「今年こそ当たるだろうか」——都立霊園の抽選結果を心待ちにしていた人も多いのではないでしょうか。

令和8年度の都立霊園募集では、施設によって最高22.8倍という狭き門になったことが分かっています。

その一方で、総務省が2026年4月に公表した最新の調査では、公営墓地の「無縁墓」に本腰を入れて対応できている自治体はごくわずかにとどまることも明らかになりました。

「墓は本当に足りないのか、それとも整理が追いついていないだけなのか」——公営墓地を巡る2つの数字から、その実情を見ていきます。

1. 令和8年度の都立霊園、応募はどれくらい集まった?

東京都は令和8年5月25日、多磨・八柱・小平・八王子・青山・谷中・雑司ケ谷・染井など9つの都立霊園で、一般埋蔵・合葬埋蔵・樹林型合葬埋蔵など計6903か所(体)の使用者を募集すると発表しました。

申込期間は6月12日から7月3日までの3週間。使用料は施設の種別や面積によって150万円から2048万円まで幅があり、このほかに年間管理料が別途かかります。都立霊園は都営地下鉄の駅から近い立地の霊園も多く、承継者の負担を考えて都心の霊園を希望する人も少なくありません。

2. 施設によって倍率にはどれくらいの差があるの?

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都立霊園倍率

出所:東京都「令和8年度都立霊園公募受付状況と抽選会について」(2026年8月6日公表)をもとにLIMO編集部作成

同年8月6日に公表された公募受付状況によると、受付総数は2万9352件。施設種別ごとの倍率は、一般埋蔵施設などが2.4倍、合葬埋蔵施設が6.4倍、樹林型合葬埋蔵施設が3.1倍でした。

もっとも高かったのは小平霊園の合葬埋蔵施設(組名GA28)で、倍率は22.8倍。募集はわずか3体分でしたから、倍率から逆算するとおよそ68件の応募が集まった計算になります。

抽選会は8月14日に行われ、当選番号や補欠の状況は公益財団法人東京都公園協会が運営する「TOKYO霊園さんぽ」で公開されました。

2.1 一般埋蔵より合葬埋蔵のほうが当たりにくいのはなぜ?

承継者を必要とせず使用料も比較的抑えられる合葬・樹林型の施設は、単身世帯やお子さんに負担をかけたくない人からの需要が集中しやすく、一般埋蔵施設よりも倍率が上がりやすい傾向があります。

一方で、一般埋蔵施設の中には応募が定員に届かず、抽選なしでそのまま使用できる区画が毎年一定数あることも見逃せません。

熊谷 良子

抽選の倍率だけを見ると「都市部では墓を持てない」という印象を受けますが、倍率は霊園や施設の種類、区画の向きや面積によっても大きく異なります。

合葬・樹林型は当たりにくい一方、一般埋蔵施設の中には応募が定員に満たず抽選なしで使用できる区画も毎年一定数あります。倍率の数字だけを見て諦めてしまう前に、施設の種類や立地条件、申込資格まで含めて比較検討することをおすすめします。

市町村などが運営する公営霊園にも目を向けると、選択肢はさらに広がります。

募集は毎年おおむね同じ時期に行われるため、今回外れてしまった場合も、次回の募集要項を早めに確認しておくと動きやすくなります。

使用料の負担感だけで判断せず、年間管理料まで含めたトータルの費用感を家族と共有しておくと、後々の手続きもスムーズになるはずです。

3. 公営墓地を巡って見落としがちな点が3つある

倍率の高さばかりが話題になりがちですが、総務省行政評価局が2026年4月3日に公表した最新のフォローアップ調査を見ると、公営墓地を巡ってはむしろ逆の課題が浮かび上がります。見落としがちな点は次の3つです。

3.1 ①無縁墓の整理に着手した自治体はわずか6.1%

全国には約87万区画の墓地があり、このうち公営墓地は約3万区画。総務省の調査対象となった765市町村のうち、過去5年間に無縁墓の改葬(墓じまい)に着手した市町村はわずか6.1%(47市町村)にとどまりました。

