「2026 FIFAワールドカップ(以下、W杯)」の盛り上がりの裏で、大炎上しているDAZN。2026年6月18日に問題となっている「DAZN Soccer」プランの新規受付を停止することを発表しました。

現在、影響を受けたユーザーに対しては、順次メールで具体的な対応内容を案内するとしています。

なぜDAZNはW杯の真っ最中に「DAZN Soccer」プランの新規受付を停止する事態に追い込まれたのでしょうか。本記事では、今回の問題のポイントと批判が高まっていった要因を分析します。

プラン選択の画面から「DAZN Soccer」が削除されている1/6

プラン選択の画面から「DAZN Soccer」が削除されている

出所:DAZN

1. なぜ炎上?W杯キャンペーンが招いた「料金表の罠」

問題の発端となったのは、新規加入者を対象に実施している「FIFAワールドカップ2026応援放題!キャンペーン」。同キャンペーンの詳細は以下の通りです。

2/6

出所:DAZN

出所:DAZN

  • キャンペーン名称:FIFAワールドカップ2026応援放題!キャンペーン
  • 対象者: 期間中にDAZNへ「新規加入」するユーザー
  • 対象プラン:「DAZN Standard」月額プラン
  • 対象期間:5月30日(土)~7月20日(月)
  • キャンペーン価格:通常月額4200円→期間限定で月額1980円(税込)
  • 割引の適用期間: 加入から最初の3ヶ月間のみ適用

本大会の全104試合を配信するサービスはDAZNだけということもあり、大きな注目を集めましたが、プラン設計や記載の紛らわしさから、想定していなかった不利益を被るユーザーが続出。その後の対応も誠実とは言えず、批判の声が高まりました。

2. 「月額980円」と思いきや…「年間2万6340円」に批判の声が続出

具体的にどのような点が不利益を招いたのでしょうか。

今回のキャンペーンの対象は、W杯を含めてすべてのDAZNが配信するコンテンツを視聴できる「DAZN Standard」ですが、料金プランにはW杯を含むサッカーコンテンツだけを視聴できる「DAZN Soccer」というものもあります。

プランを選択する画面では両プランが並び、それぞれ比較できるようになっています(現在は削除済)。

DAZN Soccer新規受付停止前のプラン選択画面3/6

DAZN Soccer新規受付停止前のプラン選択画面

出所:DAZN

DAZN Standardは「おすすめ」という枠で囲まれているものの、価格を比較するとDAZN Standardが1980円(キャンペーン適用価格)なのに対して、DAZN Soccerは980円(キャンペーン適用価格)と半額以下で、こちらの方が圧倒的にコスパが良くなっています。

W杯を目当てに加入するユーザーは、他のコンテンツを視聴できる必要はないため、直感的にDAZN Soccerを選択する人が相次ぎました。

ここで問題となったのが、支払いサイクルです。

DAZN Standardは「月間もしくは年間プラン」なのに対して、DAZN Soccerは「年間プラン」のみ。つまり、W杯の期間中だけのつもりで契約しても、年間の料金を支払わなければいけなくなります。

しかも、キャンペーン価格が適用されるのは最初の3ヵ月限定。4ヵ月目以降は通常の月額2600円なので、トータルコストは「980円×3ヵ月+2600円×9ヵ月=2万6340円」となります。

月額980円と思って加入したら、2万6340円の支払いが発生するわけですから、批判の声が大きくなるのも当然と言えます。

3. ユーザーの不注意を誘う不親切なプラン設計や表記

今回の問題で誤解を招いたポイントはいくつかあります。

まずは、DAZN Soccerという紛らわしいプランへの説明の欠如です。

今回のキャンペーンは「サッカーW杯」を対象にしているわけですから、新規加入ユーザーはDAZN Soccerでも問題ないという印象を受けます。実際にDAZN SoccerでもW杯を全試合視聴できます。

運営側からすれば、容易に想定することができる状況ですが、キャンペーンのリリースにも、プラン選択画面にも、注意喚起はありませんでした。

そもそも月間/年間を選べるプランと年間プランしか選べないプランが横並びで表示される仕様も不親切です。一般的なサブスクに親しんでいる人ほど、契約時に騙されてしまった可能性はあります。

また、「サッカー」プランもキャンペーンを実施しているということも誤解に拍車をかけることになりました。

FIFAワールドカップ2026応援放題!キャンペーンの対象はDAZN Standardのみを対象にしたもので、DAZN Soccerへの言及はありません。

それにも関わらず、DAZN SoccerがDAZN Standard以上の割引キャンペーンを実施していれば、「これも対象かな?」と誤解するのも無理はありません。

4/6

出所:DAZN

出所:DAZN

なかには「注釈を読めば、ちゃんと『年間プラン』だけと記載がある」という声もありますが、今回の問題の本質はユーザーの不注意を誘ったDAZNのユーザーに対する不誠実な姿勢にあるといえます。

4. 初動のクレーム対応の悪さも火に油を注ぐ結果に

初動のクレーム対応の悪さも、同社の不誠実な印象を強めることになりました。

誤ってDAZN Soccerに加入したユーザーの多くはサポート窓口で、契約の取り消しを求めましたが、AIチャットボットや窓口の担当者は「年間プランのため途中解約・返金は一切不可」というマニュアル通りの定型文を繰り返すだけだったようです。

6月13日には公式から誤解を招く記載について謝罪が発表され、対象者への解約対応が示されましたが、問題を引き起こした契約画面の抜本的な対策はほとんどなく、不信感を強める結果になりました。

5/6

出所:DAZN

出所:DAZN

さらには、6月15日の日本のグループステージ初戦であるオランダ戦では、音声不良や映像との誤差が生じる問題も発生。すぐさま謝罪したものの、SNSでは新規で加入したユーザーから、

  • 「これならテレビで見た方が良かった」
  • 「詐欺られた上に、この配信クオリティとは…」

といった声が上がるなど、火に油を注ぐことになりました。

5. 炎上はまだ終わらない?予想される「30日前ルール」への批判

今回のDAZN Soccerの新規受付停止と対象者への解約対応によって、DAZNは最低限の打てる手は打った状況ですが、炎上はこれで終わらないかもしれません。なぜなら、新たな火種が燃え広がる可能性が極めて高いためです。

それがDAZN特有のルールである「30日前退会通知期間(以降、30日前ルール)」です。月間プランの場合に発生するルールで、「解約手続きをした日から30日間は料金が発生し続ける」という他のサブスクではあまり採用されていない仕様です。

6/6

出所:DAZN

出所:DAZN

W杯開幕日に入会した場合を例にすると、以下のようなイメージです。

  • 契約日:6月12日(W杯の開幕日)
  • 退会手続きした日:7月20日(決勝終了直後)
  • 正式な退会日:8月19日(手続きの30日後)

つまり、2ヵ月の契約を想定していたのに、正式な退会日は8月19日となるため、2ヵ月目の月額料金が満額発生するだけでなく、3ヵ月目の日割り料金まで追加で請求されてしまいます。

従来のユーザーからも評判の悪い仕様ですが、W杯閉幕時には認知していなかったユーザーからの不満が爆発することは十分に考えられます。

FIFAワールドカップ2026応援放題!キャンペーンの適用期間が3ヵ月となっているのも、DAZNの印象を悪くしています。仕様を理解しておらず、契約期間が3ヵ月目に突入してしまうユーザーを想定しているように映るからです。

果たしてDAZNは次の火薬庫の爆発を未然に防ぐことができるのでしょうか。DAZN Soccerで後手に回ってしまった分、先回りした誠実な対応が求められます。

参考資料

大蔵 大輔