2. 会社計画と市場予測のズレ。投資判断はなぜ分かれるのか

会社がV字回復の計画を出したとはいえ、株式市場の参加者全員がそれを鵜呑みにしているわけではありません。

プロの投資家たちは、会社の発表と市場の予測(コンセンサス)との間にある「ズレ」に注目しています。

2.1 アナリストコンセンサスが示す警戒感

証券会社のアナリストたちが予測する業績の平均値である「コンセンサス」を見てみると、ホンダの来期予想に対してやや慎重な見方が浮き彫りになります。

会社の計画が営業利益5,000億円、最終利益2,600億円であるのに対し、アナリストコンセンサスは営業利益3,502億円、最終利益2,188億円にとどまっています。

つまり、市場のプロたちは会社のV字回復シナリオを額面通りには織り込んでいないのです。

このズレの背景には、EV関連損失の扱いがあります。ホンダはこれまでに最大2.5兆円規模のEV関連損失を見込んでおり、来期についても最大1.2兆円のダウンサイドリスクが残されています。

会社計画ではそのうち5,000億円を織り込んでいますが、保守的なアナリストは「まだ追加の損失が出るかもしれない」と警戒している可能性があります。

会社予想とコンセンサスの比較2/4

会社予想とコンセンサスの比較

出所:本田技研工業「2026年3月期 決算短信」およびIFISコンセンサスを基にイズミダイズム作成

2.2 日産との違いに見る「将来性への期待」

「日産自動車も同じように赤字からV字回復計画を発表したが、その時は株価があまり反応しなかった。ホンダとの違いは何か」という疑問を持つ方もいるでしょう。

同じような決算状況でも市場の反応が異なる理由について、泉田氏はこのように分析します。

「日産とホンダの動きの違い何かなってちょっと考えてみると、やっぱりホンダの将来性にまだ期待している人が多いのかなっていうのは1個あるかなと思います」

さらに、コンセンサスが弱気である状況下での投資家の心理について、次のように補足します。

「アナリストの予想はこうだけど、自分はもっと(損失が)出ると思っているから買いに行きますよっていう投資家もいると思う」

つまり、現在のホンダに対する投資判断は二極化しています。

一方は「まだEV関連の損失が出るリスクがある」と警戒する保守的な見方であり、もう一方は「悪材料は織り込み済みであり、ホンダの技術力や将来性を考えれば今は買い時だ」と判断する前向きな見方です。この「買い」の勢力が強かったことが、株価上昇の原動力となったのです。