今後の実施意向を示したのも22.1%(169市町村)にすぎず、8割近い自治体が具体的な動きをまだ示せていない計算になります。

3.2 ②縁故者情報を事前に把握している自治体はたった10.2%

実地調査を受けた88市町村のうち、承継者(縁故者)の連絡先をあらかじめ把握できている市町村は10.2%(9市町村)のみでした。

8割を超える71市町村(80.7%)は、把握できている縁故者情報が全体の2割にも満たない状態だったといいます。承継者が誰なのか分からないまま放置されている区画が、全国に相当数眠っている可能性がうかがえます。

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総務省調査に見る自治体の無縁墓対応状況のまとめ図
出所:総務省行政評価局「墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-」改善措置状況(2回目のフォローアップ、2026年4月3日公表)をもとにLIMO編集部作成

3.3 ③無縁改葬後の墓石は「差し押さえ・売却」の対象にもなり得る

見落とされがちな例外として、無縁改葬をしたあとの墓石の扱いについて、2025年12月に総務省から自治体向けの新たな方針が示されている点が挙げられます。

撤去費用を差し押さえ・公売によって徴収する方法や、民法697条に基づいて墓石そのものを売却・廃棄する方法が具体的に示され、自治体が無縁墓の整理に動きやすくなるよう後押しする内容です。

2025年3月には、縁故者情報を事前に把握しておくことの有効性を示す事務連絡もすでに出されており、令和6年度に実施された新規調査では、実際に縁故者情報を把握できている自治体・民営墓地の具体的な事例収集も進められています。

4. 無縁墓の発生率は地域でどう違う?

総務省が2023年9月に公表した元の調査では、無縁墳墓が発生している(疑いを含む)自治体の割合は全国平均で58.2%でした。ところが、人口30万人以上の都市部に限ると、この割合は大きく跳ね上がります。

人口30万人以上の市区

  • 無縁墳墓の発生率:78.9%

全国平均

  • 無縁墳墓の発生率(疑いを含む):58.2%

都立霊園のように応募が集中し高倍率になりやすいのは、まさにこうした人口の多い都市部です。

皮肉なことに、無縁墓が発生しやすいのも同じ都市部だと分かります。倍率が上がる新規募集と、進まない無縁墓の整理は、実は同じ「墓地不足・承継者不在」という一つの根っこから伸びた、別の顔をした課題だといえそうです。

少子化や単身世帯の増加が進む都市部ほど、この2つの課題は今後さらに表面化していくと考えられます。

5. まとめにかえて|実家の墓、縁故者情報を今のうちに共有しておきたい

都立霊園の応募倍率は最高22.8倍という狭き門でしたが、その裏では、公営墓地の無縁墓に本腰を入れて対応できている自治体はまだ一部にとどまっています。

制度面では2025年から2026年にかけて、縁故者情報の把握を促す事務連絡や、無縁改葬後の墓石処理に関する新たな方針が相次いで示されており、ようやく動き出したばかりの段階です。

実家のお墓の承継者が誰なのか、連絡先まで含めて家族の間で共有できているか。今のうちに確認しておくことが、遠くない将来、自分の家の墓が「無縁墓」として扱われてしまう事態を避ける、もっとも具体的な備えになります。

倍率の高さに一喜一憂するだけでなく、自分の家の墓が今どういう状態にあるのかを、あわせて確認しておきたいところです。

分からない場合は、墓地を管理する自治体や霊園の窓口に問い合わせれば、使用者情報の確認方法を教えてもらえます。

熊谷 良子

「倍率が高い=墓が足りない」という話だけを見て焦る必要はありません。今回の調査が示しているのは、むしろ制度や手続きが実情に追いついていないという課題です。

とはいえ、承継者が分からないまま放置された区画が無縁墓として扱われてしまえば、思い出の詰まったお墓を残すことはできなくなります。

難しく考えず、まずは「うちのお墓の承継者は誰か」「連絡先は共有できているか」を、帰省のタイミングなどで一度家族の話題にしてみることから始めてみてください。

エンディングノートを作るところまで一気にやろうとすると腰が重くなってしまいますが、承継者の名前と連絡先だけでもメモに残しておく、というくらいの小さな一歩からで十分です。

制度が整うのを待つよりも、家庭でできる備えのほうが、ずっと早く始められます。今回の実地調査は88市町村を対象にしたもので、全国的な実態のすべてを網羅しているわけではありません。

今後、対象を広げた調査や自治体の取り組みが進めば、実情はさらに詳しく見えてくると考えられます。

参考資料