「BRICS(ブリックス)」。NISA制度が始まる前から株式や投資信託で資産運用をしていた方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
新興国の高い経済成長に期待して、BRICSのどこかの国のファンドに資金を投じた方もいるかもしれません。
今回はその中から「インド」をピックアップ。日本や米国の株高が話題になる昨今、インド株はこの15年・3年でどれほど成長してきたのでしょうか。100万円で投資していたら今いくらになるのか、S&P500(米国)と日経平均(日本)と比べながらシミュレーションしていきます。
1. BRICS(ブリックス)とは?
BRICSとは、ブラジル(Brazil)・ロシア(Russia)・インド(India)・中国(China)・南アフリカ(South Africa)の頭文字を並べた言葉です。
これからの経済発展が期待される新興国の代表格として、投資の世界でも広く知られています。
もともとは2001年、米ゴールドマン・サックスが「BRICs」(ブラジル・ロシア・インド・中国の4カ国)という造語を生み出したのが始まりです。
その後、南アフリカが加わったことで、複数形を表す小文字の「s」が南アフリカを指す大文字の「S」へと変わり、「BRICS(新興5カ国)」と称されるようになりました。
2024年1月にはアラブ首長国連邦(UAE)・イラン・エジプト・エチオピアの4カ国が、2025年1月にはインドネシアが加わり、加盟国は10カ国に拡大しています。
2. インド株はどれくらい成長した?「インド・米国・日本」の主要株価指数で15年・3年を比較
インドの代表的な株価指数をもとに、米国のS&P500、日本の日経平均と成長率を比較してみましょう。
参考にした指数の現在値と起点の数値は以下の通りです。
※比較には、インドの「センセックス」、米国の「S&P500」、日本の「日経平均株価」の数値を使用しています。
- インド:15年前 1万8845 → 現在 7万7409
- 米国:15年前 1300 → 現在 7500
- 日本:15年前 9351 → 現在 7万1250
2.1 15年間の上昇率
- インド:約310.8%上昇(約4.1倍)
- 米国:約476.9%上昇(約5.8倍)
- 日本:約662.0%上昇(約7.6倍)
2.2 3年間の上昇率
- インド:3年前 6万4710 → 現在 7万7409 約19.6%上昇
- 米国:3年前 4298 → 現在 7500 約74.5%上昇
- 日本:3年前 3万2265 → 現在 7万1250 約120.8%上昇
この15年間・3年間を通じて、インド株はいずれの比較期間でも米国・日本をやや下回るリターンという結果になりました。
3. 100万円を投資していたらいくらになった?シミュレーション
上記の上昇率をもとに、100万円を投資していた場合の試算をしてみましょう。
3.1 15年前に100万円投資していたら
- SENSEX(インド):約410万円
- S&P500(米国):約577万円
- 日経平均(日本):約762万円
3.2 3年前に100万円投資していたら
- SENSEX(インド):約120万円
- S&P500(米国):約175万円
- 日経平均(日本):約221万円
15年前に100万円を投じていた場合、インド株でも約4倍の410万円と大きなリターンを得られていた計算です。
ただし、同じ期間に米国株では約577万円、日本株では約762万円になっており、「ハイリスクを取って新興国に投資した割には...」と感じる方もいるかもしれません。
3年間に絞ってみると差はさらに際立ちます。インド株の約20万円増に対し、米国株は約75万円増、日本株は約121万円増。新興国特有の伸びしろへの期待が、ここ数年は先進国株の急伸に追いつかなかった形です。
4. 「為替」はどう影響した?日本円ベースで試算し直すと…
ここまでのシミュレーションは、あくまで各国の現地通貨ベースでの計算です。しかし、私たちが新NISAなどで実際に投資する場合、手にするリターンは「為替(円安・円高)」の影響を大きく受けます。
実は、15年前(2011年ごろ)からの為替の動きを考慮して日本円ベースで試算し直すと、結果はさらに衝撃的なものになります。
4.1 S&P500(米国):歴史的な円安が「11倍超え」を後押し
15年前の為替レートは「1ドル=70円台」という歴史的な円高水準でした。
そこから現在にかけて円安が大きく進んだことで、現地通貨ベースのリターンに加えて強烈な「為替ブースト」が発生しています。
円建てで試算すると、100万円の投資は1100万円以上(11倍以上)に大化けする計算です。
4.2 SENSEX(インド):緩やかな円安効果で約5倍にとどまる
インドルピーも対円でゆるやかな円安効果はありますが、米ドルほどの爆発力はありません。
円建てで試算すると、100万円の投資は450万〜500万円(約5倍)程度にとどまる見込みです。
4.3 円建てリターンで比べると、米国株の「1強」がより鮮明に
日本人が実際に「円」で手にするリアルな運用結果で比較すると、米国株のリターンがインド株をさらに大きく引き離します。
現地通貨ベースでも上昇率に差がありましたが、為替の要素を加えることで、その差は一段と際立つ結果となります。
これは逆にいえば、今後「円高」に振れた局面では、同じ仕組みでマイナスの為替影響を受けるリスクがあるということです。為替は誰にも正確には読めません。だからこそ、通貨分散という観点からも、複数の国・地域への分散投資を検討することが大切です。
5. 新興国株はハイリスク・ハイリターン。でも「伸びしろ」が大きい?
