総合型選抜や学校推薦型選抜が佳境を迎え、いよいよ一般選抜に向けた出願校選びが本格化する時期となりました。

理系分野(特にIT・情報科学系)を目指す受験生を持つ保護者の方にとって、学費の負担額はもちろん、検討している学科が「今、受験生からの人気を集めているのか」という動向も気になるところでしょう。

学費の総額比較だけで判断するのではなく、直近数年間における志願者数や倍率の推移まで含めて確認することで、学科のリアルな姿が見えてきます。

1. そもそも女子大御三家の理系学科とは(東京女子大・情報数理科学科/日本女子大・数物情報科学科/津田塾大・情報科学科)

日本の女子高等教育を牽引してきた「女子大御三家」と呼ばれる津田塾大学、東京女子大学、日本女子大学の3校は、いずれも早い時期から理系・情報系の専門学科を設置し、文理融合や高度な情報教育を提供してきました。

今回比較対象とするのは、3校における情報科学系の以下3学科です。

1.1 東京女子大学 現代教養学部 情報数理科学科

2024年度に、従来の数学専攻と情報理学専攻が統合されて「情報数理科学専攻」が新設されました。

その後2025年度より、数理科学科が情報数理科学科へと名称変更された沿革を持ちます。数理的思考と情報科学を高度に融合させる学びが大きな特徴です。

1.2 日本女子大学 理学部 数物情報科学科

私立女子大学で唯一の理学部内に設置されており、数学、物理学、情報科学の3領域を横断的に学べるカリキュラムを展開しています。

1.3 津田塾大学 学芸学部 情報科学科

数学科内での計算機教育など1970年代からの取り組みを経て、2000年代半ばに現在の「情報科学科」として学科化された歴史を持ち、女性IT人材や研究者を多数輩出してきた実績を重ねてきました。

これら3学科は、いずれも現代のデータ社会やIT業界で活躍できる女性人材の育成を目的とした、共通の学びの領域(情報科学系)に属しています。

2. 3学科の学費は今いくら違うのか

保護者にとって最も現実的な関心事の一つが、入学から卒業までにかかる学費の総額です。女子大学の理系学科は、文系学科と比較して実験・実習費や設備使用料が含まれるため、学費設定が高めになる傾向が見られます。

各大学が公式発表している学費案内資料(東京女子大学「2027年度 学費その他納入金」、日本女子大学「学費(受験生の皆さま)」、津田塾大学「入学金・学費」)をもとに、3学科の学費内訳と4年間の総額を整理しました。

2.1 東京女子大学「情報数理科学科」

東京女子大学の「情報数理科学科」(2027年度入学者)の学費は、年次ごとの内訳が次のようになります。

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出所:東京女子大学「2027年度 学費その他納入金」をもとにLIMO編集部作成

出所:東京女子大学「2027年度 学費その他納入金」をもとにLIMO編集部作成

  • 1年次:151万1500円(入学金20万円、授業料89万7000円、教育充実費36万8000円、実習料3万5000円、教育後援会費1万円、学会費1500円)
  • 2年次:153万3500円(授業料110万3000円、教育充実費37万4000円、実習料3万5000円、教育後援会費2万円、学会費1500円)
  • 3年次:154万5500円(授業料110万9000円、教育充実費38万円、実習料3万5000円、教育後援会費2万円、学会費1500円)
  • 4年次:155万7500円(授業料111万5000円、教育充実費38万6000円、実習料3万5000円、教育後援会費2万円、学会費1500円)

4年間の学費累計総額は、これらを合計した約614万8000円です。

2.2 日本女子大学「理学部数物情報科学科」

日本女子大学の「理学部数物情報科学科」(2027年度学部入学者)の学費は、次のようになります。

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出所:日本女子大学「2027年度学部入学者 学費等について」をもとにLIMO編集部作成

出所:日本女子大学「2027年度学部入学者 学費等について」をもとにLIMO編集部作成

  • 1年次:171万1460円(入学金20万円、授業料117万円、実験実習料1800円、施設設備費32万円、学生傷害・賠償責任保険料4660円〈4か年分を初年度に納入〉、泉会会費1万5000円)
  • 2年次:150万6800円(授業料117万円、実験実習料1800円、施設設備費32万円、泉会会費1万5000円)
  • 3年次:150万6800円(2年次と同額)
  • 4年次:155万6800円(2年次と同額の学費に、同窓会「桜楓会」費5万円を加算。物理系・情報系の学生はさらに卒業研究費2万円が加わり157万6800円)

