2026年7月に公表された厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の者がいる世帯は全国で2761万世帯にのぼり、そのうち約3世帯に1世帯が単独世帯という時代になりました。

老後の家計を考え始めたという方もいるのではないでしょうか。

この記事では、厚生年金月15万円と、老齢基礎年金だけを受け取る人との受給額の差を確認したうえで、高齢者世帯の世帯構造の変化や、年金以外の所得内訳もあわせて整理していきます。

太田 彩子
単独世帯や夫婦だけの世帯が増えるなかで、老後の家計を自分で組み立てる意識が、以前よりずっと大切になってきたと感じています。
私自身、自治体の窓口でシニア世代のご相談を受けていた頃、「元気なうちにもっと調べておけばよかった」とお話しされる方に何度もお会いしてきました。まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でご自身の見込額を確かめておくと、老後設計の出発点として次に何をすべきかが見えやすくなります。

1. この記事のポイント3つ

  •  厚生年金月15万円と老齢基礎年金だけでは、年間およそ100万円の受給額差がある
  •  65歳以上のいる世帯の3世帯に1世帯以上(33.8%)が単独世帯となり、1986年からおよそ2.6倍に増加した
  •  高齢者世帯の所得は公的年金・恩給が6割強、残り約4割を稼働所得や財産所得などで補う構図になっている

2. 【年金の基本】厚生年金ありorなしに分かれるのは「2階建て構造」だから

公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。

厚生年金と国民年金の仕組み1/4

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO&ファイナンス編集部作成

国民年金は原則として、国内在住の20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、年金のベースになります。国民年金保険料は全員一律で、40年間納めれば老後に満額を受け取れます。

厚生年金は企業や官公庁などで働く人たちが、国民年金に上乗せして加入する年金です。毎月の給与や賞与に応じた保険料(※2)を納めるため、現役時代の収入と加入期間が長いほど老後の受給額は多くなります。

この2階建ての仕組みが、老後の年金額に大きな差を生む原因の一つです。

※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

3. 厚生年金月15万円と、老齢基礎年金だけの人の受給額はいくら違うか

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の平均月額は約15万円で、老齢基礎年金を含めた金額になっています。

厚生年金 階級別受給権者数2/4

厚生年金 階級別受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考にLIMO&ファイナンス編集部作成

一方、自営業者やフリーランス、専業主婦(主夫)期間が長かった人は、老後に受け取れるのが老齢基礎年金だけになる場合があります。

2026年度の老齢基礎年金の満額は月「7万608円」(※)で、40年間保険料を納め切ってようやくこの水準です。

※ 昭和31年4月1日以前生まれの人は月7万408円

厚生年金月15万円と比べるとおよそ2倍の差があり、年間ベースでみると厚生年金月15万円は年180万円、老齢基礎年金の満額は年約84万7000円で、年間で100万円近い差になる計算です。

国民年金の平均月額を男女別で確認しておきましょう。

国民年金の平均額(全年齢)3/4

国民年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考にLIMO&ファイナンス編集部作成

国民年金〈男性〉平均:月「6万1595円」/〈女性〉平均:月「5万7582円」となっており、満額に届いていない人もいます。

保険料の未納期間や免除期間があると、この金額はさらに下がります。

太田 彩子
私が自治体の窓口で保険料の賦課を担当していた頃も、「厚生年金だと思っていたのに、実は基礎年金だけだった」と後から気づかれる方に何人もお会いしてきました。
パート勤めの期間が長かった方や、若い頃に個人事業主として働かれていた時期がある方など、加入履歴のどこかに切れ目があると、思ったより厚生年金の受給額が伸びていないこともあります。同じ月額でも、税金や社会保険料の負担額に驚かれる方も多かったので、一度「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で加入履歴と見込額をあわせて確かめておくと安心です。

4. 65歳以上のいる世帯、3世帯に1世帯以上が「単独世帯」

受給額の差とあわせて確認しておきたいのが、老後を迎える人たちの世帯のかたちです。厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」の世帯構造の推移をみると、老後の家族像はこの40年で大きく変わってきました。

2025年の65歳以上の者がいる世帯は2761万4000世帯で、全世帯の50.2%を占めています。世帯構造別の内訳は次のとおりです。

65 歳以上の者のいる世帯の世帯構造の年次推移4/4

65 歳以上の者のいる世帯の世帯構造の年次推移

出所:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況(世帯数と世帯人員の状況)」

  • 単独世帯:933万5000世帯(33.8%)
  • 夫婦のみの世帯:882万8000世帯(32.0%)
  • 親と未婚の子のみの世帯:554万9000世帯(20.1%)
  • 三世代世帯:159万7000世帯(5.8%)

単独世帯の割合は1986年には13.1%でしたが、2025年には33.8%に達しました。40年間でおよそ2.6倍に増え、単独世帯と夫婦のみの世帯を合わせると全体の65.8%を占めます。