先進国と新興国では、そもそも国の信用度(カントリーリスク)が異なります。
通貨の変動リスク、政治・法制度の不安定さ、情報開示の水準など、先進国では当たり前に整っている環境が、新興国ではまだ発展途上のケースも珍しくありません。
そのためインド株への投資は、資産運用というよりも「投資」の側面が強く、新興国株式はハイリスク・ハイリターンに分類されます。
しかし今回の比較では、この15年・3年いずれもリターンは米国・日本を下回る結果となりました。
一方で「まだこれから」という視点に立つと、話は変わってきます。
米国や日本はすでに経済が成熟しており、今後も安定した成長が期待できる反面、爆発的な拡大余地は限られています。インドは現時点では「成長の途中」であり、今後どう化けるかが注目されているのです。
6. インドに期待感がある3つの理由
ここからは、今後のインド株への期待感を支える背景を確認していきましょう。
6.1 消費
インドは中国を抜いて世界一の人口(約14億人)を誇りますが、注目すべきはその「中身」です。これから結婚し、家を買い、子供を育てていく生産年齢人口が2040年代後半まで増え続けると見込まれており、「人口ボーナス期」の真っ只中にあります。
消費する人が増え続けるということは、経済の規模が自然と大きくなることを意味します。
この内需の拡大が、インド経済の中長期的な成長エンジンとして期待されています。
6.2 製造業
これまでインドといえば「ITサービス大国」のイメージが強いものでしたが、近年は製造業での存在感が急速に高まっています。
世界の大企業が中国一国への依存リスクを意識するなかで、次の工場候補地としてインドへの注目が集まっているのです。
6.3 インフラ整備
「道路がガタガタ、頻繁に停電する、港の荷役が遅い」かつてのインドの物流・インフラに対して、こうしたイメージをもっていたかもしれません。
しかし近年は国を挙げたインフラ投資が加速しており、こうした課題は徐々に解消されつつあります。インフラの底上げは、暮らしや経済などの質も高めると期待できます。
7. まとめ
今回は株価指数ベースの比較でシミュレーションを行いましたが、実際に投資信託を通じてインド株に投資する場合、組み入れ銘柄や業種の構成によってパフォーマンスは異なります。
指数通りの結果にならないケースも当然あります。
また、為替の変動(ルピー・円レートなど)も実質的なリターンに影響するため、長期投資を検討する際はその点も念頭に置いておく必要があります。
この15年・3年の比較では、インド株のリターンは米国・日本を下回る結果でした。
ただ、人口構成の若さ、製造業の台頭、インフラ整備の加速といった構造的な成長要因は、まだその多くが「これから本番」の段階にあります。
先進国株との分散という意味でも、インド株は今後も注目し続けたい市場のひとつといえるでしょう。
【免責事項】
- 本記事は、公開されている公的資料および一般的な情報に基づき作成されたものであり、特定の制度・金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
- 掲載している数値・制度内容・シミュレーション結果は、一定の前提条件のもとでの試算または一般的な事例であり、実際の金額・支給要件・税制・運用成果等を保証するものではありません。制度内容は法改正・自治体運用・経済状況等により変更される可能性があります。
- 投資に関する記述は、将来の運用成果を示唆または保証するものではなく、元本割れを含むリスクが存在します。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
参考資料
和田 直子