4年間の学費累計総額は、これらを合計した約628万1860円です(卒業研究費が加わる場合は約630万1860円)。

2.3 津田塾大学「学芸学部情報科学科」

津田塾大学の「学芸学部情報科学科」(2027年度入学者)の学費は、次のようになります。

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出所:津田塾大学「入学金・学費(2027年度入学者)」をもとにLIMO編集部作成

出所:津田塾大学「入学金・学費(2027年度入学者)」をもとにLIMO編集部作成

  • 1年次:176万5010円(入学金20万円、授業料98万円、施設設備費33万1000円、学生教育研究災害傷害保険料4010円〈4年間分を初年度に納入〉、同窓会費積立金5万円〈初年度のみ〉、指定ノートパソコン代等約20万円)
  • 2年次:132万4000円(授業料99万円、施設設備費33万4000円)
  • 3年次:133万7000円(授業料100万円、施設設備費33万7000円)
  • 4年次:135万円(授業料101万円、施設設備費34万円)

4年間の学費累計総額は、これらを合計した約577万6010円です。

3校の学費を比較すると、次のようになります。

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出所:東京女子大学「2027年度 学費その他納入金」、日本女子大学「学費(受験生の皆さま)」、津田塾大学「入学金・学費」をもとにLIMO編集部作成

出所:東京女子大学「2027年度 学費その他納入金」、日本女子大学「学費(受験生の皆さま)」、津田塾大学「入学金・学費」をもとにLIMO編集部作成

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  • 東京女子大学 現代教養学部 情報数理科学科:4年間で約614万8000円
  • 日本女子大学 理学部 数物情報科学科:4年間で約628万1860円
  • 津田塾大学 学芸学部 情報科学科:4年間で約577万6010円

日本女子大学が最も高く、東京女子大学、津田塾大学の順に続く結果となりました。

最も高い日本女子大学と最も低い津田塾大学との差額は約50万円です。単年の初年度納入金だけを比較するのではなく、2年次以降の納入構造や含まれる諸経費(PC代や学会費など)まで含めて総合的に把握することが大切でしょう。

3. 志願者数はここ数年でどう動いているのか

学費の把握とあわせて、直近数年間における志願者数と倍率の推移も見過ごせません。社会全体でIT人材やデータサイエンティストの需要が高まる「リケジョ人気」が広がる一方で、実際の志願動向は年度や入試方式によって複雑な動きを見せています。

各大学が公式公表している過年度の入試結果データ(東京女子大学「過去の入試結果データ」、日本女子大学「学部 過年度入試結果」、津田塾大学「一般選抜 出願受付状況/入試結果」)から、一般選抜の主要方式(個別学力試験型・A方式等)における志願者数の時系列変化を追うと、次のような動きが浮かび上がるでしょう。

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出所:東京女子大学「過去の入試結果データ」、日本女子大学「学部 過年度入試結果」、津田塾大学「一般選抜 出願受付状況/入試結果」をもとにLIMO編集部作成

出所:東京女子大学「過去の入試結果データ」、日本女子大学「学部 過年度入試結果」、津田塾大学「一般選抜 出願受付状況/入試結果」をもとにLIMO編集部作成

東京女子大学の「情報数理科学科(旧:数理科学科情報理学専攻含む)」では、個別学力試験型の志願者数が2024年度の139人から2025年度には84人へと一時的に落ち着いたものの、2026年度には96人へと再び持ち直しました。

日本女子大学の「理学部数物情報科学科」の個別選抜型(2教科・3教科等合計)では、2024年度の203人(2教科132人・3教科71人)、2025年度の189人(2教科112人・3教科77人)から、2026年度には214人(2教科133人・3教科81人)へと堅調に推移しています。

津田塾大学の「学芸学部情報科学科」のA方式(英語外部試験利用型含む合計)では、2024年度の94人、2025年度の70人(A方式54人・英語外部試験利用型16人)から、2026年度には81人(A方式63人・英語外部試験利用型18人)へと回復傾向を示しました。

このように、どの学科においても単調な増加や減少ではなく、前年の反動による「揺り戻し現象」や入試区分の新設・改定に伴う分散が生じています。数字の背景にある要因を慎重に見極める姿勢が欠かせません。

熊谷 良子

志願者数や倍率の動向をチェックする際、単一年度の数字だけを見て『今年は不人気だから狙い目』『倍率が高いから危険』と安易に判断するのは避けるべきです。実際の入試結果は前年の反動による隔年現象や他大学との入試日程の重複、さらに近年の英語外部試験利用枠の拡大といった入試区分そのものの変更によって、年ごとに大きく振れ動く性質を持っています。学費という現実的な資金計画のベースをしっかりと押さえたうえで、最低でも過去3年間ほどの時系列データをつなぎ合わせて確認することが欠かせません。単年の数字だけに一喜一憂せず、人気や難易度の『継続的な流れ』を冷静に読み解く姿勢こそが、後悔のない志望校選びにつながっていくはずです。加えて、学科再編や入試方式の変更があった年度は、過去のデータをそのまま単純比較できない点にも留意が必要でしょう。

