4. 期待と現実のギャップ?「分散」の二面性と投資のリスク
これほど多くの成長テーマを抱え、実際に生成AIの恩恵を受けて業績も上方修正しているにもかかわらず、浜松ホトニクスの株価はなぜ一直線に上昇し続けないのでしょうか。
泉田氏は、機関投資家時代の経験を振り返り、プロの投資家たちが同社をどう見ているかを明かします。技術力の高さは誰もが認める一方で、投資対象としては「分散」と「時間軸」という2つのハードルがあると言います。
まず「分散」の二面性について、泉田氏は次のように語ります。
「いい意味では分散されてるんだけど、悪い意味で言うとフォーカスしてないのよ」
浜松ホトニクスは多種多様な業界に向けてビジネスを展開しているため、特定の業界が不調でも他でカバーできるというリスク分散が効いています。しかし裏を返せば、1つのテーマが爆発的に伸びても、全社業績に与えるインパクトが薄まってしまうということです。
「いわゆるそういったAIに特化して専業メーカーみたいなのだと、もう事業の100%がそれに波に乗っかるからもう伸び方もすごいことになると。だからある意味分散してて、そこの影響範囲が限定的っていうことで言うと、波もそこまで大きなムーブメントにはなりにくい」
AI関連の売上が伸びているとはいえ、それはあくまで4つある事業セグメントの一部に過ぎません。そのため、AIブームの恩恵をダイレクトに享受したいと考える投資家からすると、物足りなさを感じてしまう側面があるのです。
もう1つのハードルが、先端技術の社会実装にかかる「時間軸の長さ」です。量子コンピュータや核融合といったテーマは非常に夢がありますが、それが実際のビジネスとして大きな売上と利益を生むまでには長い年月を要します。
「みんないい会社だっての分かってるんだけど、やっぱりR&D(研究開発)の段階の技術だし、事業として本当に花開くかどうかっていうのも分かんないんで、期待はしてるんだけど、じゃあ実際今かって言われるとちょっとまだ分かんないなみたいなものが多い」
新しい技術のニュースが出た瞬間は期待感から株価が上昇するものの、業績への貢献がまだ先だとわかると、資金効率を重視する投資家は別の銘柄へ資金を移してしまう傾向があります。
「新しい技術のトピックが出た時には注目がされて一回期待でキュッと上がる。ただ、それが社会実装までになって、それで売上が立つのがちょっと先だなってなると、要は自分の自己資金の効率とかを考えると『ちょっと他の方がいいかな』みたいな」
株式投資には常に価格変動リスクが伴います。特に浜松ホトニクスのような産業用設備投資の波を受けやすい銘柄は、短期的なボラティリティが大きくなる局面もあります。
泉田氏は、同社への投資を考える際には、こうした事業構造の特性を理解した上で、短期的な値幅取りではなく、技術の進化を信じて「超長期」で保有し続けるような投資スタンスが向いているのではないかと示唆しています。
「見てきたように、いろんなテーマあるんだけど、会社全体のテーマが散っちゃってるんで、1個のテーマが出てきた時にも会社全体でそのインパクトを享受できるわけじゃないんで、その辺はやっぱりテーマ投資としてもちょっと難しいところあるかなと思います」
投資判断はあくまで自己責任で行う必要がありますが、日本が世界に誇る光技術のトップランナーが、今後どのように未来の社会実装を果たしていくのか、その長期的な歩みに注目が集まります。
5. まとめ
今回は、生成AI需要で業績を上方修正した浜松ホトニクスの事業構造と、同社が関与する数々の先端技術テーマについて、泉田良輔氏の解説をもとに紐解きました。
一見すると地味なBtoB企業ですが、その裏側では世界の最先端技術を支える「光のインフラ」として確固たる地位を築いていることがわかります。
参考資料
- 浜松ホトニクス株式会社「2026年9月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年5月14日)
- 浜松ホトニクス株式会社「2026年9月期 第2四半期 決算説明会資料」(2026年5月14日)
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Youtubeチャンネル「イズミダイズム」
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日