一方、かつては最多だった三世代世帯は1986年の44.8%から5.8%へと大幅に減少しました。

老後の暮らしを親子や孫と一緒に過ごすのではなく、自分たち夫婦だけ、あるいは一人で組み立てる人が主流になったといえます。家族が同居していないぶん、年金と貯蓄で生活費のすべてをまかなう前提で家計を考える必要があります。

5. 高齢者世帯の所得内訳、年金以外の稼ぎ・財産所得はどのくらいか

単独世帯や夫婦のみの世帯が増えたなかで、実際の高齢者世帯はどのように暮らしを支えているのでしょうか。厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」の所得データから、公的年金以外の稼ぎや財産所得の状況を確認していきます。

2025年の1世帯当たり平均所得金額をみると、次のとおりです。

  • 全世帯:575万2000円
  • 高齢者世帯:336万1000円
  • 児童のいる世帯:700万7000円
  • 勤労者世帯:857万3000円

高齢者世帯の平均所得は全世帯平均の6割弱にとどまっています。この336万1000円の内訳を、所得の種類別にみてみましょう。

  • 稼働所得:25.9%
    公的年金・恩給:61.3%
    財産所得:5.8%
    年金以外の社会保障給付金:0.5%
    仕送り・企業年金・個人年金・その他の所得:6.5%

高齢者世帯の所得の6割強を公的年金・恩給が占め、残りの約4割を働いて得た所得と、預貯金や不動産などから得られる財産所得で補っている形です。

ちなみに、全世帯では稼働所得が74.1%を占めており、稼働所得と公的年金の比率が高齢者世帯とは正反対の姿になっています。

さらに、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯を対象に、総所得に占める公的年金・恩給の割合別にみた構成もみておきましょう。

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:41.3%
  • 80〜100%未満:17.1%
  • 60〜80%未満:14.1%
  • 40〜60%未満:13.6%
  • 40%未満:13.9%

公的年金・恩給だけで生活している世帯(100%依存)が41.3%と最も多く、80%以上依存を合わせると58.4%になります。

一方で、年金以外の収入で家計の4割以上を補っている世帯もおよそ4分の1(27.5%)にのぼり、老後の家計事情は世帯によって大きく分かれているといえます。

6. 【筆者からのアドバイス】基礎年金だけの人ほど、早めの現状把握を

筆者は自治体窓口で国民健康保険や後期高齢者医療保険の賦課・徴収を担当していたころ、シニア世代の相談を数多く受けてきました。

「年金からの天引き額が急に上がった」「保険料が支払えない」といった相談も多く、そのたびに分割・分納・減免制度の適用可否を一緒に検討していました。

相談してくれてよかったと感じることが多く、未納のまま放置すると差押えなどに発展することもあるため、早めに窓口へ足を運ぶことの大切さを実感しています。

6.1 まず「ねんきん定期便」で見込額を確認する

自営業やフリーランスとして働いてきた人、パート勤めで厚生年金の加入対象外だった期間が長い人は、老後に受け取れる年金が老齢基礎年金だけになる可能性があります。

老齢基礎年金の満額は月「7万608円」ですから、生活費のすべてをこれだけでまかなうのは容易ではないでしょう。

不安に感じるのは自然なことですが、まずは自分の年金見込額を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認するところから始めましょう。現状を正しく知ることで、初めて将来の設計に取りかかれます。

6.2 上乗せ制度は「デメリットもセット」で検討する

老齢基礎年金だけになりそうな人には、付加年金(月400円の上乗せ保険料)、国民年金基金、iDeCoといった上乗せ制度の活用も選択肢になります。

ただし、たとえばiDeCoは掛金が全額所得控除の対象になる一方、原則60歳まで引き出せず、受取時に課税される場合もあるため、メリットとデメリットをあわせて理解しておくことが大切です。

40歳・50歳代からでも間に合う対策はありますが、判断に迷うときは金融機関やファイナンシャル・プランナーなどに相談することをおすすめします。

6.3 「年金以外の収入」も含めて老後の家計を組み立てる

先ほど確認したとおり、高齢者世帯の所得の約4割は公的年金以外で成り立っています。

働き続ける、資産を運用する、住まいや保険を見直すといった選択肢を組み合わせて老後の家計を組み立てる姿勢が、これからますます重要になるでしょう。

ただし、働きながら年金を受け取る場合は在職老齢年金の仕組みで一部が支給停止になる場合もあるため、詳細は年金事務所などに相談してみてください。

7. まとめにかえて

本記事では、厚生年金月15万円と老齢基礎年金だけの受給者の間に、年間およそ100万円もの差があることを確認しました。

加えて、65歳以上のいる世帯の3世帯に1世帯以上が単独世帯になったこと、高齢者世帯の所得の約4割が公的年金以外で構成されていることもあわせて整理しました。

老後の家計は「年金だけ」で語れる時代ではなくなってきています。まずは自分の年金見込額と、家計の全体像を把握するところから始めてみてください。

分からないことがあれば、年金事務所や市区町村役場、金融機関の窓口に相談することで、選択肢が広がることもあります。

参考資料

太田 彩子