3. 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】平均貯蓄額が高くても安心しきれない理由とは

3.1 平均額と資産の中身から見る老後資金の実像

公的年金だけで毎月の支出をすべて賄えない場合、その不足分を支える役割を果たすのが貯蓄です。

ここでは、75歳以上の後期高齢シニア夫婦世帯が、実際にどの程度の資産を保有しているのかを確認していきます。
(平均世帯主年齢:80.8歳)

総務省「家計調査 家計収支編 2025年(令和7年)〔二人以上の世帯〕」および「貯蓄・負債編」によると、世帯主が75歳以上の無職世帯における貯蓄状況は以下のようになっています。

【表】75歳以上「後期高齢シニア」二人以上世帯の貯蓄平均は2392万円3/4

【グラフ】75歳以上「後期高齢シニア」二人以上世帯の貯蓄平均は2362万円

75歳以上「後期高齢シニア」二人以上世帯の貯蓄平均は2392万円) 出所:総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 2025年 〔二人以上の世帯〕」をもとに筆者作成

貯蓄:2392万円

金融機関:2383万円

  • 通貨性預貯金:763万円(31.9%)
  • 定期性預貯金:775万円(32.4%)
  • 生命保険など:396万円(16.6%)
  • 有価証券:449万円(18.7%)
    • (内訳:貸付信託・金銭信託10万円、株式223万円、債券45万円、投資信託171万円)

金融機関外:9万円

負債:24万円

内訳を確認すると、資産の大部分が銀行などの金融機関に預けられていることが分かります。

3.2 貯蓄の額は「格差」が大きい

平均貯蓄額が2000万円を超えているという数字を見ると、後期高齢期でも比較的余裕のある生活を送っているように感じるかもしれません。

しかし、平均値には高額な金融資産を保有する一部世帯の影響が含まれており、実際にはそこまで資産を持たない世帯も少なくありません。分布全体を見ると、貯蓄額には大きな差があることが分かります。

大切なのは、「平均より多いか少ないか」を単純に比べることではありません。

むしろ重要なのは、自分たちの資産が、毎月発生する赤字や、「ゆとりある生活」を送るために必要な支出との差額を、どの程度の期間支えられるのかという視点です。

老後資金を考える際には、現在の貯蓄額を単なる金額としてではなく、「あと何年生活を維持できるか」という時間軸で捉えることが重要になるでしょう。

3.3 資産寿命を延ばすために

資産構成を見ると、預貯金が全体の約64%を占めており、安全性を重視した保有状況になっていることがうかがえます。一方で、株式や投資信託などの有価証券は2割弱にとどまっています。

こうした構成は、価格変動の影響を受けにくいという安心感がある反面、長期化する老後生活では別の課題も抱えています。それが、インフレによる資産価値の目減りです。

預貯金は元本が大きく減りにくい一方で、物価上昇が続くと、同じ金額で購入できる商品やサービスは徐々に少なくなっていきます。

そのため、老後資金を考える際には、「いくら持っているか」だけでなく、「その資産がどれだけ長く暮らしを支えられるか」という“資産寿命”の視点が欠かせません。

リスクを抑えながら資産を分散する工夫に加え、自宅資産を活用するリバースモーゲージなども含め、金融資産と実物資産の両面から老後を支えていく視点が、今後さらに重要になっていくでしょう。