もうすぐ8月です。後期高齢者医療制度では、毎年8月1日を境に、医療機関で支払う窓口負担割合が見直されるため注意が必要です。
政府広報オンラインによれば、この負担割合は前年の所得をもとに1割・2割・3割の3区分で判定される仕組みで、同じ方でも年によって区分が動くことがあります。
この記事では、なぜ8月という中途半端な時期に切り替わるのかや、負担割合の年収目安、一時的な所得増で「3割負担」になる意外なケース、そして医療費が高額になったときに使える高額療養費制度までを、自治体で後期高齢者医療保険制度を担当していた立場から整理していきます。
「自分が3割負担のはずない」と話しながら相談に来られる方は、本当に多くいました。年金生活でも、不動産の売却などで一時的に所得が跳ね上がると翌年の負担割合が動くことがあるのです。くわしくみていきましょう。
1. この記事でわかる後期高齢「3つのポイント」
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後期高齢者医療の窓口負担割合が毎年「8月1日」に切り替わるのは、前年の所得(住民税)が6月に確定するタイミングと連動しているため
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1割・2割・3割の判定は前年の所得がベース。年金生活でも、不動産の売却などで一時的に所得が増えた翌年に「3割負担」へ切り替わるケースがある
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医療費が高額になったときは高額療養費制度で自己負担も軽減できる
2. 【毎年8月1日】後期高齢者医療の窓口負担割合が変わる人もいます
後期高齢者医療制度の窓口負担割合は、加入している間ずっと同じ割合とは限りません。
ここではまず、切り替えのタイミングと、切り替わった負担割合を確認する書類の見方から整理していきます。
2.1 切り替えのタイミングは毎年8月1日、全国共通
後期高齢者医療制度は、75歳以上の方(および一定の障害がある65歳以上の方)が加入する公的な医療保険で、都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合が保険者となって運営しています。
この制度における医療費の窓口負担割合は、毎年8月1日から翌年7月31日までを1つの区分年度として扱う仕組みです。
2.2 マイナ保険証時代も切り替えの仕組みは変わらず
2024年12月以降、健康保険証は原則としてマイナンバーカード(マイナ保険証)に一本化されました。
マイナ保険証を利用する場合でも、後期高齢者医療の窓口負担割合が毎年8月1日に見直される仕組み自体は変わりません。
マイナ保険証を持っていない方には「資格確認書」が交付され、その書類に新しい負担割合が記載されます。
3. 【なぜ8月?】理由を元・自治体職員の目線で整理
読者からよく尋ねられるのが、「なぜ4月や1月のような区切りのよい時期ではなく、8月なのか」という疑問です。
ここでは、8月切り替えの背景と、窓口で実際に多かった質問を振り返っていきます。
3.1 住民税の課税情報が確定するのは毎年6月ごろ
負担割合の判定に使われるのは、前年1月から12月までの所得です。
この所得情報は、翌年3月の確定申告や5月ごろの給与支払報告のとりまとめを経て、住民税として6月ごろに確定します。
広域連合はその確定した所得情報を受け取り、7月中に翌年度の負担割合を判定したうえで、8月1日から新しい割合を適用しているのです。
かつて自治体の窓口で保険料の担当をしていた当時、「4月から新年度になっているのに、なぜ医療費の負担割合だけ8月にずれるのですか」という質問は本当に多く寄せられていました。
制度の側からすれば、住民税が確定する6月を待たなければ判定できないという事情があります。
一方、当事者の側からすれば「気づいたら変わっていた」と受け止められがちなタイミングで、実感と制度のあいだにズレが生まれやすい月なのです。
4. 【後期高齢者医療制度の負担割合】1割・2割・3割に該当する年収の目安
次に、実際にどの所得区分がどの負担割合に対応するのかを整理します。
4.1 1割負担の対象者(約73%)
3区分のなかで最も多いのが1割負担です。
住民税課税所得が28万円未満の方、または28万円以上でも年金収入とその他の所得の合計が2割基準を下回る方が対象になります。
4.2 2割負担の対象者(約20%)
2022年10月から新設された区分で、「一定以上の所得がある方」に適用されます。
住民税課税所得が28万円以上、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で200万円以上、2人以上世帯で合計320万円以上の場合が該当します。
4.3 3割負担の対象者(約7%)
「現役並み所得者」と呼ばれる区分で、住民税課税所得が145万円以上の方が対象です。
収入ベースでは、単身で383万円以上、2人以上世帯で合計520万円以上が目安になります。
※それぞれの割合は、2割負担が新設された時点での割合のため、参考値となります。
5. 【意外に多い】不動産の売却などで一時的に「3割負担」になるケースも
「3割負担なんて自分には関係ない」と感じた方もいるかもしれません。
ただ、窓口では「継続的な収入は多くないのに、なぜか医療費が3割負担になった」という相談を何度も受けていました。
5.1 一時的な所得も影響を受ける
年金生活に入ると、公的年金の受取額は基本的に大きく変動しないため、「所得もほぼ一定」というイメージを持ちがちです。