 

4. 志願者数の増減だけで学科の人気を判断する際に注意したい点が3つあります

大学が発表する入試結果データを読み解く際、志願者数の単純な増減だけを見て「人気が上がった・下がった」と判断すると、実態を見誤る危険性があります。特に、次の3つのポイントに注意が必要でしょう。

1つ目は、「入試方式そのものの新設・改廃による母数の変化」です。近年、各大学では英語外部検定試験の利用入試や共通テスト利用方式の多様化、大学独自入試の枠組み見直しが盛んに行われています。

たとえば特定の入試方式が新設・拡充された場合、従来の個別学力試験型から志願者が流出し、メイン方式の数字が減ったように見えても学科全体の志願者総数は維持されているケースが少なくありません。

2つ目は、「選抜区分による志願者の動きの違い」です。総合型選抜や学校推薦型選抜(指定校・公募)と、2月に行われる一般選抜とでは、志願者の層も動きの意味合いも大きく異なります。

特に募集枠が若干名である特別枠などは、数名の志願者増減で前年比の変動率が極端に大きく表示されるという盲点も見逃せません。

3つ目は、「学科の再編や名称変更に伴う連続性の確認」です。東京女子大学のように2025年4月に全学的な学科再編が行われた場合、旧専攻時代(数理科学科情報理学専攻など)のデータと現在の情報数理科学科のデータを比較する際には、募集定員やカリキュラムの継承関係を確かめておく必要があります。

組織構造が変わった年度は、受験生の出願マインドにも一時的な変化が生じやすい点は覚えておきたいところです。

5. 他の女子大学でも相次ぐ「データサイエンス系学部・学科」新設ラッシュ

女子大学における情報・理系分野の強化は、ご紹介した「御三家」だけに留まりません。近年、全国の女子大学でデータサイエンスや情報系に特化した学部・学科の新設が相次いでいます。

たとえば大妻女子大学は2025年4月に「データサイエンス学部データサイエンス学科」を開設・稼働させており、昭和女子大学でも2026年4月に本学初の本格的理工系学部となる「総合情報学部(データサイエンス学科・デジタルイノベーション学科)」を新設してスタートを切りました(出典:大妻女子大学公式発表、昭和女子大学「昭和女子大学【総合情報学部】設置が正式決定」2025年10月29日発表)。

こうした新設ラッシュのなかで、津田塾大学、東京女子大学、日本女子大学の3校は、長年にわたり基礎数学や情報科学の体系的な教育を積み重ねてきた「先行アドバンテージ」を保有しています。

新設されるデータサイエンス系学部が実務的・応用的なITスキルの修得に重点を置く傾向があるのに対し、御三家の情報系学科は理学的な基礎理論と応用技術をバランスよく学べる点が独自の強みといえるでしょう。

6. まとめにかえて|理系学科を学費と志願者数の両面から見る

女子大御三家の理系学科は、学費に数十万円単位の開きがあり、志願者数も年度や入試方式によって大きく動きます。

どちらも単年の数字だけでは語れないテーマで、複数年のデータを並べて初めて実態が見えてくるものといえるでしょう。

数字の背景にある入試制度の変更や学科再編の経緯を押さえずに総額や増減だけを追いかけると、実際の教育内容やカリキュラム、卒業後の進路実績といった本来重視すべき部分を見落としかねません。

学費と志願動向はあくまで判断材料の一つとして捉え、大学案内やオープンキャンパスでの情報収集と合わせて検討することをおすすめします。

熊谷 良子

リケジョ志望のお子様を持つ保護者の方にとって、大学選びは将来のキャリアや就職実績にも直結する、極めて重要な決断です。学費という現実的な費用の比較からスタートしつつも、最後は『その学科でどんなカリキュラムが提供され、実際の志願動向がどのように変化しているか』という質的・時系列的な視点を持つことが求められるでしょう。女子大学ならではのきめ細やかな少人数教育や、御三家伝統の強力な就職支援ネットワークなど、表面的な数字の奥にある価値もあわせて総合的に評価したいところです。今回ご紹介した学費や志願者数の情報はあくまで判断材料の一つであり、実際にオープンキャンパスや大学案内で学びの中身を確かめながら、志願者数の推移や入試方式の変化も正しく理解したうえで、親子でじっくり話し合い、最適な学びの場を選んでいただければと思います。

参考資料