身近な方が亡くなった際の「もしもの時」の手続きは、深い悲しみの中で行わなければなりません。
葬儀費用や生前の入院費など、避けて通れない大きな出費に対して、国や自治体は遺族を経済的に支えるための制度をいくつも設けています。しかし、これらの制度は自動的に適用されるわけではなく、すべて自分たちで申請する必要があります。
この記事では、親が亡くなった際に必ず確認しておきたい「申請しないと受け取れないお金」を5つに絞ってご紹介します。申請には期限があり、それを過ぎると受け取れなくなるため、この機会にご家族で情報を共有してみてはいかがでしょうか。
1. 葬祭費・埋葬料とは?葬儀費用の一部が戻ってくる健康保険の給付金
葬儀を執り行った後、最初に確認したいのが健康保険から支給される給付金です。
1.1 国民健康保険・後期高齢者医療制度(葬祭費)
- 支給額:3万円〜7万円程度(自治体によって異なります)
- 申請先:故人の住民票があった市区町村の役場
1.2 社会保険(埋葬料)
- 支給額:一律5万円
- 申請先:故人が勤めていた会社の健康保険組合、または全国健康保険協会(協会けんぽ)
注意点として、申請期限は葬儀の翌日から2年間です。手続きには葬儀の領収書や会葬礼状といった書類が求められるため、なくしてしまう前に早めに申請することをおすすめします。
2. 未支給年金について解説|故人が受け取るはずだった年金は遺族が請求可能
年金は亡くなった月まで受け取る権利がありますが、2カ月に一度後払いで支給される仕組みのため、どうしても未支給分が発生してしまいます。
- 制度の仕組み:年金は偶数月に、その前2カ月分が支給されます。例えば、8月中に亡くなった場合、6月・7月分(8月支給)は受け取れますが、8月分(10月支給予定)は本人の口座が凍結されるため、そのままでは受け取れません。
- 対象となる方:故人と生計を共にしていた遺族(配偶者、子、父母などの優先順位があります)
- 申請窓口:年金事務所、または年金相談センター
この未支給年金は相続財産とはみなされず、受け取った遺族の一時所得として扱われます。そのため、相続税の課税対象にならないという特徴があります。
3. 高額療養費制度による医療費の還付|亡くなる前の治療費が戻る可能性
亡くなる直前に長期間の入院や大きな手術をしていた場合、1カ月の医療費が自己負担の上限額を超えていることが少なくありません。
- 制度の内容:支払った医療費のうち、定められた自己負担限度額を超過した金額が払い戻される制度です。
- 申請期限:診療を受けた月の翌月から2年以内です。
- ポイント:2026年5月時点の制度では、70歳以上の方の上限額は所得に応じて細分化されています。一例として、一般的な年金収入の世帯であれば、自己負担の上限は月額5万7600円です。この制度を知らないまま高額な医療費を支払ったままにしておくのは避けたいところです。
4. 準確定申告で税金の還付を|期限は死亡後4カ月と短いため要注意
数ある手続きの中でも、特に注意したいのが準確定申告です。亡くなった方が確定申告の対象者であった場合、相続人が代わって申告手続きを行わなければなりません。
- 申請期限:相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内
- 還付の可能性があるケース:故人が自営業者だった場合はもちろん、会社員や年金受給者であっても、生前に多額の医療費を支払っていた(医療費控除)場合や、ふるさと納税をしていた場合などは、税金が還付される可能性があります。
他の手続きと比較して期限が非常に短く設定されているため、家族が集まるタイミングで領収書などを整理し始めるのが良いでしょう。
5. 払いすぎた介護保険料の還付金|相続放棄を検討中なら受け取りに注意
65歳以上の方が亡くなった場合、介護保険料を精算した結果、納めすぎていた保険料が還付されることがあります。後日、自治体から還付通知書が届くのが一般的です。
- 【重要】もし故人の負債が多く相続放棄を考えている場合は、特に注意が必要です。この還付金を受け取ると、相続を承認した(単純承認)と判断され、相続放棄が認められなくなる可能性があります。判断に迷う場合は、還付金を受け取る前に専門家へ相談することをおすすめします。
6. 申請しないともらえないお金の手続き期限まとめ
最後に、これまで紹介した手続きの期限を一覧で確認しておきましょう。
- 準確定申告:死亡後4カ月以内(税務署)
- 未支給年金:死亡後5年以内(年金事務所)※1
- 葬祭費・埋葬料:葬儀後2年以内(市区町村役場・健康保険組合)
- 高額療養費還付:診療後2年以内(市区町村役場・健康保険組合)
- 介護保険料還付:通知到着後2年程度(市区町村役場)
※1 年金の受給停止手続きは10日〜14日以内と期限が短いため、こちらも注意が必要です。
受け取れるはずの権利を「期限切れ」で失うことがないよう、家族が集まる機会に、通帳や領収書などを一度確認してみてはいかがでしょうか。



