新緑が目に鮮やかな季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。落ち着いて日々の家計や将来の見通しについて考えるには良い時期かもしれません。
75歳以上になると加入する「後期高齢者医療制度」は、医療費の自己負担や保険料に関わる大切な仕組みです。
2026年度は保険料率が見直されるほか、新たに「子ども・子育て支援金」も上乗せで徴収される予定となっており、老後の家計への影響が気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、後期高齢者医療制度の基本を確認しながら、2026年度の保険料の水準や都道府県ごとの差、新たな支援金の内容までわかりやすく見ていきます。
1. 「後期高齢者医療制度」とは?
日本では、「国民皆保険制度」に基づき、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。
加入する医療保険の種類は、主に職業や年齢によって異なります。
- 会社員:協会けんぽ、健康保険組合
- 公務員や教職員:共済組合
- 自営業者や退職者:国民健康保険
そして、75歳以上になると、原則としてすべての人が「後期高齢者医療制度」へ移行します。
ただし、65歳以上で一定の障害認定を受けた場合には、本人の申請により後期高齢者医療制度に加入することも可能です。
1.1 75歳未満でも加入できるケースがある
本来、後期高齢者医療制度は75歳以上が対象ですが、65歳以上74歳以下で一定の障害認定を受けている方は、本人の申請により加入することが可能です。これを「障害認定による特例加入」と呼びます。
以下のいずれかに該当する場合、申請により制度加入が認められます。
- 障害年金1級または2級
- 身体障害者手帳1級、2級、3級または「4級の一部」
- 精神障害者保健福祉手帳1級または2級
- 東京都愛の手帳(療育手帳)1度または2度
※身体障害者手帳の「4級の一部」とは、以下に該当するものです。
- 下肢障害4級1号(両下肢のすべての指を欠くもの)
- 下肢障害4級3号(一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの)
- 下肢障害4級4号(一下肢の著しい機能障害)
- 音声・言語機能障害
出所:東京都後期高齢者広域連合「対象者」
※具体的な該当要件は自治体ごとに異なる場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村または後期高齢者医療広域連合にご確認ください。
1.2 医療費負担のしくみ
後期高齢者医療制度は、各都道府県に設置された「後期高齢者医療広域連合」によって運営され、全国すべての市区町村が参加しています。
この制度における医療費の自己負担割合は原則として1割ですが、所得に応じて2割または3割に引き上げられる場合があります。
- 一般所得者等(課税所得28万円未満、または課税所得28万円以上でも下記の収入要件を満たさない方):1割負担
- 一定以上所得者(課税所得28万円以上145万円未満かつ、「年金収入+その他の合計所得金額」が単身200万円以上、複数世帯320万円以上):2割負担
- 現役並み所得者(課税所得145万円以上):3割負担 (※3割負担の現役並み所得者に該当する場合でも、収入が一定基準に満たない場合は、申請等により1割・2割負担となる場合があります。)
2. 【75歳以上 後期高齢者医療制度】2026年度の「保険料」はいくら?
75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度では、保険料率の見直しが原則2年ごとに行われます。
前回の改定は2024年度に実施されているため、2026年度および2027年度は新しい保険料率が適用されます。
- 被保険者均等割額の年額:5万6083円
- 被保険者均等割額の月額:4673円
- 所得割率:10.17%
- 平均保険料額の年額:9万5875円
- 平均保険料額の月額:7989円
3. 2026年度、後期高齢者医療保険料の支払いはいつから始まる?東京都の例で確認
後期高齢者医療保険料は、新年度が始まる4月から、いきなり新しい年間保険料額で納め始めるわけではありません。
一般的に、保険料の納付方法は「特別徴収」と「普通徴収」の2通りがあり、実際の支払い時期や金額の反映タイミングはそれぞれ異なります。
特別徴収は年金からの天引きで、4月・6月・8月は仮徴収、10月・12月・2月に年間保険料額をもとに調整されます。つまり、2026年度の保険料額が本格的に反映されるのは10月以降です。
一方、普通徴収は納付書や口座振替で納める方法で、納付時期や回数は自治体によって異なります。
4. 【都道府県別ランキング】後期高齢者医療保険料が高いのはどこ?
