厚生労働省が2026年7月31日、「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月現在)」を公表しました。

こちらによると、この3月に新しく老齢基礎年金を受け取り始めた人のうち、繰上げ受給を選んだ人の割合は8.2%でした。令和6年度末の新規裁定者の繰上げ受給率が7.2%だったため、1.0ポイントの上昇です。

いま60歳を迎えて、退職金や失業手当と一緒に「年金を早めに受け取り始めようか」と迷っている夫婦は少なくないと思います。

物価の上昇が続き、65歳まで待つ余裕がないと家計簿を見ながら悩む場面を、元公務員だった筆者も何度か目にしました。

この記事では、月次の統計で見えてきた繰上げ受給の広がりと、繰上げ請求で年金額がどの程度減るのかを、元公務員の視点から整理していきます。

1. 「年金の繰上げ受給、月0.4%減額の重み」この記事の3つのポイント

  •  令和8年3月に新規裁定を受けた人の繰上げ受給率は8.2%。令和6年度末の7.2%から上昇した
  •  繰上げ受給の減額率は「0.4%×繰上げ月数」。60歳0か月で受け取り始めると最大24%の減額になる
  •  令和8年度の老齢基礎年金の満額7万608円をベースにすると、60歳で受け取り始めた場合は5万3662円まで下がる

2. 【繰上げ受給率】令和6年度7.2%→令和8年3月8.2%へ

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業月報(令和8年3月現在)」の集計対象は、旧法老齢年金の受給権者と、老齢厚生年金(厚生年金保険第1号・旧共済組合を除く)の受給権を持たない老齢基礎年金の受給権者です。

この3月に新しく年金を受け取り始めた人は1万人、そのうち繰上げ請求をした人が800人でした。

比率で見ると8.2%となり、令和6年度末の新規裁定者の繰上げ受給率7.2%より1.0ポイント高くなっています。1年前後の期間でこの動きが出ているため、繰上げを選ぶ人がじわりと増えていることが読み取れます。

2.1 年金「早く受け取りたい」の声も

ねんきん定期便を持参して「60歳で受け取り始めたら保険料はどうなるのか」と相談される人もいます。仕事を続けるかどうかの見通しが立ちにくいまま、年金額に頼らざるを得ないと迷っているという声も聞かれました。

ただ、繰上げ請求は一度手続きをすると取り消すことができません。制度の内容を確認しないまま踏み切ることには慎重になるべきであり、個々の状況によっても異なります。

不安がある方は、年金事務所等で相談することをおすすめします。

3. 繰上げ受給の仕組み。0.4%×繰上げ月数で減額

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則65歳から受け取り始める仕組みです。ただ、本人が請求すれば60歳0か月から64歳11か月までのあいだで受け取り開始を早めることができます。これが繰上げ受給です。

3.1 昭和37年4月2日以後生まれの人は0.4%で計算

減額率は生年月日で2種類あります。日本年金機構によると、昭和37年4月2日以後に生まれた人は「0.4%×繰上げ月数」で減額されます。60歳0か月で受け取り始めた場合、繰上げ月数は60か月となるため、24.0%の減額です。

一方、昭和37年4月1日以前に生まれた人は「0.5%×繰上げ月数」で減額され、60歳0か月で受け取り始めた場合の減額率は30.0%になります。今回の記事では、これから受給を検討する世代が中心となる前者の減額率で試算します。

4. 受給開始年齢別に見る老齢基礎年金の月額

厚生労働省が令和8年1月に公表した「令和8年度の年金額改定について」によると、令和8年度の老齢基礎年金の満額は月7万608円です(昭和31年4月2日以後生まれ)。

この満額をベースに、60歳から65歳までの受給開始年齢ごとの月額を試算しました。

受給開始年齢別 老齢基礎年金の月額(令和8年度・満額ベース)1/1

受給開始年齢別 老齢基礎年金の月額 令和8年度満額ベース

出所:LIMO編集部作成

4.1 60歳受給開始で月5万3662円、65歳満額から1万6946円の減

60歳0か月で受け取り始めた場合の月額は5万3662円で、65歳から満額を受け取る場合と比べて月1万6946円少なくなります。年に換算すると20万3352円の差です。

62歳0か月で受け取り始めた場合は月6万440円、64歳0か月なら月6万7219円となります。1年繰上げるごとに老齢基礎年金の月額はおおむね3400円ほど下がる計算です。

繰上げ受給には、早く年金の受け取りを始められて生活費の目処が立ちやすくなるというメリットがあります。一方、減額は生涯続き、障害年金や遺族年金の受け取りに制約が生じるなどの注意点もあります。

太田 彩子

繰上げ請求は月0.4%の減額が生涯続きます。手続きに踏み切る前に、年金事務所等で減額後の見込額と生活費を照らし合わせておくと、後悔の少ない判断につながると思います。