5. まとめにかえて

厳しい暑さとともにインフレへの警戒感が強まる今だからこそ、公的年金の「月15万円の壁」という現実から目を背けず、早めに対策を講じることが重要です。最後にもう一度、老後の資産形成における3つの鉄則をおさらいしましょう。

  1. 公的年金の限界を知る: 長年会社員として働いても、およそ半数は月15万円以上の受給額に届かない現実を前提に計画を立てる。

  2. 私的年金をハイブリッドで育てる: 所得控除のメリットが手厚い「iDeCo」と、自由に使える配当金が手に入る「高配当株投資」を目的別に使い分ける。

  3. 固定費化する低利回り商品に注意する: インフレに弱く、途中解約の元本割れリスクが伴う個人年金保険は安易に始めない。

老後不安の正体は、多くの場合「将来いくらもらえるのか」「いくら足りないのか」が見えていないことによる思考停止です。まずはご自身の『ねんきん定期便』を開き、現時点での見込み額を確認してみる。その上で、国の税制優遇制度であるiDeCoや新NISAを賢く使い倒すこと。

夏のボーナスが支給されたり、上半期の家計を見直したりしやすいこの時期に、ほんの少しの資金を「未来の自分への仕送り」として振り向ける決断が、10年後、20年後の豊かな暮らしを支えてくれるでしょう。

6. 監修者コメント

齊藤 慧

『ねんきん定期便』を確認すると、ご自身がぼんやりと思い描いていた厚生年金の金額と、実際の見込み額とのギャップに驚かれる方もいるのではないでしょうか。

特に「平均値」のイメージだけで老後の予算を組んでしまうと、実際の受給分布とのズレが生じ、想定外の赤字に苦しむことになりかねません。

また、将来への不安から「とりあえず個人年金保険に入れば安心」と考えてしまうケースもありえます。

しかし、現在のインフレ下においては、固定金利型の貯蓄ベースの商品はお金の価値そのものが目減りしてしまうリスクに注意が必要です。まずは終身で受け取れる公的年金をベース(1階・2階)としてしっかり把握し、足りない部分をiDeCoの節税効果や高配当株のキャッシュフロー(3階部分)で補強していく。この「全体像を把握してからのハイブリッド戦略」こそが、失敗しにくい老後準備の基本となります。

参考資料

柴田 充輝