3. 赤字でも配当は維持できる?キャッシュフローから読み解く財務の余力
株価が下落した局面では、配当利回りが相対的に高くなるため、「高配当銘柄」として投資を検討する人も増えます。
しかし、上場来初の最終赤字を出した企業に対し、個人投資家からは「今の配当水準を本当に維持できるのか?」という懸念の声も上がっています。
3.1 潤沢なフリーキャッシュフローが配当の原資
この疑問に対し、泉田氏は企業の財務を分析する上で非常に重要な「利益とキャッシュフローの違い」を指摘します。
「配当に関しては、会計上の利益、さっき見た売上から当期純利益まで見てきましたけども、当期純利益っていうのが大事なんだけど、本当に払えるかどうかっていうのはキャッシュフローが大事なので」
企業が配当を支払うための原資は、損益計算書上の「利益」ではなく、実際に手元にある「現金(キャッシュフロー)」です。
ホンダの事業構造は自動車事業と金融サービス事業に分かれていますが、実態を正確に把握するためには、金融サービスを除いた自動車事業単体のキャッシュフローを見る必要があります。
データを確認すると、今期の自動車事業(金融サービス除く)が事業活動で稼ぎ出し、自由に使えるお金である「フリーキャッシュフロー」は1兆580億円と非常に潤沢です。
一方で、ホンダが株主に支払った配当金の総額は、今期が2,844億円、前期が3,478億円でした。つまり、手元に1兆円以上の現金を生み出す力があるため、年間3,000億円弱の配当金は十分に支払う能力があるということです。
この事実を踏まえ、泉田氏は配当の持続性について明確な見解を示します。
「これぐらいの配当の金額であれば払えるということで問題はないかなと思います」
決算上の数字はEV関連の一過性の損失によって赤字に沈んでいますが、本業が稼ぎ出す現金創出能力は損なわれておらず、現在の配当水準を維持する財務的な余力は十分にあると評価できます。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日