9. まとめにかえて:長寿化時代の家計設計を考える
ここまで見てきたように、後期高齢シニア夫婦の家計は、生活費・年金・貯蓄のバランスに十分な余裕があるとは言い難く、多くの世帯で貯蓄を取り崩しながら生活を続けている実態が見られます。さらに、医療費や介護費の増加によって、今後の家計負担はより不透明になりやすい状況です。
一方で、後期高齢者医療制度や高額療養費制度のように、医療費負担を一定範囲に抑えるための公的制度も整えられています。こうした制度を正しく理解しておくことで、「予想外の支出」への不安を過度に大きくせずに済むでしょう。
また、資産構成を見ると、預貯金の割合が高く安全性は確保されているものの、物価上昇が続く環境では実質的な資産価値が少しずつ目減りしていく可能性があります。
だからこそ重要なのは、単に「いくら資産を持っているか」ではなく、「その資産でどのくらい長く生活を支えられるか」という資産寿命の視点です。
「人生100年時代」といわれる現在、長期化する老後に備えるためには、年金の受け取り方や医療制度の活用も含めた総合的な家計設計が欠かせません。
現役時代からの備えに加え、公的制度を上手に活用しながら、長期間にわたって安定した生活基盤をどう維持していくか。それが、これからの老後生活における大きな課題になっていくでしょう。
参考資料
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省「家計調査 家計収支編 2025年〔二人以上の世帯〕」(第3-2表)
- 総務省統計局「家計調査 用語の解説」
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向」
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書〈特集①〉高齢者の経済生活をめぐる動向について」
- 生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」
- 厚生労働省年金局「令和年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 2025年 〔二人以上の世帯〕」(第8-10表)
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
マネー編集部社会保障班