具体的な保険料をイメージしやすくするために、厚生労働省の資料をもとに、都道府県別の平均保険料額を高い順に見ていきましょう。
4.1 2026年度の平均保険料額(医療分)
- 東京都 1万352円
- 神奈川県 9842円
- 愛知県 9045円
- 大阪府 9010円
- 沖縄県 8731円
- 奈良県 8622円
- 福岡県 8330円
- 兵庫県 8301円
- 京都府 8280円
- 千葉県 8237円
- 埼玉県 8189円
- 佐賀県 8159円
- 石川県 8065円
- 滋賀県 8051円
- 岡山県 7891円
- 福井県 7840円
- 山口県 7836円
- 広島県 7831円
- 静岡県 7415円
- 香川県 7388円
- 岐阜県 7317円
- 富山県 7296円
- 北海道 7295円
- 大分県 7283円
- 三重県 7263円
- 鹿児島県 7174円
- 茨城県 7128円
- 熊本県 7088円
- 山梨県 7070円
- 宮城県 6933円
- 群馬県 6877円
- 徳島県 6829円
- 和歌山県 6771円
- 高知県 6747円
- 長野県 6745円
- 鳥取県 6568円
- 島根県 6561円
- 栃木県 6476円
- 長崎県 6192円
- 愛媛県 6186円
- 山形県 6014円
- 宮崎県 5875円
- 新潟県 5852円
- 秋田県 5847円
- 福島県 5744円
- 岩手県 5496円
- 青森県 4990円
- 全国 7989円
保険料の水準は都道府県ごとに異なり、最も高い東京都と、最も低い青森県のあいだには、月額で5362円の差があります。
続いて、基礎年金受給者(年金収入84万円)の保険料を見ていきましょう。
4.2 2026年度の保険料額(年金収入84万円の場合)
- 北海道 1392円
- 青森県 1175円
- 岩手県 1133円
- 宮城県 1216円
- 秋田県 1300円
- 山形県 1225円
- 福島県 1143円
- 茨城県 1155円
- 栃木県 1146円
- 群馬県 1267円
- 埼玉県 1217円
- 千葉県 1183円
- 東京都 1242円
- 神奈川県 1225円
- 新潟県 1148円
- 富山県 1302円
- 石川県 1337円
- 福井県 1263円
- 山梨県 1228円
- 長野県 1139円
- 岐阜県 1292円
- 静岡県 1192円
- 愛知県 1308円
- 三重県 1280円
- 滋賀県 1292円
- 京都府 1390円
- 大阪府 1515円
- 兵庫県 1363円
- 奈良県 1325円
- 和歌山県 1371円
- 鳥取県 1217円
- 島根県 1334円
- 岡山県 1400円
- 広島県 1285円
- 山口県 1482円
- 徳島県 1423円
- 香川県 1353円
- 愛媛県 1298円
- 高知県 1409円
- 福岡県 1548円
- 佐賀県 1603円
- 長崎県 1308円
- 熊本県 1470円
- 大分県 1492円
- 宮崎県 1300円
- 鹿児島県 1625円
- 沖縄県 1423円
- 全国 1309円
最も保険料が高いのは鹿児島県の1625円、最も低いのは岩手県の1133円となっており、その差額は492円です。
お住まいの都道府県の保険料が全国平均と比べて高いのか低いのか、一度確認してみるとよいでしょう。
5. 2026年度から徴収開始の「子ども・子育て支援金」とは?
2026年度から、新たに「子ども・子育て支援金制度」が始まります。この制度は、医療保険の仕組みを活用して集める新たな負担金です。
後期高齢者医療制度の保険料を含め、それぞれの医療保険料に上乗せして徴収されることになります。(※なお、政府は「社会保障の歳出改革等により保険料負担の軽減を図るため、実質的な負担は生じない」と説明しています。)
こども家庭庁は、この制度を「こどもや子育て世帯を社会全体で支えるための仕組み」と位置づけています。
支援金の対象となるのは、日本国内の公的医療保険に加入している人です。主な対象者は次のとおりです。
- 会社員や公務員などの被用者保険加入者(協会けんぽ・組合健保・共済組合など)
- 自営業者やフリーランスなどの国民健康保険加入者
- 75歳以上の高齢者で、後期高齢者医療制度に加入している方
つまり、現役世代だけでなく高齢者も一部負担する仕組みとなっており、「世代を超えて支え合う」という全世代型社会保障の理念が制度に反映されています。
5.1 「子ども・子育て支援金」の負担額はどのくらい?
【2026年度の支援金額の推計(平均月額)】
- 健保組合:被保険者一人当たり 約550円
- 国民健康保険:一世帯当たり 約300円
- 後期高齢者医療制度:被保険者一人当たり 約200円
後期高齢者の場合、月額約200円が目安とされていますが、実際には年収によって負担額に差が生じます。
5.2 後期高齢者1人あたりの負担額はいくら?
こども家庭庁によると、後期高齢者1人あたり(単身世帯・年金収入のみ)の負担額は、以下のようになっています。
- 年収80万円の場合:月額 50円
- 年収100万円の場合:月額 50円
- 年収125万円の場合:月額 50円
- 年収150万円の場合:月額 50円
- 年収175万円の場合:月額 100円
- 年収200万円の場合:月額 200円
上記のとおり、年収に応じて月額50円~200円が目安とされています。表面上の月額は小さく見えても、社会全体では確実に負担が積み上がっている点を理解しておくことが大切です。
※後期高齢者医療保険料と同様に、自治体によって徴収額が異なります。
6. まとめ
後期高齢者医療制度は、75歳以上の多くの人が加入する公的医療保険で、医療費の自己負担は原則1割、所得に応じて2割または3割になります。
2026年度は保険料率が見直され、全国平均の保険料は月7989円となる見込みです。
加えて、2026年度からは「子ども・子育て支援金」が上乗せで徴収され、後期高齢者医療制度の加入者も負担の対象となります。
医療費の自己負担、保険料、支援金をあわせて見ると、老後の家計への影響は小さくありません。75歳前後の方やその家族は、自分の住む地域の保険料水準や負担割合を確認し、今後の支出を考える材料にしておきましょう。
参考資料
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「対象者」
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「後期高齢者医療制度の仕組み」
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
加藤 聖人