しかし、以下のような一時的な所得は、その年の総所得金額に上乗せされます。
- 自宅や相続した不動産を売却したときの譲渡所得
- 金融商品を売却したときの譲渡所得(特定口座・源泉徴収なしの口座など)
- 個人年金保険の一時金や満期返戻金
- 親族から受け取った一時的な報酬や給与
特に不動産の売却は金額が大きくなりやすく、たまたま所得が跳ね上がった年の翌年、窓口負担がいきなり3割に切り替わってしまうケースは少なくありませんでした。
「継続して収入が増えたわけではないのに」という戸惑いも一緒に窓口へ持ち込まれる、そんな相談です。
5.2 相談窓口は「広域連合」ではなく市区町村の役所・役場
後期高齢者医療制度の運営主体は都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合ですが、実際の窓口業務(保険料の賦課決定通知、資格確認書の交付、負担割合の相談など)は市区町村が担っています。
「負担割合が急に上がった」「判定の根拠を確認したい」という相談は、まずお住まいの市区町村の役所・役場の担当窓口(多くの自治体で「保険年金課」「後期高齢者医療係」などの名称)が入口になります。
電話や来庁の前に、判定根拠となった前年の所得の内訳(不動産売却の譲渡所得、年金収入など)を思い出しておくと、相談がスムーズに進みやすくなります。
6. 【医療費が高額になったら】高額療養費制度で自己負担を軽減
負担割合とあわせて確認しておきたいのが、高額療養費制度です。
これは、1か月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が後から払い戻される公的な仕組みです。
6.1 自己負担限度額は所得区分ごとに設定
後期高齢者医療の高額療養費制度では、外来(個人単位)と「外来+入院」(世帯単位)に分けて、所得区分ごとに毎月の自己負担限度額が定められています。
負担割合と同じく所得区分と連動しているため、8月1日の切り替えで区分が変わると、高額療養費の限度額もあわせて動く点に注意が必要です。
6.2 初回のみ手続きが必要なケースも
高額療養費制度は、多くの自治体で初回のみ申請が必要な仕組みです。
1度申請すると、次回以降は登録した口座に自動で払い戻される運用が一般的ですが、対応は自治体によって異なるため、案内が届いた際は放置せず確認しましょう。
マイナ保険証で受診すると、医療機関がオンライン資格確認システムを通じて所得区分を確認してくれるため、事前手続きをしなくても窓口の支払いを自己負担限度額までに抑えられます。
マイナ保険証を利用しない方や、オンライン資格確認に未対応の医療機関を受診する予定がある方は、事前に「限度額適用認定証」を保険者(後期高齢者医療広域連合)へ申請しておくと安心です。
高額療養費の申請と同様に見逃せないのが、高額介護合算療養費と、療養費の申請です。
前者は世帯内で1年間(8月〜翌年7月)に支払った医療と介護の自己負担を合算し、上限額を超えた分が払い戻される制度のことです。また後者は、やむを得ない事情で医療費を全額自己負担した場合などに、申請によってその一部が払い戻される制度です。どちらもたくさんの申請を受けつけていました。
該当項目がないか、ぜひ点検してみてください。
7. 後期高齢者医療の保険料改定は「負担割合の切り替え」と別のタイミング
ここまで見てきたのは「窓口負担の割合」の話でした。
混同されがちですが、実際に納める「保険料」の改定タイミングは、負担割合の8月切り替えとは別に動いています。
7.1 保険料は年度単位(4月〜翌年3月)で決まる
後期高齢者医療の保険料は、都道府県ごとの広域連合が2年ごとに保険料率を見直す仕組みで、年度単位(4月〜翌年3月)で改定されます。
保険料の内訳は、加入者一人ひとりに一律で課される「均等割額」と、前年の所得に応じてかかる「所得割額」の2つで構成されます。
7.2 一時的な所得増は保険料にも影響する
前段で触れた不動産売却などの一時的な所得増は、窓口負担割合だけでなく、翌年度の後期高齢者医療保険料の所得割額にも影響します。
ただし、後期高齢者医療保険料の所得割は「総所得金額等から基礎控除(原則43万円)を差し引いた額」を基準としているため、住民税で使う医療費控除や生命保険料控除などの所得控除の影響は受けません。
8. 【まとめ】8月1日の切り替えがあるかも?慌てずまず現状把握から
後期高齢者医療の窓口負担割合が毎年8月1日に見直されるのは、住民税の課税情報が確定する6月を待って判定するためであり、決して恣意的な時期ではありません。
負担割合は前年の所得を映しているので、不動産売却などの一時的な所得増があった翌年は、思わぬかたちで3割負担に切り替わることもあります。
「なぜ変わったのか」の根拠を知りたいときは、広域連合ではなくお住まいの市区町村の役所・役場の窓口が最初の相談先です。
負担割合の変更に加えて高額療養費制度の利用も視野に入れながら、慌てず、まず現状を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
【筆者からひとこと】
かつて自治体で国民健康保険と後期高齢者医療を担当していた立場からお伝えすると、8月1日の切り替えを機に「なぜ急に負担割合が上がったのか」と窓口を訪れる方は本当に多くいました。特に、不動産売却などで一時的に所得が増えた年の翌年は、本人が想像していない区分に切り替わることも少なくありません。判定根拠の説明や誤認の訂正は市区町村の窓口が担っています。まずはお住まいの役所・役場で相談してみてください。
参考資料
太田 彩子
