配偶者に万一のことがあったとき、遺族厚生年金がいくら受け取れるのかは、多くの方にとって見当のつきにくい数字です。平均額の記事は目にしても、自分の場合に当てはめる手順までは書かれていないことが少なくありません。
遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3と決まっています。日本年金機構が2026年6月22日に更新した「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」にも、この計算のしかたが示されています。
この記事では、報酬比例部分の計算式をたどりながら、平均標準報酬額と加入期間の組み合わせで遺族厚生年金の年額がどう変わるかを確かめます。
1. 遺族厚生年金の額は報酬比例部分の4分の3で決まる
はじめに、遺族厚生年金の額がどのように決まるのかを確認します。
日本年金機構は、遺族厚生年金の年金額を「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と説明しています。
1.1 報酬比例部分は平成15年4月で計算式が分かれる
報酬比例部分は、加入期間を平成15年3月以前と平成15年4月以降に分けて計算し、その合計で求めます。
平成15年3月以前の期間は平均標準報酬月額に7.125/1000を掛け、その期間の月数を掛けます。平成15年4月以降の期間は平均標準報酬額に5.481/1000を掛け、その期間の月数を掛けます。
平均標準報酬月額は標準報酬月額だけで計算した平均額で、平均標準報酬額は標準報酬月額と標準賞与額を合わせて計算した平均額です。なお昭和21年4月1日以前に生まれた方は、給付乗率が異なります。
1.2 被保険者期間が300月に満たないときは300月とみなす
厚生年金保険の被保険者期間が300月(25年)に満たない場合には、300月とみなして計算するしくみがあります。
ただしこれは、受給要件のうち1から3に当てはまる場合に限られます。老齢厚生年金の受給資格を満たした方が亡くなったとき(受給要件4)には、この300月みなしは使えません。
2. 平均標準報酬額と加入期間で遺族厚生年金はいくらになるか
ここからは、実際の数字を当てはめていきます。
以下は、加入期間のすべてが平成15年4月以降にあり、300月みなしを使わない場合の試算です。実際の額は再評価率や従前額保障によって前後します。
2.1 加入40年(480月)なら年49万3290円から88万7922円
平均標準報酬額が35万円で480月加入していた場合、報酬比例部分は年92万808円です。その4分の3にあたる年69万606円が遺族厚生年金の額になります。
月額に直すと約5万7550円です。平均標準報酬額が10万円上がるごとに、年額はおよそ20万円動きます。
2.2 加入30年(360月)と加入20年(240月)の場合
同じ平均標準報酬額でも、加入期間が短ければ額は下がります。35万円で360月なら年51万7955円、240月なら年34万5303円です。
加入20年は300月を下回るため、受給要件1から3に当てはまる場合には300月として計算され、年43万1629円になります。どちらの要件で受け取るのかで結果が変わる点に注意が必要です。
【加入40年(480月)の遺族厚生年金・年額】
- 平均標準報酬額25万円:49万3290円
- 平均標準報酬額30万円:59万1948円
- 平均標準報酬額35万円:69万606円
- 平均標準報酬額40万円:78万9264円
- 平均標準報酬額45万円:88万7922円
【加入30年(360月)の遺族厚生年金・年額】
- 平均標準報酬額25万円:36万9968円
- 平均標準報酬額30万円:44万3961円
- 平均標準報酬額35万円:51万7955円
- 平均標準報酬額40万円:59万1948円
- 平均標準報酬額45万円:66万5942円
【加入20年(240月)の遺族厚生年金・年額】
- 平均標準報酬額25万円:24万6645円
- 平均標準報酬額30万円:29万5974円
- 平均標準報酬額35万円:34万5303円
- 平均標準報酬額40万円:39万4632円
- 平均標準報酬額45万円:44万3961円
3. 遺族厚生年金を受け取れる遺族の範囲と順位
額が分かったところで、その額を誰が受け取るのかを確認します。
遺族厚生年金は、亡くなった方に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ります。
3.1 優先順位は子のある配偶者から祖父母までの6区分
順位は上から、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母です。遺族基礎年金を受け取れる方は、あわせて受け取ることができます。
ここでいう子とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方をさします。
3.2 夫・父母・祖父母には年齢の条件が付く
父母または祖父母は、55歳以上である方に限り受け取ることができ、受給開始は60歳からとなります。
子のない夫も55歳以上である方に限られ、受給開始は60歳からです。ただし遺族基礎年金をあわせて受け取れる場合に限り、55歳から60歳の間でも遺族厚生年金を受け取れます。
4. 遺族が65歳未満か65歳以上かで上乗せが変わる
同じ遺族厚生年金でも、受け取る方の年齢によって手元に入る総額は変わります。
ここでは65歳を境にした2つの枝を確認します。
4.1 65歳未満で子がいない妻には中高齢寡婦加算がある
夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻には、40歳から65歳になるまでの間、年63万5500円が加算されます。これを中高齢寡婦加算といいます。
子がいる妻の場合は、子が18歳到達年度の末日に達するなどして遺族基礎年金を受け取れなくなったときに、この加算が付きます。
4.2 65歳以上では自分の老齢厚生年金が全額支給される
65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方を受け取る権利がある場合、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止されます。
そのため、2つの年金をそのまま足した額を受け取れるわけではありません。
遺族厚生年金の見込額を知りたいときは、まず「ねんきん定期便」で配偶者の報酬比例部分を確かめるのが近道です。数字を紙に書き出して家族で共有しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
