3. 運営団体のスタンスが異なるWBC配信とW杯配信
加えて、「NetflixのWBC独占配信」と「DAZNのW杯全試合配信」を比較する上で、各大会の運営団体や背景も無視することはできません。
WBCはアメリカのメジャーリーグ(MLB)と選手会が出資する純粋な営利法人であり、「地上波放送がなくなっても、高いお金を出してくれるならそちらを優先する」というスタンスでした。
Netflixは前回比の約5倍(150億円規模)とも言われる放映権料を受け入れることで、テレビ局による地上波生中継を排し、「独占生配信」という異例のアドバンテージを獲得しました。
一方、FIFAはサッカーの国際統括団体であり、建前としても「サッカーを世界に普及させること」を理念に掲げる非営利団体です。
近年は商業主義が批判されることもありますが、「国の重要なスポーツイベントは、国民が無料で観られる環境になければならない」という思想(一部の国では法的な無料放送義務)が根強く、今大会でもNHKや民放キー局による地上波放送が残ることになりました。
そのため、日本国内ではテレビ局が地上波・BSでの放送権を分け合う形で確保し、DAZNが全104試合のデジタル配信権を獲得するという座組みが採用されました。
ここで特筆すべきは、デジタル配信を担うDAZNが、日本戦や決勝戦などの注目試合に関しては、有料契約なしで視聴できる「無料ライブ配信」を自ら実施している点です。
つまり、日本戦だけが目当てのライトユーザーは、地上波放送だけでなく「DAZNの無料枠」にも流れてしまうため、有料プランへの誘導が極めて難しい構造になっていました。
結果として、一部のコアなサッカーファンから高騰する放映権料の元を取る(資金を回収する)しかなく、それが今回の複雑かつ強引な年間縛りプランの提示と、その後の炎上へとつながってしまった背景が透けて見えます。
