2026年も6月下旬を迎え、本格的な夏の訪れを感じる季節になりました。日々の暮らしの中で、健康や医療に関するニュースに目を向ける機会も増えるかもしれません。

今年度は、シニア世代、特に70歳代の方々の家計に直接関わる医療制度の変更がいくつか予定されています。

「自分の保険料や病院での窓口負担はこれからどうなるのだろう」と、少し不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、厚生労働省の公表データを基に、75歳から対象となる「後期高齢者医療保険料」の値上げについて詳しく解説します。

さらに、全世代に関係するものの、特にシニア世代への影響が大きい「高額療養費制度」の見直し内容も掘り下げていきます。

通院時に適用される70歳以上の外来特例も変更点に含まれるため、制度の仕組みと今後の備えについて一緒に確認していきましょう。

1. 【2026年度】後期高齢者医療保険料「全国平均は月7989円へ」←対前年度7.8%増加

後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について1/5

後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について

出所:厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」

厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」によると、令和8・9年度における後期高齢者医療保険料(医療分)は、1人当たりの全国平均で月額7989円になる見通しです。

この金額は、令和6・7年度の平均額7411円と比較して、578円(7.8%)の引き上げとなります。

1.1 保険料が上がる背景とは?「医療費の増加」と「負担割合の引き上げ」が主な要因

今回の改定で保険料が引き上げられる背景には、医療給付費の増加があります。

それに加えて、新たに導入される「子ども・子育て支援金」制度による上乗せも要因の一つとして見込まれています。

保険料が上昇する具体的な要因として、1人当たりの医療給付費が約4.89%増えること、そして医療給付費に占める後期高齢者の負担割合が13.27%に引き上げられることが挙げられます。

一方で、政府は過去の剰余金や財政安定化基金からの交付金を活用し、保険料の急激な上昇を抑制する措置も講じています。

2. 【2026年度】現行の高額療養費制度と「70歳以上の外来特例」を解説

「高額療養費制度」とは、1カ月間の医療費の窓口負担額が定められた上限を超えた際に、超過分が後から払い戻されることで自己負担を軽減する仕組みです。

高額療養費制度「70歳以上・年収約370万円~770万円の場合(3割負担)」2/5

高額療養費制度「70歳以上・年収約370万円~770万円の場合(3割負担)」

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

実際にどの程度負担が軽くなるのか、70歳以上で年収が約370万円から770万円(3割負担)の方を例に見ていきます。

仮に、1カ月の総医療費が100万円だったとします。

  • 自己負担の上限額の計算式:8万100円 + (総医療費 - 26万7000円) × 1% = 8万7430円
    ※自己負担の上限額や計算式は、ご本人の所得区分(年収など)によって細かく分かれています。ここでは「年収約370万〜770万円(3割負担)」の方を例にしています。
  • 通常の窓口負担(3割):30万円の支払いが必要です。
  • 高額療養費制度適用後:実際の自己負担額は8万7430円に抑えられます。

差額の21万2570円は「高額療養費」として払い戻されるため、一時的に窓口で高額な支払いをしたとしても、最終的な自己負担はこの金額まで軽減されます。

2.1 70歳以上の方が対象の「外来特例」とはどのような制度か

加えて、70歳以上の方を対象に、日々の外来診療にかかる窓口負担を特別に軽減する「外来特例」という制度も設けられています。

70歳以上の一般・低所得者の自己負担限度額(現行)3/5

70歳以上の一般・低所得者の自己負担限度額(現行)

出所:厚生労働省「高額療養費制度について」

厚生労働省「高額療養費制度について」によると、現行制度では、一般的な所得層(窓口負担2割)の場合、1カ月の外来自己負担上限額は1万8000円です。

また、年間の上限額も14万4000円に設定されています。

このように月ごとと年ごとの上限が設けられていることで、持病などで定期的な通院が必要な方でも、家計への負担を抑えながら安心して治療を継続できる設計になっています。

3. 【2026年度】8月から実施「高額療養費制度の見直し」2つの重要ポイント

令和8年8月以降、医療費全体の増加などを背景に、この制度を将来にわたって持続可能なものとするため、負担能力に応じた見直しが実施される予定です。

今回の改定の大きな特徴は、一部の方で月々の負担額が増える一方で、長期化する治療の経済的負担を軽減するための新たな「年間上限(セーフティネット)」が設けられる点です。

3.1 ポイント1【新設】:高額療養費に「年間上限」が導入される

高額療養費の年間上限の新設4/5

高額療養費の年間上限の新設

出所:厚生労働省「高額療養費の年間上限の新設」

これまでの外来特例とは別に、入院費なども含めた高額療養費制度の全体に、新しい「年間自己負担上限額」が設定されます。

長期的な治療を受ける方の負担を軽減する仕組み

従来の制度は「1カ月ごと」の上限額が基本でした。

そのため、毎月の上限額には達しないものの、治療が長期にわたることで支払総額がかさみ、家計を圧迫するケースがありました。

新しい制度は、こうした長期療養者の経済的な負担を軽減することを目的に導入されます。

年間上限に達すると、その後の窓口支払いが不要に

月々の自己負担額の累計が、この新設される「年間上限額」に達した場合、その年の残りの期間においては、窓口での医療費支払いが免除されることになります。

3.2 ポイント2:「70歳以上の外来特例」における自己負担上限額の変更点

高額療養費の見直しについて5/5

高額療養費の見直しについて

出所:厚生労働省「高額療養費の見直しについて」

このように制度全体で「年間上限」という新たなセーフティネットが設けられる一方で、日々の通院を支える「70歳以上の外来特例」に関しては、所得区分に応じて上限額が次のように変更されます。

  • 窓口負担2割の一般区分の方:
    月額上限は2万2000円、年間上限は21万6000円に引き上げられます。
  • 住民税非課税の区分の方:
    月額上限は1万1000円に引き上げられます。ただし、年間負担の急増を避けるため、新たに「年間上限9万6000円」が設定されます。
  • 非課税区分で特に所得が低い方:
    負担増に配慮し、現行の月額上限8000円が維持されます。

一部の区分では上限額が引き上げられますが、長期療養が必要な方や所得が低い方への配慮を組み込むことで、将来にわたって生活を守るセーフティネットとしての機能が保たれることになります。

4. まとめ:制度変更のポイントと今後の備え

この記事では、厚生労働省の公表資料に基づき、令和8年度から変更される医療保険料や高額療養費制度の見直し内容についてご説明しました。

保険料や外来特例の上限引き上げと聞くと、負担増を心配されるかもしれません。

確かに月々の支出が増える側面はありますが、同時に「医療費全体の年間上限」という新しいセーフティネットが創設されます。

これにより、治療が長期化した場合でも、年間の自己負担額には上限が設けられるため、過度な心配は不要といえるでしょう。

また、2026年4月からは「子ども・子育て支援金」の負担も始まるため、この機会にご自身の家計状況を改めて確認してみるのもよいかもしれません。

公的な制度を正しく理解することが、将来の生活を守る上で重要になります。

まずは健康を第一に、日々の暮らしを大切にしながら、少しずつ制度変更に備えていきましょう。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

村岸 理美