仕組みを調べてみることも、家族への備えの第一歩になりそうです。

参考資料